原始コンビニ

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言い訳

たとえばあなたが隣にいたとして 震える肩になんて声をかけたらいいかと考えた時 どうしてもあなたの顔が思い浮かばない 笑った顔や泣いた顔 怒った顔や驚いた顔 思い出そうとしても次々と頭から抜け落ちていく 本当はあなたに何も言いたくないんじゃないかと 無視してしまいたいんじゃないかと ちょっとした言い訳が頭をよぎる そんな僕をあなたが見たとして なんて声をかけてくれるだろうか あなたの顔が記憶から抜け落ちた僕に たとえばあなたが目の前にいたとして 零れる滴を目の当たり

    • 代償

      救いを求める手に 慈悲も無く手を取らなかった君には あからさまな自己への庇護欲しかなくて 笑ってしまいそうになる 救いを求めた人へのせめてもの贖罪にと 自由を謳歌することが 回り回って助けになるのだと信じ 生き抜いてきた君への 救いの手は必要ないのだろう 季節は巡る 巡り巡って君の番 君には何がある? 君は何を持ってきたの? 人生をたどった末に見えてくる 唯一無二の君のその自信が 誰かを傷つけていることに なぜ気づかないのか しかしながら 君がたとえ気づいたとしても

      • 秋に立つ瀬

        青空の下 ベンチに腰掛けて語り合う 将来のこと どんな夢を持ち その具現化のため どれほどの努力をすればいいのか といった内容のあるものではなく 漠然とした将来に不安を感じた末の なんともなしな話を つまりは逃避行動を 君は行っていた そんな君に僕ができることと言えば ただ相槌をうつのみで 逆の立場に立って考えもせず 空っぽの頭はやはり空っぽで 思考は停滞していた 時たま 心地よい風が吹く 二人の間をすり抜けた風が 雑踏に消えていく 君は空を見上げたまま ぽつりと

        • 贖罪

          春の匂いに釣られて 引きずられるように 思い出した あの日は 決して色あせることもなく 心に残っていて 僕の自由を奪うんだ もう一度 その日に戻ることができたとしても もう一度 その日あったことを変えることができたとしても 心に刻まれた事実だけは 何物にも侵されることはなく ただの結果として 僕の心を縛るんだ 終わってくれと 何度願ったことだろう 明けない夜はないと 信じてみても 幾千の夜を超えて 今の僕がいるとは とても信じ難い 耐えがたい 夜に怯えた 今の僕こそ

          見たい

          転身の果てに 見つけた場所は焼け野原 ここに住むのかと問えば 誰も答えず 焦げ付いた匂いをまとった風と カラスの鳴き声が ここぞとばかりに啼きたてる 泣けばよい 風と共に カラスと共に 疲れ果て その場から動けず 顔を上げることもままならず 重い瞼を上げては閉じてを繰り替えす そうしてそれすら面倒になった後 見えるのは一面の花畑 聞こえるは川のせせらぎ 凪いで包み込むような風の音 一歩踏み出そうとするその時に 思い出す 既視感 それに気づいたとき 一面の花畑は腐り落

          さと

          いつまでもいつまでも 見てきたというのに 本心から飽きはせず 戯れに飽きたと思っても ゆっくりと振り返れば どこか楽しげに思えてくるもんだと 誰かが言った 変化を求めて まだ見ぬものへの渇望が 自分の体を突き動かすなら それに身を任せてみるがいい しかし それに身を委ねるということは 終わりのない旅の始まり 至った場所でまた いつまでもいつまでも 見ることになる景色に あなたは 耐えられはしないだろう そうしてまた旅に出る 終わることなき旅に疲れるか 変わり映えのしない

          アシタ

          気づいたとしてもどうしようもなく 振り返るしかできないこともあり 昨日の自分を蔑んで 今の自分を憐れがり 明日の自分の姿に悲観する 周りと自分を傷つけて 昨日を否定して 昨日を後悔して 昨日を卑下し 昨日を見捨て 昨日を黙殺し 昨日と決別したとしても 気づけば昨日に縋っている自分がいる 今を生き 明日に絶望することは 決して恥ずべきことではないと 言い聞かせ 希望を持たず 黙々と歩み 自分の立ち位置を見失い 足元が崩れ 手元が狂い 体からは芯が抜け落ち 這いずることさえ叶

          海岸

          夜の浜辺に月が出て 波音が 風に揺れる草木のざわめきをかき消す そんな夜 薄暗い砂浜には誰もいない どす黒い海が夜そのもののように 静かに佇む 風は生ぬるく湿り ざらざらとまとわりつく相手を探しながら 砂上をさまよう 波は冷たく濁り 終わることのない砂の整地を 永遠と繰り返す 単調に時が過ぎ じっと待ち続ける中で 待ち続けていたものが 何であるかを知りえたならば その浜辺には 日が昇る 暗い海の先に水平線が浮かび出し 浜辺は目覚める 風は軽やかに 波は穏やかに

