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本の感想たち

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読んだ本について思ったことや考えたことを書きます。
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2021年8月の記事一覧

ブラームス交響曲2番を聴きながら

ブラームスの交響曲2番を初めて聴いた時のこと。「クライマックスだけ壮大であとは平凡で退屈だな…」と思ったことは今も鮮明に覚えている。その後コンサートでも、退屈すぎて第3楽章で眠ってしまった経験がある。

ただ不思議なことに、クラシックというのは聴けば聴くだけ曲の魅力が分かってくるもので、突然その素晴らしさに開眼することはよくある。視界を遮る霧が、移動し続けたり、時間の経過によって晴れるのと全く同じ

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池上英洋『西洋美術史入門』

池上英洋『西洋美術史入門』

池上英洋著『西洋美術史入門』を昨日読んだ。
美術史というのは美術の歴史を追うという文字通りの意味だけではなく、なぜある作品や様式がその時代や社会、地域で描かれ、流行したのかを探る学問だと言う。そしてそれらを知ることは、当時生きた人間を知ることであり、ひいては「自分自身のことを知る」ことだと。

歴史は自分を写す鏡だということはよく言われるが、まさに同じことだ。中世ヨーロッパを襲ったペストによって、

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高見沢潤子『兄 小林秀雄との対話』

昨晩、寝る前に高見沢潤子『兄 小林秀雄との対話』を読み始めたらストッパーが効かず、夜中の2:30くらいまでぶっ続けで読んでしまった。

本書は兄妹が芸術、文学、宗教、歴史、哲学、作家の生活などを語らうという形式で、小林秀雄の思想が凝縮されつつも、とにかく射程の広い一冊。間違いなく今年のベスト本。

読了後はすっと眠りについたのだが、余韻からか、夢には絶え間なく本書で語られていた思想が右往左往してい

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