短編 バイオリニストと万年筆06
「善意を蹴飛ばす。
相手の重さや軽さに引きずられない。
自分が本当に思ったことを言う」
私は今日職場で受取拒否をされたクッキーをかじりながら、ノートの端っこにその、三つの言葉を書き連ねてみた。
これは極端だ、とわかっていながらも、彼の手紙が纏っているさりげなさや、長すぎずも短すぎずもしない適切さ、飾らなさ、素直さ、ラフさ、でも紳士的。そんな、私の感じ取るあらゆる美点が、眩しかった。私も同じだけの美点を、手紙に込めたいと思ってしまっていた。
「美点」を同じだけ込められるという