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朽ちつつある遊廓跡を後世に残したい! 遊廓写真集の撮影秘話・デザインプロセス (LINE 対談 Aya Watada x Sho Momma:)

門馬 翔が代表を勤めるデザイン・クリエイティブエージェンシーTrue Romance Creative(以下TRC)では、現在、大阪の歓楽街、飛田新地の外れにたたずむ元遊郭「満すみ」を撮影した写真集、HOUSE OF DESIRES・ある遊廓の記憶 編集:篠原匡、写真:元𠮷烈) の、アートディレクション及び、ブックザインをしている。

TRC代表・デザイナーの門馬 翔が写真家・和多田アヤとLINE上での対談を行い、写真集の制作プロセスやコンセプトを語った。

*現在も製作中であり、写真集制作のためクラウドファンディングを実施している。(1月21日)
https://readyfor.jp/projects/TobitaShinchi_Masumi

Sho Momma: アヤさんには、写真集(のPDF) を見てもらいましたが、率直にどう思いました?って取り留めの無い質問ですが笑

Aya Watada:ズルいと思った笑

Sho:ズルいw なんでですか?

Aya :羨ましい笑笑 撮りたかった。

Sho:あーー。なかなかこういうの撮影する機会なさそうですよね。しかも記事も入って、ちゃんと写真集として形にするってなると、なかなか今の時代出来るもんじゃないですよね。

Aya:けど、実際撮るとなったらにキツかったと思う。

Sho :それはどういう意味で?

Aya:場所の念、みたいなものにやられちゃったかなと。

Sho:あぁなるほど…まぁおどろおどろしい雰囲気はありましたね。

Aya:別に霊感あるとかじゃないけど写真見てて感じるもん。

Sho:結構色々と当時使われていたまま残ってたものもありましたからね。僕は正直漁るのに抵抗ありましたね。一緒に撮影に行った二人(篠原、元𠮷)は、中で普通にガサゴソと色々探してましたけど笑

Aya:笑笑 タフだなぁ。

Sho:全然関係なさそうだった。(撮影をした)Retsu君に至っては最後まで理解してなかったし笑「何が怖いの?」みたいな。撮影後にお祓いに行ったんですが、「意味ある?」みたいな笑
個人的にはやっぱ愛欲の念はねぇ強いと思いますけどね。

Aya:強いね。木造に染み込んでる感じ…

Sho:真っ暗だし。お風呂の部屋があったんすけど、ふたが閉まってて、流石にそこは開けられなかった。

Aya:それは確かにこわい〜。 いまは廃墟?

Sho:怖いすね。いまは廃墟ですねぇ。 地震があったら倒壊しそう。

Aya:持ち主は?

Sho:確か、持ち主は手放したいというか、もう壊してしまいたいとかって話だったと思います。それで、もったいないからなんとかして使えないかと。

Aya:何物件撮ったの?

Sho:一つだけですね。

Aya:広そう。 一件でかなりの撮れ高。

Sho:3日間かけて撮りましたからね。

Aya:入るのには許可を得て?

Sho:そうですね。杉浦さんていう、西成で不動産をやっている、このプロジェクトのメンバーの方が、編集者である篠原さんと別のプロジェクトで繋がり、こういう物件があるんだけど何かに使えないかと。飛田の端にあって、良い立地なんですよ。

Aya:貴重な記録だよねぇ。

Sho:そうそう。「消えていく物を記録する」というのが、篠原さん率いる蛙プロジェクト及、この写真集のテーマです。

Aya:記録だから撮り手がニュートラルって大事。

Sho:Retsu君は映像作家で元々写真家では無いので、ニュートラルに撮ることを意識していますね。小津安二郎の絵の作り方(アングル)とかをインスピレーションにして撮影していました。

Aya:私が撮ったら要らないバイアス発生してたかも。

Sho:後、全体(のディレクション)としてはウォン・カーウァイの映画みたいにしようっていう話になって、彼の映画音楽流しながら撮影してましたね。それはそれで不気味に拍車かかって僕は怖かったんすけど笑 

Aya:いずれにせよ翔さんは怖かったんだ笑

Sho:なんか怖かったすね。怖い話にハマってた時期だったのもあってw

Aya:なんだ笑笑 嫌いじゃないわけだ。

Sho:嫌いではないんですけど、怖がりではあるかと。

Aya:怖いってのもあるけど、ゴシップ性の強い素材だよね。好奇心を刺激する。

Sho:確かに。良くも悪くも考えさせられるテーマですからねぇ、飛田は。

Aya:写真に惹かれて記事も読みたくさせるもん。知りたくなる。

Sho:記事が面白いんですよ。現役の飛田新地料理組合の組合長さんのリアルな話とかなかなか聞けないですからね。

Aya:日英バイリンガルだよね。同じ内容で?

Sho:記事の内容は同じですね。構成的には英語版が左開きで、日本語版が右開きで、真ん中で終わるっていう。

Aya:そっか。で、写真はざーっと通して見られるわけね。日英で同じ写真使ってないよね。

Sho:ですね。記事に付随した説明的な図は同じですけど、写真はどちらから開いても楽しめると思います。英語版の方は主に、満すみの建物内部が中心で、日本語版はダンスホールと中庭が中心の構成になっていますね。

Aya:本のサイズは?

