ブランディングの正体〜Minimalから学ぶ「こだわり」と「顧客体験」
あなたは今までに心を捉えて離さないようなブランド体験をしたことがありますか?
一瞬でその商品やサービスのファンになり、暇さえあればネットで情報を集め、頼まれてもいないのに周りに宣伝してしまう。否定的な意見を見つければ「いや、そうじゃない」と憤慨し、そのブランドに代わって反論する。
一般的にこのような人たちをロイヤルカスタマーと呼びます。昨今ブランディングの世界では顧客をファン化させ、如何にこのロイヤルカスタマーに育てるか、つまりCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)をしっかりと設計できるかが重要だと語られています。
しかしこのCXに注目し「体験」だけを設計しようとしても、そのブランドは上手くはいかないかも知れません。何故ならブランディング構築で一番重要なもの、そのビジネスに対する「圧倒的なこだわり」を持ち合わせていないかも知れないからです。
Minimalとの出会い
冒頭の質問ですが、私には最近心を捉えて離さないブランドが存在します。それは国内の代表的なBean to Barである「Minimal」です。
Bean to Barとは一次加工メーカーなどを介さずカカオ豆の仕入れから自社工房内でチョコレートの製造までを行うことを指します。
仕事柄Minimalを最初に知ったのはパッケージデザインからでした。一般的に均等に刻まれている「板チョコを割る為のスジ」もまるで幾何学模様のように入っている。それは食べやすさはもちろん様々な大きさで食べることで異なる食感を体験して欲しいという想いからなのだそう。この板チョコのインターフェイスを変えた考え方に一気に興味がわき注文することになります。
食べた感想、それはひと言で言うと衝撃的でした。
商品に同梱されているリーフレットには確かにカカオ豆と砂糖しか使用していないと書いてある。しかし種類によってフルーティな酸味を感じたり、ナッツのような香ばしさを感じたり、スパイスやハーブの芳香さを感じる。いつも当たり前のように食べていた市販のチョコレートは、実は完成品じゃなかったんだと驚きを隠せませんでした。
そこからはMinimal誕生の経緯を調べ、代表の山下さんの想いに触れ、その情熱とビジョンに共感し、頼まれてもいないのに周りに宣伝するという完全なる「ファン」へ育っていきました。それはもう見事に、まんまと(笑)。
ブランディングの方程式
私はブランディングには方程式があると思っています。その方程式は
「こだわり」×「インサイト」×「CX」
というものです。
今の時代私たちは同じようなモノと情報に晒されすぎて、正直うんざりしています。疲れているのです。新しい商品やサービスが生まれても身体が慣れてしまっていて心のどこかで「あぁ、またか」と感じています。
そんな中で顧客を魅了し、ファンを増やし続けているブランドに共通するもの。それは圧倒的な「こだわり」です。
その「こだわり」はUSPといった競合との差別化の為に作られるものとは一線を画します。次元が違うと言ってもいい。理想の姿を追い求める情熱と行動力、そして自分の会社だけではなく取引先や業界をも変えていきたいという公器としてのビジョンも内包されています。
その「こだわり」が生活者のインサイト(無意識の心理)とハマり、顧客に伝えるための企業努力が商品だけではなくツールや店頭での接客にまで落とし込まれている、つまりCXまで丁寧に設計されている商品・サービスがここ最近でブランディングに成功している方程式だと感じています。
「こだわり」がもたらすもの
この「こだわり」に触れたとき、生活者はその商品・サービスがこれから創造するであろう未来を感じ取ります。それが共感できるものであった場合、そこに「参加」したいと思うのです。共にその未来を作り上げていく、その一員になりたいと願うのです。
これは単なる「好き・嫌い」という感情ではありません。
その人がファンになった場合、そのブランドを形づくる一部になっているので新しい商品が出るといち早く体験したいし、何かに挑戦すると聞けば応援してしまうのです。
Minimalが新たにガトーショコラ専門店を出すのにクラウドファンディングを立ち上げると目標100万円のところ1,200万円を超える支援が集まりました。これは単純に美味しいものを食べたいという方ももちろんいるでしょうが、「Minimalの作るガトーショコラを体験したい」と感じた方が多いのではないでしょうか。(ちなみに私の家にもリターンが届いたので後でこっそり楽しみます。)
人は理性だけではモノを買いません。むしろ理性はないと言っていい。
いかに感情を動かせるかにかかっています。そして感情を動かすのに重要なのが、その商品・サービスのコアである「こだわり」なのです。
まとめ
強いブランディングを築き上げるためにはこうした出発点である「こだわり」が重要になってきます。又、その「こだわり」が独りよがりでも上手くいきません。時代の空気感なども影響する生活者の「インサイト」にもアプローチ出来ていなければいけません。そしてそれらを認知からリピートに至るまでの「CX」に丁寧に落とし込んでいく。ここまで出来ると後はファンが後押しして勝手に広がりを見せていくのです。
ブランディングが上手くいかないと感じるときは、このMinimalの事例を参考にしてみてください。そして「こだわり」×「インサイト」×「CX」の方程式にご自身のビジネスを当てはめてみて、どこかに弱い部分がないか確認してみましょう。
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