【ほぼ毎日エッセイ】死ぬ前に食べたいものって言われたら

【2019/06/12】
少し残業した帰りに通り過ぎる松屋の前は、どうしてあんなにもいい匂いがするのだろうか。
鼻から侵入してくるあの暴力的な匂いは、もはや犯罪だ。
気分はすっかり牛丼になってしまうし、家に帰るまでに何かを口にしてしまいたくなる。
牛丼は重いにしても、それに負けてファミチキやらからあげ棒なんぞを食べてしまっては、とどまることを知らない腹囲の広域化と「夕飯前に食べてしまった」という精神的ストレスを大いに受けるため百害あって一利なしなのである。
ただ、あの激しく心を揺さぶられる牛丼やらカレーやらが入り混じった匂いを嗅いだ瞬間に「あっ、今日も仕事終わったな」と思う会社員は私だけではないだろう。
悲しいかな、あの匂いによって安堵するのもまた一つなのだ。

仕事終わりのなんとも言い表せない空腹とともに電車に揺られながら、友人とのTwitterでのやり取りを思い出す。
デスクの整理をしていたらでてきたというそれは、大変面白そうだった。

「地球最後の日に何食べるかドラフト」
なんだこの胸躍らせるテーマは。
これをツマミに3時間は飲めそうな話題ではないか。
ホッピーなら外ビンを1本半は空けて、ぐでんぐでんになってしまいそうだ。
いや、むしろそんな状態で話したいような話題でもある。
このメモには”朝・昼・夜”と別に書かれているが、このエッセイは原則家に着くまでで書き終えようと思っているため、細かなことを気にせず、死ぬ前に何を食べたいかというのを列挙するだけにしようとおもう。

まず頭に浮かんできたのは「レバ刺し」である。
現在、牛をはじめとしてレバ刺しの提供は禁止されているため食べられないのがなんとも悔しい。
せめて死ぬ前くらいにはごま油にニンニクを混ぜたタレに長ネギの細かいのを包んだ新鮮なレバを付けて食べたいものである。
死ぬ直前に鉄分を補給して意識をしゃっきりさせるのも如何なものかと思うが、こればっかりは譲れない。
他にはなんだろうか。
チキン南蛮なんかも食べたい。
サクサクの竜田揚げに怒られるくらいタルタルソースをかけたやつを口いっぱいに頬張りたい。
あっ、あとあれだ。
ラーメンなんかも忘れちゃいけない。
こってこてでばっちばなラーメンを「これでもか!」と頬張ってやる。
なんならチャーハンだって付けてやろう。
過剰なカロリー摂取も死ぬ前くらいは許してほしい。
あとはなんだろう。
金沢で食べた海鮮丼とかも死ぬ前に食べたいな。
お刺身がブリンブリンで活き活きとしていた、あれ。
死ぬ前に「うおおおおおいきてるうううう」って感じたい。

悲しいかなこれらは全部24年間しか生きていない私の死ぬ前に食べたいものであって、思えばこれから何十年も生きるのだ。
まだまだ美味しいものとたくさん出会えるし、食の好みだって間違いなく変わってくるだろう。
そう考えると美味しいものを食べるために健康を維持して、長生きするのも悪くない。
LAWSONで買ったエルチキを頬張りながら家に帰りながらそんなことを思った。

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