脳天気、明日は曇り

お前は夕方にやってくる。玄関ではなくベランダから来る。
そこまで背丈が高いわけでもないのに、四股する力士のように凛々しい君は見下ろす景色を掌握する。誰が住んでるかも分からないビル肌は真朱にそまり、地の者を置き去りにする。凹凸が無いのが羨ましい。

お前は夕方にやってくる。
水の中に浮かぶお前は先代をいくら殺したか分からない。あまりにも種類が多すぎる。喰らおうとする者を自身の子孫繁栄のために殺したにすぎないが。香りを楽しむ者、味を楽しむ者、食感を楽しむ者。冬の代名詞のように我が物顔で食卓を謁見し心まで温める。鍋奉行の一言は耳障りだ。いつも最後まで居残りするのは豆腐の箸切れと決まっている。

お前は夕方にやってくる
朝からベッドに居た。降りたのはご飯と風呂の時だけ。休日というのは恐ろしいモノだ。動いていないと死んでしまうような僕をここまで縛り付ける。
可能な限り努力してみた。足を床につける。半分だけ体を出してみる。シャチホコみたいに足を上げてみる。ただどれも頭の位置は変わらない。変えるつもりがないのだろう。
そして襲われる。お前は夕方にやってくる。

お前は夕方にやってくる

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