ぽすたん(PoS&ThaN)

東方室内楽アレンジ サークル「そなたび」 作ったアレンジの解説など置いてます

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マガジン

  • 作品解説:弦楽四重奏の為の「夛世界」七夕坂夢幻能

    2024年6月1日 東方紅楼夢 19.5 遠野物語 / 夢の世紀魅知の旅 再訪で頒布予定の秘封アレンジの解説になります。

  • 作品解説:ピアノ三重奏アレンジ「賢将」東方星蓮船

    2024年5月3日 第21回博麗神社例大祭(春)で頒布しました、東方星蓮船のピアノ三重奏アレンジの解説記事まとめになります

  • 作品解説:ピアノ三重奏アレンジ「無彩色」東方バレットフィリア

    2023年5月7日 第20回博麗神社例大祭(春)で頒布しました、東方バレットフィリアのピアノ三重奏アレンジの解説です。 アルバムのアートワークは下記からどうぞ https://sonatabi.main.jp/WORK/SNTB-0001/SNTB-0001.png

  • 作品解説:ピアノ三重奏アレンジ「虹」 東方虹龍洞

    2023年5月7日 第20回博麗神社例大祭(春)で頒布しました、東方虹龍洞のピアノ三重奏アレンジの解説です。 アルバムのアートワークは下記からどうぞ https://sonatabi.main.jp/WORK/SNTB-0001/SNTB-0001.png

記事一覧

あとがき

後書き 後書きの後書き「……。蓮子、何とか弾き切ったわね。それにしてもいないはずのパートがずっと聞こえていたような……。あれは何だったのかしら」 「え?そうだっ…

まえがき

前書きの前書き「ふぅ……。ほら、蓮子。言われた通りヴァイオリンを持ってきたわよ」 「お疲れ様、メリー。実は見てほしいものがあってね、実家に帰っていたときに見つけ…

「夛世界」第四楽章: Finale: "Decoherence"

解説第三楽章の重要人物であるヴィオラが抜けて、ついに二重奏(秘封倶楽部)になります。 不思議を探しに行ったメリー(1stヴァイオリン)が神隠しに遭い、残された蓮子…

「夛世界」第三楽章: Minuetto di onda e particella

解説第二楽章までは四重奏でしたが、第二楽章の重要人物の2ndヴァイオリンが抜けて三重奏になります。 量子力学を語る上では避けて通ることのできない波と粒子の二重性を…

「夛世界」第二楽章: Scherzo dell'Entanglement

解説忙しなく刻むリズミカルな音楽、さながら原子振動などのミクロな物理現象のような、機械的 それが一転して中間部では、それまでの音楽と対比をなすように妖しいメロデ…

「夛世界」第一楽章: Introduction: "Superposition"

解説静謐な時間・場所で、朝日が折り重なるように差し込む中、あたりの霧が静かにたゆたうような寂寞とした曲です。 素材としているメロディは少ないですが、光の加減や時…

「賢将」第三楽章

解説聖白蓮は東方における仏教の権化ということもあり、好きなキャラですのでそうした思い入れも込めて書いたアレンジになります。 短いけれども深く印象に残るような曲を…

「賢将」第二楽章

解説「魔界地方都市エソテリアに民族音楽があったらどうなるか?」みたいなことを考えながら作ったアレンジですが、毘沙門天ということで仏教的な要素も少し入れています(…

「賢将」第一楽章

解説ベートーヴェンのピアノ三重奏曲7番「大公」のオマージュで、賢将ことナズーリンを将校に見立てた、勇しく力強い感じのアレンジを目指しました。 「春の湊に」のメロ…

ピアノと弦楽合奏の為の《庚申待》

前書きの前書き「メリー、ちょっといいかしら?」 「えぇ。……ん?もしかしてまた演奏会ぃ?」 「そうよ!今度は『庚申待』!」 「庚申待……。まさかだけど、夜通し演奏…

ピアノと弦楽合奏の為の《十牛図》

前書きの前書き「メリー、ちょっとこれ見てみてよ」 「……これは、ひょっとして楽譜?」 「そう!この間の古本市で見つけたの」 「ふーん。なになに、ピアノと弦楽のため…

「無彩色」第3楽章

このアレンジについて原曲 東方バレットフィリアから 「100回目のブラックマーケット」、「あの賑やかな市場は今どこへ」 聴きどころ 哀愁のある序奏と、リズミカルな舞…

「無彩色」第2楽章

このアレンジについて原曲 東方バレットフィリアから 「闇市場は場所を選ばない」、「弾幕を持て、バレットフィリア達よ」 聴きどころ 道中テーマが力強く輝かしく奏で…

「無彩色」第1楽章

このアレンジについて原曲 東方バレットフィリアから 「ワクワクする見慣れた幻想郷」、「妖怪フックオン」 聴きどころ 静かに幻想郷のテーマと、陽気で活発なボス戦テ…

