見出し画像

海外生活振り返り日記-ニュージーランド前編-#22

パブロバ

 ある日珍しくジェーンがお菓子作りをしていた。頭が痛くなるほどめっちゃくちゃ甘いお菓子らしい。その名はパブロバ(Pavlova)。これはニュージーランドでは国民的なお菓子のようで、ジェーンはレシピの書かれた古いノートを見ながら作っている。お母さんから教わったこの家の味。普段甘いものを食べない、むしろ甘いものが嫌いなグレンもパブロバだけは食べると言っていた。
 夕食前、パブロバが出来上がった。お皿いっぱいに盛り付けられたパブロバはメレンゲの焼き菓子でカリカリしていた。ジェーンは甘いから気をつけてね、と告げると皆一斉に皿にとる。
 そんな危険な甘さなのかと少し警戒しながら小さな欠片を皿に乗せ、いつものソファーでテレビを見ながらみんなで食べた。グレンが頭を叩きながら「頭がー!歯がー!」と言い顔を真赤にしながら食べている。しかしその手は止まらずサクサクと食べ続けている。「痛いー。これがいいんだ!」と言いながら食べている。よく涙を流しながら大量のワサビを付ける人がいるがそれと似た感覚か?
 どんなに美味いものかと思って食べたがまさに砂糖の塊というか極甘メレンゲというか、特別想像を超えるような味では無かったが確かにこの甘さは歯がやられる。お代わりを勧められ断るのは悪いと思ったがこの時は素直に十分ですと断った。
 こんなに甘いパブロバが好きな家族。しかし私の持ってきた日本の手土産は最後まで減らなかった。
 きっとこの時お互い何でこんなにおいしい物を食べないんだろうと同じ疑問を持っていただろう。


4人の留学生

 私がホームステイをしていた家は常に2人の留学生を同時に受け入れていたのだが、大体短い人で2週間、長くて3ヶ月位ホームステイをしている様だ。私はなんだかんだで6ヶ月も世話になっていたので、その間4人もの留学生を見送り最後は私1人となった。
 初めに会った留学生は以前にも書いたスイス人の女の子。その子が去るとその1週間後くらいに50歳くらいのスイス人の女性が2週間ほど滞在していた。この時もまだ上手くコミュニケーションが取れないのとシャイなのとでそれほど仲良くなれなかった。
 次に年下、でも同世代位の韓国人の女の子が来た。英語は私の一つ上のレベルのクラスでお互い話しやすかったと思う。初対面の頃から仲良くなって夕ご飯の時は同じソファーに座りよく話をした。その子は2、3ヶ月滞在予定だった。しかし一週間して、やっぱりここには住めないからアパートに引っ越すと言い出した。友達とシェアして借りるのだと。ホームステイも合う合わないがあるが、せっかく仲良くなれそうだったのにと少し寂しかったが、あっけなく去っていった。
 その子と入れ替わるかのように同じ日に新たな留学生が到着した。今度は年上のブラジル人の青年でクラスはアドバンスレベル。スーツケースを二つも持って、部屋には何足もの靴が並べられてあるのがドアの隙間から見えた。スーツケースの二つ持ちはこれまで思いもつかなかったのでセレブか?と思ったがこうゆうのもありなのかと学んだ。この人は毎朝スマホを腕に着けてランニングしていた爽やかでストイックな青年だった。しかし英語のレベルの差があり過ぎてやはり会話にならなず仲良くなれなかった。


プール

 ホームステイの裏庭に立派なプールがある。なんとこのプール、グレンとジェーンが2人で作ったという。工事中の作業写真を見せてくれた。穴を掘ってレンガを敷いてセメントを流し込んで…と本格的なDIY。いや、DIY…Do it yourself なわけだけど、私の想像する日曜大工とか趣味のレベルではない。本格的な大工の仕事だと思うがニュージーランド人はプールまで自分たちで作るのかと驚いた。でも考えてみたらグレンは船を作っている人なのだからこうゆう大工的な事はお手の物なのかもしれない。
 暖かくなってきたある日、唐突に、プールがあるからいつでも入って良いよとジェーンに言われた。自分から聞くのは恥ずかしいくて聞けなかったので、待ってました!と言わんばかりに目を輝かせて「Really?」とだけ言った。
 翌日学校から帰るとグレンがいた。プールを使っても良いか聞いてから早速泳いだ。10人くらい余裕で遊べそうな位広いプールを1人で満喫。何往復か泳いで青い空を見ながら浮いていた。
 満足したのでプールを出るとその当時のハウスメイトのブラジル人青年が帰ってきて、私が泳いだ後その青年も泳いでいた。ハンモックなんかもぶら下がり、なんて素敵な家なんだとしみじみ思った。


洗濯物

 ふと洗濯物について思い出した。ニュージーランドの家庭では庭に大きなパラソル型の様な物干し竿が刺さっている。そこに洗濯物を干すのだが、ニュージーランドは晴れたり雨が降ったり一日中忙しい天気なので、雨の前に取り込むのが大変だなと思っていたが、雨に濡れたら乾くまでそのまま乾かしていると誰かが言っていた。一生乾かないじゃん!と突っ込みたくなるがあまり気にしていないようだった。因みに私のホームステイの家では乾燥機で乾かしてくれていたので雨に濡れる事はなかったが、ちゃんと外にも物干し竿場があった。あれはいつ使うのだろうと思ったがたまに使っているみたいだった。

つづく

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?