Sho:220 x 320mmです。結構大きいですね。

Aya:いいね。とんぼの本(新潮社)みたいなサイズじゃないんだ笑 デジタルで撮ってても仕上げ方がポジフィルムみたいだなって思って、新潮社のトンボのシリーズ思い出したんだけど笑

Sho:とんぼじゃ無いですねw ポジっぽいのは意識してますが。

Aya:世界に入っていけるサイズ感。

Sho:まさしくそれが狙いですね。写真集はやっぱ大きい方が見応えありますよね。臨場感を出したい。

Aya:見ててドキドキしそう…この場所はいつまで現役だったの?

Sho:20年ほど前まで営業していたので、実はそんなに古くは無いんですよね。その割には古い資料がめっちゃ残ってましたね。

Aya:やはり。なんとなく同時代で知ってる要素あるもんね。結構年配の方も働いてらしたのかね。

Sho:かなりいたんじゃ無いですかね。遊女だけでなく、遊女を引退した女性が客引きになったりする流れが今でもありますからね。飛田、行ったことあります?

Aya:ないです。

Sho:この雰囲気、アヤさんは好きだと思いますね

Aya:どうかなぁ…

Sho:奇妙な場所に入った感じはありますよ。

Aya:撮影場所として、そこをお借りしてフィクションやるってんなら良いけど、史実と向き合うのはキツイというか重いものがある。

Sho:どういう目線で見れば良いか難しいところですよね。文化として興味深いですが、人身売買など性産業が抱える問題となると「興味深い」では済まされないというか…

Aya:歴史・文化と性産業の是非は別…でも歴史は現在まで続いているんだもんね…

Sho:そうそう。だから記録するのは大事な事であると。時代に合わないものは消えていくのが世の常なので。あの頃はこういう感じだったみたいな事って実はほとんど記憶が曖昧ですからね。飛田もいつなくなってしまうか分からないし。。。

Aya:飛田は今どんな?

Sho:いわゆる赤線街のままですね。おばちゃんと若い女の子が座敷に座ってて、歩いてるとあちらこちらから声かけられるっていう。

Aya:おばちゃんピンプ!?

Sho:そう。客引きですがw

Aya:わぁ…(ポートレート撮りたい…)笑

Sho:あぁーそれは面白い。撮りたいと思うと思います。でも残念ながら基本写真は撮れないですね。それに外部からの女性は歩いてるだけで、おばちゃん達にすごい剣幕で野次られたりします。

Aya:えー!野次られる?!

Sho:冷やかしにならないように嬢を守ってるわけですね。買う気ないなら来るなと。真剣な商売ですから。女が立ち入るところではないと。はっきり。

Aya:まぁそりゃそうだよね。撮影ではトラブルなかった?

Sho:撮影自体は、廃墟の中での撮影だったので問題なかったです。もちろん嬢とおばちゃんは撮れないですし。

Aya:廃墟での撮影前後は? 

Sho:基本撮ってはいけない場所なので、撮れないのが前提です。今回のプロジェクトでは飛田の街中で映像も撮ってるんですけど、その時は料理組合の方々が協力してくれて、数分だけ嬢とおばちゃん達を隠して、道を塞いで、撮影したらしいです。僕はその撮影は立ち会えなかったんですが。凄まじい緊張感だったらしいw その辺はRetsu君にも聞いてみると面白いかと。

Part 2 へ続く


和多田アヤ AYA WATADA 写真家
6歳の時に父親の転勤でタイ·バンコクに移り10歳まで暮らす。
1992年慶應義塾大学文学部に入学。カメラクラブに入部
1996年キャノン写真新世紀佳作に入選
1999年江副記念リクルート財団奨学生としてフランス·アルルの国立写真学校に留学。
2009年小林政広監督作品「春との旅」スチールフォトグラファーとして抜擢される。
2009年ドイツ·ベルリンに拠点を移す
2012年帰国
2015年東京·代々木に自身のスタジオWhatever Works Studioを構える
2016年には株式会社ぽるとれを設立。マタニティフォト”Happy Birth Photo Studio”と女性メモリアルヌードフォト”studio IVY”の事業を展開
2017年、ロンドン発ファッションフォトグラフィー教育プログラム”Mastered HQ”に参加。
SHO MOMMA 門馬翔(もんま・しょう) True Romance Creative代表
アートディレクター・グラフィックデザイナー
高校卒業後に渡米。ニューヨークのFIT(ファッション工科大学)にてデザインを学ぶ。2008年に卒業後、ニューヨークのデザイン事務所で、ガゴシアンギャラリーをはじめとした、国内外の著名なアーティストやギャラリー、ミュージアムの展示会のブランディングやカタログの制作に携わり、2018年後半に独立。Vice mediaやスワロフスキー、Garage Magazineとのコラボレーションや、J. PRESS USAのキャンペーンのAD・デザインを担当。2019年に帰国後、アート、ファッション、カルチャーを専門にした、デザイン・クリエイティブエージェンシーTrue Romance Creativeを設立。









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