「虹」第3楽章

このアレンジについて原曲 東方虹龍洞から 「駒草咲くパーペチュアルスノー」「スモーキングドラゴン」 (バンデットリィテクノロジー、大吉キトゥン) 聴きどころ 澄み…

「虹」第2楽章

このアレンジについて原曲 東方虹龍洞から 「深緑に隠された断崖」「バンデットリィテクノロジー」 (神々が恋した幻想郷、芥川龍之介の河童) 聴きどころ リズミカルで…

あとがき

あとがき

後書き

後書きの後書き「……。蓮子、何とか弾き切ったわね。それにしてもいないはずのパートがずっと聞こえていたような……。あれは何だったのかしら」
「え?そうだったの?私はメリーが途中でいなくなっちゃってびっくりしたわよ。でも途中で止めるわけにはいかないからずっと頑張って弾いてたのよ!」
「いなくなったって?私が?んー、そういえば休みに入ったあと小節を数えていたら目の前が真っ暗になって、そしたら小

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まえがき

まえがき

前書きの前書き「ふぅ……。ほら、蓮子。言われた通りヴァイオリンを持ってきたわよ」
「お疲れ様、メリー。実は見てほしいものがあってね、実家に帰っていたときに見つけたんだけど」
「また時代のついた楽譜ねぇ。えーっと、弦楽四重奏の為の『夛世界』(たせかい)?ふーん、でも私たち二人だけでしょう?」
「それがね、2ndヴァイオリンとヴィオラパートが全部白紙で、どう見ても二重奏なのよ」
「えぇー!?あ、本当だ

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「夛世界」第四楽章: Finale: "Decoherence"

「夛世界」第四楽章: Finale: "Decoherence"

解説第三楽章の重要人物であるヴィオラが抜けて、ついに二重奏(秘封倶楽部)になります。

不思議を探しに行ったメリー(1stヴァイオリン)が神隠しに遭い、残された蓮子(チェロ)はひとり常陸へ向かいます。
しかしそこで見つけられず途方に暮れますが、メリーの後を追いかけて行くと、呼び掛けに応える声が聴こえる!
二人が手を取り合うとき、見えざるものたちの力により、元の世界へ戻っていく。
そこは輝きに満ち満

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「夛世界」第三楽章: Minuetto di onda e particella

「夛世界」第三楽章: Minuetto di onda e particella

解説第二楽章までは四重奏でしたが、第二楽章の重要人物の2ndヴァイオリンが抜けて三重奏になります。

量子力学を語る上では避けて通ることのできない波と粒子の二重性を、それぞれにメロディを当てて表現したメヌエットです。
また波はarco(弓で弾く:ひく)、粒はpizzicato(指で弾く:はじく)というように、奏法も別々になっています。

最初、波・粒は別々で現れますが、曲が進むにつれて境界が曖昧に

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「夛世界」第二楽章: Scherzo dell'Entanglement

「夛世界」第二楽章: Scherzo dell'Entanglement

解説忙しなく刻むリズミカルな音楽、さながら原子振動などのミクロな物理現象のような、機械的
それが一転して中間部では、それまでの音楽と対比をなすように妖しいメロディが登場し、あのお方の姿が一瞬垣間見えます。
再び元のリズミカルな音楽に戻り、その勢いのまま終わります。

コンセプトベルの不等式は、物理量に隠れた結びつき(変数)がないか調べるために考案されたものですが、東洋思想では
『老子』の「これを視

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「夛世界」第一楽章: Introduction: "Superposition"

「夛世界」第一楽章: Introduction: "Superposition"

解説静謐な時間・場所で、朝日が折り重なるように差し込む中、あたりの霧が静かにたゆたうような寂寞とした曲です。

素材としているメロディは少ないですが、光の加減や時間の移ろいで少しずつ表情が変わっていくようなアレンジになっています。

原曲

「七夕坂夢幻能」から
「七夕坂に朝が来る」

曲調

調性:ホ短調
拍子:4/4
形式:ソナチネ形式(展開部省略型)

呈示部序奏(0:00)

アルペジオ(

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「賢将」第三楽章

「賢将」第三楽章

解説聖白蓮は東方における仏教の権化ということもあり、好きなキャラですのでそうした思い入れも込めて書いたアレンジになります。

短いけれども深く印象に残るような曲を目指したいと考えていたとき、↓の曲を見つけ、素朴だけれども心に響く音楽に感銘を受け、この方向性で作ろうと決めました。
非常に安らかで満たされた気持ちになる曲ですので、よろしければぜひ聴いてみてください。

Lou Harrison & R

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「賢将」第二楽章

「賢将」第二楽章

解説「魔界地方都市エソテリアに民族音楽があったらどうなるか?」みたいなことを考えながら作ったアレンジですが、毘沙門天ということで仏教的な要素も少し入れています(後述)。

