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弱聴の逃亡日記

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東京から故郷の岩手県まで歩いて旅した経験談を少しコミカルに、ときどき真面目に綴ります。
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2018年10月の記事一覧

弱聴の逃亡日記「過食症になった理由」

 周りの目がある時は元気で健康なフリが出来たが、一人になるとそうは行かない。空虚感に襲われ、いつも同じ疑問が何度も何度も繰り返された。

 何の為に働いているのだろう?
 どうしてこんなに頑張るのだろう?
 自分が招いた結果なのに、どうして理不尽だと感じるのだろう?
 生きるってこんなに辛いものなのだろうか?
 少し前まではあんなに楽しかったのに。
 この辛い日々はいつまで続くのだろう。
 出口

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弱聴の逃亡日記「夜旅の瞑想」

  11月27日 旅5日目

 温泉施設で疲れを癒した弱聴は、今夜は野宿せず夜通し歩こうと決めていた。
 風呂から上がると、施設内の座敷で食事し、閉店ギリギリまで仮眠をとって温泉施設を出た。
 時刻は深夜二時。夜の宇都宮の街へ出る。

 夜の宇都宮の街は店のネオンやLEⅮ看板がカラフルで視界は賑やかだが、辺りは静かでそのギャップが幻想的だった。

 温泉に入り仮眠もとった後なので、体が軽い。足が

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弱聴の逃亡日記「2人の小さな友達」

 民家や田畑の続く景色からビルや商業施設がぽつりぽつりと見えるようになってきた。
 栃木県の県庁所在地、宇都宮に入ったのだ。宇都宮駅が近づくにつれ大きな建物が増えていく。

 4号線を歩いていると前方に「湯」の看板を発見した。
 ちょうどいい、この温泉施設でじっくり体を休めることにしよう。

 日曜の夕方ということもあり、店内は家族連れの客で賑わっていた。
 弱聴も他の客に混じって湯船に浸かってい

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弱聴の逃亡日記「戻りたくない日常」

 長くて辛い徒歩の旅に早くも後悔し始めた弱聴。 
 では今すぐ旅を辞め、元の生活に戻りたいか?と聞かれたら――素直に頷けない自分がいる。

 24時間働いて、24時間休む。そういう生活をかれこれ4年間続けていた。テレビの編集の仕事だ。
 24時間働き続けるのは辛かったが、次の日が休みになるのが魅力的だった。
 自由な時間がたっぷりあったため、体に負担を感じながらも一日置きに働く生活サイクルに満足し

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弱聴の逃亡日記「2度目の野宿」

 11月25日 旅3日目 夜

 この日は栃木県小山市で2度目の野宿に挑戦した。
 ちょうどいい公園が見当たらず、営業時間が終わり暗くなった店舗の駐車場で眠ることにした。人に見つからないように物陰に隠れるような場所を選ぶ。
 1度目の寒さで撃沈した経験を悔やみ、弱聴は道中で寒さ対策のアイテムを調達していた。保温性のあるレジャーシートやホッカイロ、新聞紙などを広げさっそく寒さ対策を試みる。

 まず

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