ぽい

きまま。さっ

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最近の記事

坊主にピアス

桜は散った。散ったと同時に緑が生えた。春嫌いは夏を先取りする。肌寒くても半袖を着るし、裸足でサンダルを履く。まだ種類の少ない素麺を買っては茹でるし、好きでもないスイカを買おうか悩む。別に夏が好きなわけではない。ハルが嫌いなだけだ。足早に家に帰るが夏はまだ来ない。せっかちは。 指先は何を思うだろうか。知らない音、知らない光、知らない光。温度まで感知してやがる。恥ずかしくなって動きが止まらないじゃないか。 開けたセプタムは坊主にするための助走だった。坊主はアクセサリーあり気だ

    • こどもごころ

      やばい、かなりやばい。 自転車を漕ぐスピードが上がる。 今日はゆっくりとした休日なはずなのに。 帰路でトイレに急かされる。 音楽を口ずさみ意識を遠のかせる努力はしたものの無意味に近い。 それなのに、今日はいつも通らない道を通ってみたくなった。大丈夫、家までの最短距離は変わらない。そんな時にこそ出会いはやってくる。 軒下のオレンジライト。家の前にまで溢れた本たち。手書きの看板。木にマジックで書かれた子どもの文字。 ふーん、。寄ってくか。 「たまに子ども店員がいます。探

      • なにか

        「どこを目指してるの」「何になりたいの」 は、聞き飽きた。どこかを目指す必要も何かになりたい欲望も有ろうが無かろうが言う必要あるのか。 そうか、君たちは怖いのか。 僕が何処かの何かになる可能性があるから、僕に足跡をつけておきたいのか。ふーん。まぁまぁ焦るなよ。僕はそんな有彩者でもなければ無才者でもないんだよ。 人生史に足跡を

        • 巫者の戯

          鯨はナイた。ライオンのように周りの生物が後退りする逞しい立髪が欲しいと。鯨はナイた。山羊のような曲円を描く美しい角、荒れた山肌を歩くバランス技術が欲しいと。鯨はナイた。人間のような恋愛がしてみたいと。鯨はナイた。軍隊蟻のようにフェロモンにつられて歩き疲れ死にたいと。 選べない。街路樹に選ばれた銀杏は、毎秋、アスファルトを灯す役割を従命する。選べない。粘土は自分の顔も選べない。造手のアイデア任せだ。選べない。今昼はハンバーグ弁当かエビフライ弁当か。選べない。山里に食物が減少し

        坊主にピアス

          二階から目薬。三階ではだめなのか?

          ラジカセから流れるさだまさしは君への愛を確かめてた。 「梅干しは蜂蜜入りが美味しんだよ。」 「そんなはずはないね。紫蘇の香りの邪魔をしているだけではないか。」 春先に香る花粉の匂いはただの生命活動に過ぎないように、僕らのやりとりも生命活動なのだ。 「喉にもいいんだよ、蜂蜜。」 謳われた文句はすでに一般常識と化している。そしてこのやりとりは既に耳にタコだ。 「寒いね」 「そっちは雪でも降ったのかい」 「ううん、まだ。そっちは。」 「まだ。だけど盆地は底冷えする

          二階から目薬。三階ではだめなのか?

          カビたダンボール

          男が髪を結んでんのは社会的マイナスイメージやから気をつけや 唐突な差別が降り注ぐ。 それは耐えることしかできない状況で、まるで洗車中の車内のように鞭打つ音が鼓動するようで。痛い。 どういう気持ちで電車に乗るん 良くソレで人前出れるよな 抗うことも無駄に思えた。 反響するのはその声だけでなく、微笑みかける顔までがセットで付いてくる。足が止まる。 女か男かわからん奴来たぞー そのどちらかである必要があるのだろうか。 嘲笑しながら言う必要があるのだろうか。 折れたコピー

          カビたダンボール

          元気だろうか

          水たまりを跨ぐ。 が、どこか入りたい自分がいる。幼心だろうか、幼稚だろうか。 昔は周りの目など気にしたこともなかった。 溜まった水の中で寝転んだ。生温い水が服を濡らす。起き上がった時には泥だらけなんだろうな。 今はそんなこと、できないよ。寂しいな。 だけど時々、雨が降れば人目を避け靴を脱ぐ。靴下も。裸足で家まで帰る。誰にもバレずに。 密かな楽しみ。見つかっちゃいけない。 雨傘の下は雨足よりも強く踊っている。 米を炊くためだけにスリッパを履く。 卵を焼くためだけにレコー

          元気だろうか

          はい。

          髪を切った。 正確にはブリーチして色入れてパーマ2回当てた激傷みした部分を切った。もっと正確に言えば、前髪を作って襟足を整えてパーマを落とす方向に走った。 レディース寄りと言われればそれまでだ。 美容師さんともう少し切る切らないの押し問答、アイロンの当て方、手入れの仕方を話すのが楽しかったのは事実だ。 髪型に男も女もないだろ。かっこいいが全てだろ。 賛否両論が浴びせられた日だった。 心底疲れた。 価値観のぶつけ合いに僕は負けた。 ぶつけられた価値観は心臓を鷲掴みにした。

          脳天気、明日は曇り

          お前は夕方にやってくる。玄関ではなくベランダから来る。 そこまで背丈が高いわけでもないのに、四股する力士のように凛々しい君は見下ろす景色を掌握する。誰が住んでるかも分からないビル肌は真朱にそまり、地の者を置き去りにする。凹凸が無いのが羨ましい。 お前は夕方にやってくる。 水の中に浮かぶお前は先代をいくら殺したか分からない。あまりにも種類が多すぎる。喰らおうとする者を自身の子孫繁栄のために殺したにすぎないが。香りを楽しむ者、味を楽しむ者、食感を楽しむ者。冬の代名詞のように我が

          脳天気、明日は曇り

          色気って、なんだ

          色気って、なんだ。 ふと過ぎる疑問に箸が止まる。さすがに箸から煮物が落ちる事はないが、僕の名前を呼ぶ声は耳を通らない。 20代と40代の違いは何か。 例を挙げるのであれば、20代は村上虹郎で、40代はオダギリジョーだと思う。譲らない。 視線か、声か。髪型もその一部だよな。 20代の色気は視線だと思う。ドキリとさせられる視線には、重たい瞼の中に切れ長の目尻、じとっとした目が付き物だ。 視線のレーザービームとはよく言えた歌詞だと思う。 40代の色気は声だと思う。若さか

          色気って、なんだ

          くそったれ

          今日は憂鬱だ。 なんだって課長含むクソ上司たちと面談の日だから。 そんな日に限って朝の目覚めは良いことが多い。 霧が濃い。 晴れない心と調和するかのような朝は僕を勇気つける。 何も考えず、揺られてることも忘れて、死んだかのように出勤する。 同期と顔を合わせることも悶々する。 ダルイ、怠い。 地下の会議室に既に上司は揃っていた。上席は楽しそうに話をするが、僕の耳には音でしかない。これからクソ上司にぶつける言葉を脳内でせっせと反復してるのだから。 タラタラと内容の

          くそったれ