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詩:炭酸

ソーダ水を飲んだ
一口
喉を通った泡たちが
足跡を残していく
手には鈍い冷たさ
私はそっと目を閉じて
その手の中で
泡たちがさわぐ様子を
空想する
今この手の中で踊る
幾千の泡たちが生まれては消えていく
それはとても美しく
瞬間的な芸術だと
私は思った
ソーダ水を飲んだ
もう一口
舌の上で踊るものが
生まれては消え生まれては消え
その移り変わりを
私は微笑みながら飲み下す
ゆっくりと
愛でながら

器官が感じる小さな痛みを
また思い出せるように
ソーダ水を飲んだ
夕暮れに
片足突っ込みまどろんだ
暗い部屋の中で
ソーダ水を私は飲んだ

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