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ニュースを断つことで得られる大切な時間。ロルフ・ドベリ著「News Diet」

「能力の輪」の内側にある情報はどれも価値のあるものばかりだが、「能力の輪」の外側にある情報はすべて無視したほうがいい。

時短のノウハウが書かれた本ではないですが、この本に書かれていることを実践することで、1日90分以上の自由時間を手に入れることができます。
「News Diet」は、1日のスケジュールを書き出したり、最新家電に買い替えたり、宅配ミールを頼みなさいといった手間のかかる”時短ハック”を紹介する本ではありません。

「ニュースを断つ」

ただそれだけです。このシンプルなテーマだけで256ページ語っています。
シンプルだけど奥が深い。そんな「News Diet」は、ニュースだけでなくSNSやメディアとの向き合い方を教えてくれる本です。

News Dietとは

ニュースを生活から排除し、ニュースから自由になること。なにか目的があってグーグル検索やメディアをみているときに現れるニュースに寄り道をしてはいけない。

何を探すかを決めるのは、自分でなくてはならない。進む道を定めるのは、自分でなくてはならない。

自分をニュースにいいように操らせてはいけない。

ニュースの危険性

ニュースはアルコールに比べて、超えなければならないハードルが低い。ハードルが低いというと、いいことのように聞こえるが、じつは全くそんなことはない。
アルコールを手に入れるためには、コンビニに買いに行かなくてはいけないし、そのためにはお金と時間が必要になる。つまり、アルコールを無料で手に入れることはできない
一方でニュースの場合は、自分の周りのいたるところにある。スマートフォンを開けば通知バーにお知らせが届いているし、SNSをひらけば目につくところにニュースが並んでいる。つまり、アルコールとは違ってお金もかからないし、自分から探しにいかなくても自然とそこにいる

ニュースを断つことで得られるもの

本書にかかれていることを実践することで得られる「余分に手に入れた時間」について以下に引用する。

(ニュースを断ったことで)以前よりも一日あたり九〇分、余分に時間を手に入れたことになる。一週間分あわせると、一日の労働時間に相当する。控えめに見積もっても、あなたには一年につき一ヶ月以上もの余分な時間ができることになる。以前は十一か月だったあなたの一年が、ようやくまた十二か月に戻るのだ。

私はこれまでに何冊ものタイムマネジメント本を読んできたが、成果がおもったようにでることはなかった。
本を読んでいるときや読んだあとは「よーし、時短するぞ!」というやる気に満ちた状態で、1日のスケジュールやタスクごとの時間を計測をはじめた。しかし、タイムマネジメントに神経をすり減らしても時間が大きく減ることはなく、しばらくはそれについて考えることを拒否していた。

そんな中であまり期待もせずに購入したNews Dietに書かれていることはとてもシンプルで、簡単に実行に移せるうえに、すぐに効果がでた。

本書にかかれているとおり、ニュースを断つだけで60分以上の時間がニュースの足かせから解放されたのだ。

ニュースは「能力の輪」の外にある

あなたの「能力の輪」の内側にある情報は、どれも価値のあるものばかりだが、「能力の輪」の外側にある情報はすべて無視したほうがいい。

ニュースを断つといっても、何からなにまですべて無視するというわけではないことに注意する。本書では、その情報が「能力の輪」の内側なのか外側なのかで価値のある情報と価値のない情報を切り分けると言っている。

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※上の図の影響の輪のなかが価値ある情報

能力の輪の内側にある情報は、自分に関連する分野や興味のあること。
例えば、私は5児の父なので育児に関連する情報や自身の仕事に関する情報が該当する。

一方で、能力の輪の外側にある情報は、自分にとって価値のない情報。時間の無駄。
例えば、芸能人の不倫や有名企業の顧客情報漏洩、コロナの感染者数が何人なのか、モンハンが動物虐待にあたるのではないかといった議論など

ニュースは私たちを「受け身」にする

ニュースで報じられる大半のものごとは、自分にはどうしようもできないことばかりだ。自分ではコントロールできない情報にふれると、それに対して何もできない自分に無力感を覚え、行動する意欲が失われてしまう。その結果、受け身になってしまう。この現象を「学習性無力感」というらしい。

そして、この「学習性無力感」のタチが悪いのは、ニュースを見ているときだけ起こるのではないところ。ひとたびニュースによって受け身になってしまうと、自分で状況をコントロールできる余地があるときでも、行動を起こさなくなってしまう
受け身人間よりも主体的に動ける人間が重宝されるこの時代に、ニュースによって受け身になってしまうのはまっぴらごめんだ。

お金は役に立つ

私が本書でもっとも共感したパートの言葉を引用する。

「関心を持つ」というのは、本来なんらかの行動を起こすことを意味するものだ。瓦礫の下から這い出てくる地震の被災者の様子を夜のニュースで眺めながら哀れみに浸る行為は、なんの助けにもならないだけでなく、嫌悪すら催させる。地震の被災者や戦争難民や飢えに苦しむ人たちの運命が本当に気にかかるなら、お金を寄付しよう。注意を向けたり、労働力を提供したり、祈ったりするよりも、お金のほうがずっと役に立つ
自分の労働力を提供したとしても、あなたはまったく手助けできないか、手助けできた場合でも、貢献度は非常に限定的なレベルにとどまるだろう。 自分の手で水用のポンプを組み立てるために、サハラ砂漠まで出かけていくのはやめておこう。この善意の勘違いは「ボランティアの浅はかな考え」という呼び名で知られている。 あなたが自分で設置できる給水所は、一日に一か所程度だろう。けれどもあなたが普段の仕事を(つまり、あなたの「能力の輪」の内側にあることを)一日こなして、稼いだお金をアフリカに送れば、そのお金で一日に一〇〇か所は給水所ができあがる。お金を送ったほうがずっと、世界の貧しい人々の助けになるのだ。 現地に行って労働力を提供するより、いまいる場所からお金を寄付するようにしよう。

メディアは「独自の偏った基準」で報道している

ニュースメディアが報道するのは、以下の3つの基準に該当する情報のみ

1. 新しい
2. インパクトのある画像が撮れる
3. ひとりの人の運命から記事を展開できる惨事

つまり、この基準に従って情報が発信されているということは、世界で起きていることの悲惨さを客観的に評価した結果ではないということ。

いまさらISISの様子を流してもつまらないし、原発の現況を伝えたところでインパクトもない。(かりにそれらが重要なことであっても)

この本から学んだこと

ニュースで報じられるほとんどの内容は、自分が影響を及ぼすことができる範囲外にある。日本や世界のどこでなにがどのように起きるのかをコントロールすることはできない。
であれば、ニュースに消費するエネルギーを自分で影響を及ぼすことができるものに向けたほうがずっと合理的

ニュースを断つことで、人生の充実感が増し、時間の余裕ができ、心の平静も深まる。

そして、ニュースを断ってから半月になる私はこうしてnoteを優雅に書く時間を手にしたのである。

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