イントロからの激しい変拍子は、バルトークの弦楽四重奏第五番第三楽章 Scherzo (Alla bulgarese):ブルガリア風のスケルツォのオマージュです。

ブルガリアの民族は4+2+3/16拍子のような、細かく変則的な変

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「賢将」第一楽章

「賢将」第一楽章

解説ベートーヴェンのピアノ三重奏曲7番「大公」のオマージュで、賢将ことナズーリンを将校に見立てた、勇しく力強い感じのアレンジを目指しました。

「春の湊に」のメロディが多いのでどうまとめるか悩みましたが、「賢さ」=余計なものをそぎ落とす、大切なものを見定める(見つけ出す)というコンセプトで、曲が進むにつれてメロディが減っていくという大きな流れに落とし込みました。

ちなみに楽想のNasuto(ナズ

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ピアノと弦楽合奏の為の《庚申待》

ピアノと弦楽合奏の為の《庚申待》

前書きの前書き「メリー、ちょっといいかしら?」
「えぇ。……ん?もしかしてまた演奏会ぃ?」
「そうよ!今度は『庚申待』!」
「庚申待……。まさかだけど、夜通し演奏し続けるとかじゃないんでしょうね?」
「いやいや、さすがにそんなことはないわ。尤も作曲者はもともとそうするつもりだったみたいだけど笑」
「……やっぱりその作曲者ちょっと変わってるわよ、蓮子」
「ちなみに演奏会はちょうど庚申の日だから、打ち

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ピアノと弦楽合奏の為の《十牛図》

ピアノと弦楽合奏の為の《十牛図》


前書きの前書き「メリー、ちょっとこれ見てみてよ」
「……これは、ひょっとして楽譜?」
「そう!この間の古本市で見つけたの」
「ふーん。なになに、ピアノと弦楽のための……『十牛図』?」
「あなたピアノ得意でしょ?」
「ちょっとは弾けるけど……蓮子、まさか」
「弦楽サークルにも話はつけてあるわ。忘れられた曲の復活上演よ!」
「はぁ……何が起きても知らないわよ」

前書きお手にとってただきありがとうご

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「無彩色」第3楽章

「無彩色」第3楽章

このアレンジについて原曲

東方バレットフィリアから
「100回目のブラックマーケット」、「あの賑やかな市場は今どこへ」

聴きどころ

哀愁のある序奏と、リズミカルな舞曲の先にある祝祭感あふれるサビが聴きどころです。

そして最後に「市場の神」が力を取り戻し降臨する場面(大袈裟?)は全曲1番のクライマックスです。

「市場」にちなんだクラシックの名曲が引用されている部分があります。

ざっくり解

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「無彩色」第2楽章

「無彩色」第2楽章

このアレンジについて原曲

東方バレットフィリアから
「闇市場は場所を選ばない」、「弾幕を持て、バレットフィリア達よ」

聴きどころ

道中テーマが力強く輝かしく奏でられるところや、対照的に
静かな曲調ながらも強い意志を感じられるようなボス曲テーマが聴きどころです。

他にも曲中で、各メロディが姿かたちを変えてさまざまに歌われるので、表情の変化を楽しんでもらえればと思います
(ちょっと暗くて長くて

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「無彩色」第1楽章

「無彩色」第1楽章

このアレンジについて原曲

東方バレットフィリアから
「ワクワクする見慣れた幻想郷」、「妖怪フックオン」

聴きどころ

静かに幻想郷のテーマと、陽気で活発なボス戦テーマとのコントラスト(対比)、
そして後半で、再び静かな幻想郷に戻った後にくるサビが聴きどころです。

ざっくり解説

バレットフィリアで最初に豪徳寺ミケから「そんな装備じゃまだまだ始めたばかり……だね」というセリフが、
「そんな演奏

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「虹」第3楽章

「虹」第3楽章

このアレンジについて原曲

東方虹龍洞から
「駒草咲くパーペチュアルスノー」「スモーキングドラゴン」
(バンデットリィテクノロジー、大吉キトゥン)

聴きどころ

澄み渡った高原の雲のメロディから始まり、それが少しずつ変化して煙のテーマへと変わっていきます。
中盤では、煙が充満するように先ほどのテーマで埋め尽くされていき、ボス曲メドレーになります。

また「煙」にちなんだロックの名曲も引用していま

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「虹」第2楽章

「虹」第2楽章

このアレンジについて原曲

東方虹龍洞から
「深緑に隠された断崖」「バンデットリィテクノロジー」
(神々が恋した幻想郷、芥川龍之介の河童)

聴きどころ

リズミカルで歯切れの良い、たかねのアジトのテーマや、
中盤では、にとりのアジトのテーマによるピアノソロ、
そして両者のテーマが主張し合うように重なりながら進んでいくところが見どころです。

ざっくり解説

場面は妖怪の山に移りますが、豪徳寺ミケ

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