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認知症の解像度が上がるおすすめ本

今日も最近読んだ本の感想です。

書店でもよく見かける最近話題の一冊。
認知症の方の体験談をもとに、多様にある症状が分かりやすくユーモアにまとまられている。
ユーモアと言ったのは、認知症そのものをひとつの島に例えて、それぞれの症状を島の中のスポットに見立てて紹介しているから。
例えば、
「乗るとだんだん記憶をなくすミステリーバス」
「人の顔がわからなくなる顔無し族の村」
「入る度に泉質が変わる七変化温泉」
などなど。
暗くなりがちなテーマだが、絵柄が優しくてキャッチーな表現でまとめられているので読みやすい。
私の中で認知症に対する解像度が格段に上がったと思う。


そもそも何故まだ20代の私がこの本を手に取ったかというと、その理由は大きく分けて2つある。

ひとつめは、自分自身が最近忘れっぽくて不安だったから。
昔はすぐに出てきた言葉たちが出てこないことや、何かを説明するときに話す順序が分からなくなって混乱することがよくある。これは病気ではないかと確かめたい気持ちと、そうでなかったとしても、自分にも近い将来認知症になる恐れがあって先に知っておきたいという目的があったからだ。

ふたつめは、将来家族や身近な人がなったときにどうすれば良いか分からなかったから。
特に私の母親は専業主婦で友人も少なく一人であまり外に出ないので、認知症になりやすいのではないかと心配している。そして、その未来はきっとそんなに遠くない。
家族や身近な人が認知症になることで関係性が悪くなったり、気持ちが落ち込むことを少しでもいいから避けたかった。
そのためにはまず、「知ること」だと思ったからだ。

期待通り、この本には私が知りたかったことが書かれていた。



私の中で「認知症」のイメージは、
・物事を忘れる
・子供の頃に戻ってしまう
このふたつだった。

しかし、これは表層的なイメージで、本当は認知症の方の頭の中ではもっといろんなことが起きていた。
そもそも「認知症」とは、

「認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態」のこと。
そして、認知機能とは、「ある対象を目・耳・鼻・舌・肌などの感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断したり、計算や言語化したり、記憶に留めたりする働き」のことです。

「認知症世界の歩き方」p.9

これによると、記憶に関する症状はその中のひとつに過ぎないという。

例えば、認知症の方がお風呂に入ることを嫌がるというのはよく聞く話である。
子供の頃に戻って駄々をこねているのだと、私は勝手に思っていたが、人それぞれ理由は異なっている。

1.温度感覚のトラブルでお湯が極度に熱く感じる
2.皮膚感覚のトラブルでお湯をぬるっと不快に感じる
3.空間認識や身体機能のトラブルで服の着脱が困難
4.時間認識や記憶のトラブルで入浴したばかりだと思っている

「認知症世界の方」p.10


これだけの理由があると気づくと、ちゃんと向き合えるような気がしてくる。
認知症の方の介護で辛いことのひとつは、相手の言動が理解できないことだと思う。
しかし、こういった理由を知ることで周りの人はどう対応すれば良いか考えることができるし、少しでも気持ちが楽になるのではないだろうか。
この時点で、私の「知る」という目的を達成することができた。

認知症の症状の中には、日常で経験したことがあることが多かった。
例えば、「今何をしようとしていたかすぐに忘れる」とか「買ったことを忘れて同じものを何度も買ってしまう」とか「両手で何かを持っている時に間違えて捨てないものをゴミ箱に捨てて、捨てるべきものを持ったまま」とか。
頻度は違えど、誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。
認知症の症状は私たちの日常の延長線上にあるのだと実感し、やはり他人事ではないと思った。


今の私と認知症の方とでは見えている世界が違うので、当然理解に苦しむだろう。
しかし、ひとつひとつ紐解いていけば納得出来るかもしれないし、お互い過ごしやすい環境が作れるかもしれない。
理解できないと突き放すのではなく、向き合う努力を忘れてはならないと、この本に教えてもらった。
ただ、もちろんこの本に書かれていることが全てでは無いだろうから知った気になってしまうのも違うと思うので、気をつけなければならない。



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