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仕事漬けのあなたへ 〜AIはあなたを労働から解放するかどうか

秘書が欲しいと言う人をたびたび見かける。多忙な自分の予定を管理してもらいたいという欲望の現れ。

僕たちの人生は長くなった。これからもっと長くなっていくことだろう。有害な脂肪(白色脂肪)を有益な脂肪(褐色脂肪)に置き換えることによって、糖尿病や心臓病、脳卒中、脳機能障害のリスクを大幅に軽減することができる。

つまり、人工的な操作によって若さを取り戻し得る時代がまもなくやってこようとしている。

人生は長くなる一方だ。しかし、日常は多忙になっていく。僕たちは不健康になっていく。

例えば、機械やインターネットは生活を便利にした。そのおかげで僕たちは多くの余剰時間を手にした。けれど、あろうことか、僕たちはその余剰時間を労働することに充てた。

労働を機械に肩代わりさせ、インターネットで効率化したのに、人々はまたも労働することを選択した。

「生まれてくるということはある意味では人攫いにあったようなもので、奴隷に売られたみたいにみんな休みなく働く」ってアンディ・ウォーホルも言っているね。その通りだと思う。僕たちは20世紀からなにひとつ進歩していない。

ワークライフバランスっていう言葉は、当初は「仕事とプライベートの時間配分」っていう意味でもちいられていたような気がするんだけど、どうやら今では「仕事もプライベートも充実させること」という意味になっているらしい。

「当初の意味:仕事漬けだった生活からプライベートへの時間の再配分をおこなう」から「現在の意味:仕事もプライベートも頑張っていこう!」へ。

僕たちはなにに働かされているのだろう。僕たちはどうしてこんなにも頑張らないといけないのだろう。

AIが今よりも一般的なものになって、今よりも人の生活に寄り添うものになれば、人間は働かずに生きていける。余剰時間は増えて、プライベートを生きることができるようになる、という言説もあるが、そんなことは絶対に起こりっこない。歴史がそのことを証明している。

人間はきっと新しい仕事をまた生みだす。僕たちは働くことが好きなんだ。もう働きたくない、と青ざめた顔で言いながら職場へ向かう。職場では愛嬌よくしている。帰りの電車ではスマホのゲームで人を殺している。ほかのプレイヤーに勝つためにはより強い武器が必要だ。そのために月給の一部を課金する。新しく手に入れた武器でより多くの人を殺す。そのときの僕はきっと無表情だ。

機械やインターネット(スマートフォン)は生活をたいへん便利なものにした。AIも僕たちの生活をきっと今よりも便利なものにしてくれるだろう。

今やスマートフォンなしで生活するのは難しい。必需品になっている。魔法使いにとっての杖のようなものである。しかしスマートフォンは同時に害悪ももたらしている。僕はその害悪を直視すべきだと言うわけではない。

僕もスマートフォンを使っている。捨てられないでいる。でも、見えないふりをしていたらいけないと思う。害悪的な部分から目を逸らしてはいけない。

人類はスマートフォンとどのようにして向きあっていくべきか、もっと考えるべきだと思う。考える間もなく普及してしまった。AIもきっとそうなるのだろう。


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