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第13回 生まれた街のあの白さを、あなたにも見せたい(大澤→丸山)

丸山さんこんにちは。暑い日が続きますね。札幌もここ数日は30度近い陽気で、寒さに強い道産子もみんなぐったりしています。東京も相当暑いのではないですか?お身体など崩されぬようお気を付けくださいね。

アメ横に行きたくてしょうがないです。上野周辺って実はちゃんと歩き回ったことがないので、ぜひ今度ご一緒しましょう!

あんみつのみはし!一回だけ行ったことがあるのですが、めちゃくちゃ美味しくて幸せでしかなかったです。

個人的な思い出として、御徒町のコンビニにお財布を忘れて山手線に乗ってしまい、慌てて戻ったらすべて無事なまま店員さんに届けられて感動したことがありました。

先週は栗山町という街に行き、学術野営というイベントに参加してきました。2泊3日の泊りがけで、2日目なんかは一日中議論をしておりました。日本酒や焼酎を飲んで、さらにまた議論。研究者の皆さんって元気だなあと思います。

3日目は夕張市の石炭博物館に行ってきました。

こういう、産業遺産ってもうしみじみくるんですよね…泣いちゃう…。軍艦島とか行ってもすぐに泣いちゃうんですが、繁栄していたときのモノクロ写真見ると泣いちゃう。

台風を知らない観客

さて先日、是枝裕和監督の最新作「怪物」を友人と観賞してきました。めちゃくちゃ面白くて!

舞台が長野県の上諏訪だったのですが、台風が来る日に主役の子供たちが姿を消す…という物語で。でも思ったのが、私は生まれも育ちも北海道で、台風をほとんど知らないんですよね。

台風に備えて窓に段ボールを貼るのも未経験だし、なんかこう「台風前夜」の不穏さを共有できなかったんです。この不穏さは物語と深くかかわってくると思うんですが、住む地域や育った環境の違いで、共有できる物語とそうじゃないものがあるんだな…と考えさせられました。

また別の話ですが、沖縄の4月を舞台にした映画を見た時も、4月なのに登場人物が半袖で!季節感がうまく読み取れず、それによる地域や文化の違いがよりはっきりと浮き彫りになっていて。物語に没入できなかったことがありました。

何かコンテンツを作るとき、そういう受け取り手の地域性の違いをどこまで考慮しようか。ローカルコンテンツならまだしも、全国的なコンテンツなら、わかる人とわからない人が出てきてしまうことをどこまで許容しようか。丸山さんはどうしていますか?

私だけの物語

そうは言いつつ、この地域性がコンテンツを受け手にとっての大切な、「自分だけの物語」にしている側面はあるなあと思っていて。GLAYの「Winter, again」を聞いていて、そんなことを思ったんですね。

いつか二人で行きたいね 雪が積もる頃に
生まれた街のあの白さを あなたにも見せたい

GLAY「Winter, again」

この歌詞の、私にとって、そしておそらく多くの雪国に生まれ育った人間にとっての特別さは、計り知れないと思うんです。

雪が積もった私の生まれた街。多くのいろんな思い出、過去が降り積もったこの街に、おそらくきっと雪を知らない、あなたを連れていきたい。

「もっと自分のことを知ってほしい」「自分の原点や生い立ちを知ってほしい」とほぼ同義であろうこの歌詞。もし私が北海道を離れて、東京など暖かい土地で生きていたなら、よりぐっさぐさに刺さっていたのではないでしょうか。

この感覚、雪を知らない人にはもしかしたらわからないのかもしれない。だからこそ、雪国に生きている私にとっては特別な一曲になっています。

おわりに

こういう、コンテンツから読み取れる地域性の表現は、受け手を選んでしまうかもしれない。だけど、共有できる受け手にとっては深くフィットする特別な物語になりうるかもしれない。

そのバランス、許容範囲に、作り手の個性が表れるし、みんな悩みながら作っているんじゃないかと考えています。

…こんなこと、モノづくりをしている方にとっては自明のことなのかもしれないですよね。なんか今更恥ずかしくなってきました。でもいいや、自分の頭で考えてつかみ取った考えは財産だから。

それではまた、丸山さんからの便りを楽しみにしています。

髪色をネイビーにしてみました 大澤夏美より


丸山晶崇(株式会社と)
東京都生まれ。デザインディレクター/グラフィックデザイナー。2017年に株式会社と を設立。地域の文化と本のあるお店『museum shop T』や、千葉市美術館ミュージアムショップ『BATICA』など、ショップの企画・運営もしている。アート関係の仕事や地域の仕事を進めると共に、公開制作・展示・アーティストとの共同企画など幅広い活動を続ける。「デザイナーとは職業ではなく生き方である」をモットーに、デザインを軸にしたその周りの仕事を進めている。長岡造形大学非常勤講師。

大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)
1987年生まれ。札幌市立大学でメディアデザインを学ぶ。在学中に博物館学に興味を持ち、卒業制作もミュージアムグッズがテーマ。北海道大学大学院文学研究科(当時)に進学し、博物館経営論の観点からミュージアムグッズを研究し修士課程を修了。会社員を経てミュージアムグッズ愛好家としての活動を始める。現在も「博物館体験」「博物館活動」の観点から、ミュージアムグッズの役割を広めている。


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