          午前三時

          裸に剥かれた木々が 光に照らされながら踊る その脇を静かに歩く 応えるのは足音 踏みしめたアスファルトが 怪しく笑う 不協和音を奏でながら それでいて静かな様に たまらない不快感 だけども歩みを止められなくて 引きずったままに進むしか 道はなく 脇で踊る木々たちが 静かに僕を見守りながら 笑い続ける

          詩:心象干渉

          物事を整理する度 私の気持ちが軽くなる 美化した過去に思いを馳せて 慎ましく生きていこう 一つ捨てては未来のために 一つ捨てては過去のために そうして整理整頓することで 私の心が軽くなるなら安いもの 一つ捨てては自分のために 一つ捨てては心のために 削りに削ったその結果 何も残らぬと知ったときに 私は私でいられるのか 私が私でいられるように 今は削りきる それだけ 削りながら感じる焦りに 今の私では 応えきれないから

          詩:街灯

          雨降る夜に咲く 色とりどりのたんぽぽ 色眼鏡をかけた私の 汚れすら流れ落とす淡い色 傘を片手に立ちすくみ 私の世界が佇んだ 雨足が 強くなる ふわふわと夜に踊る綿毛の光 時が止まったあの光に 魅入った私は夜行蝶 ふらふらと 心が揺れる その様を笑うようにふわふわと 揺れる光を追いかける 音が消えた 聞こえるのは綿毛の笑い声 傘より外は雨 りん と張りつめた空気が音を弾く 優しいような どこか諦めたような ぬるい空気が私を包む 背筋に水滴が落ちた その冷たさに我に返る

          詩:川

          雪が積もっていた 濁った色をした雪 積もった雪が溶け始めていた 溶けだした水が足元に溜まっている 濁った自然の貯水池 上を見るとひどくさっぱりした天気で 一面青空であった その小奇麗さと 目の前に広がる汚さが混ざり合って 神秘的な陰鬱さを醸し出している よく見ると それは池ではなく川だった 淀んだ川 僅かながら流れができていた 汚れた水は行き場を決めて動いていた 途端にそれまで纏っていた陰鬱さは消え 川は輝きを帯びだした 春が 来るのだ

          詩:散歩

          わくわくしながら家を出た 振り返ると家がある 目の前には道 何かに追われるようにとりあえず一歩を踏み出した 何も考えず道を歩く 横を見れば塀がある 目の前には光 前は見えないままになんとなくそのまま進んだ 駆け足そのまま分かれ道 後ろを見ても何もない 目の前には天秤 秤が示した重い方に仕方なく進んだ 準備万端に登り坂を気負いもせずに登りきる 気が付けば頂 目の前には何もない 何も考えずにそのまま進んだ 塞いだ気持ちで空を飛ぶ 下を見ればきりがない 目の前には首輪 説明

          詩:ひたる

          砂利と靴とのこすれる音で わたしはここにいるのだと知る 静まり返った寒さの中で 見上げて星の瞬きに陶酔する そんなとき わたしはたまらなく空しくなる 視界に広がる星空から 目一杯に光を浴びてなお この一瞬でさえわたしという存在が 光るということはない 磨けども磨けども 研磨しつくしたとしても あの星の光を反射することもできないだろうと

          詩:炭酸

          ソーダ水を飲んだ 一口 喉を通った泡たちが 足跡を残していく 手には鈍い冷たさ 私はそっと目を閉じて その手の中で 泡たちがさわぐ様子を 空想する 今この手の中で踊る 幾千の泡たちが生まれては消えていく それはとても美しく 瞬間的な芸術だと 私は思った ソーダ水を飲んだ もう一口 舌の上で踊るものが 生まれては消え生まれては消え その移り変わりを 私は微笑みながら飲み下す ゆっくりと 愛でながら 今 器官が感じる小さな痛みを また思い出せるように ソーダ水を飲んだ 夕暮れに

          詩:呼吸

          何も聞こえないから外に出た 耳にはイヤホン突っ込んで かける言葉も聞こえない 部屋を抜け出し息を止め 声を殺して駆け抜けた 私の体は波を打ち 奏でる鼓動が声を出す 私の体は波を打ち 殺した声は騒ぎたそうだ 私の体は波を打ち いまかいまかと待ち受けて 私の体は波を打ち 目一杯に意地を張る 私の体は波を打ち 声も絶え絶え切れかけて 何も聞こえないから外に出た 耳にはイヤホン突っ込んで 疼く言葉が聞こえてる 声が殺して抜け出した 私の体は波を止め 声の騒ぎを聞きつける 私の体は波