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イソップ寓話の狐と遭遇 マルマラ海沿い街道の旅★2019(12)

田舎暮らしは退屈でもあります。

街(チャナッカレ)にでかけようかと、友人Mに託された、日本の感覚でいけば超・古い車のエンジンをかけるが、おっと、エンストの連続。
ここトルコはフランスと同じく、大多数の人がマニュアル車を運転しており、わが友Mも、
「オートマなんてクルマじゃないだろう」
と冷たく言う。
一方の私はといえば、人生のほとんどをオートマしか運転していない。
向上心のある人ならば、ここでマニュアル車を練習しただろうが、何度かのエンストを経て、くわばらくわばら、と早々に放棄した。
ということで、昼食はまたも、徒歩で同じレストランへ。

途中、向こうからひとりの男が、手押し車に大きな動物の死体を載せてやってくる。
それは大型の犬のようでもある。傷があり、どうやら罠か何かで殺されたようだ。

手押し車に載せられた謎の動物(たぶんキツネ)

トルコ語で何か説明するが、よくわからない。
犬か? の英語は通じたが、違うようだ。
薄茶色で、顔つきはなんとなくカンガルーっぽいが、全体のバランスはイヌ科の動物に見える。もし野良犬だとしたら、こんな大きなのがうろうろしていたらかなり怖い。
後でこの写真を友人Mに見せたら、しっぽがふさふさしているので狐だという。しかし、彼もこんな大きなキツネは見たことがない、と言っていた。
「隣家の鶏を狙っているのはこのクラスの奴だろう」

寓話で知られるイソップは隣のギリシアの奴隷であり、彼の物語には頻繁にキツネが登場する。

研究職として就職した時、実習についた先輩が、
「企業の研究者はイソップと同じだ。頭がいい、と思われていても、しょせん奴隷なんだよ」
と言っていたことを、この狐を見て想い出した。

この日はレストランで、ラムで間違いないよな、と前回の学習から何度も念押しした上でラム肉のケバブ串の二本セットを頼む。
二本セットは28 TL、水は1.5 TL、ラム肉は非常に美味だった。前回の仇を討った気分。

串焼きラム。いわゆるシシカバブ。

全部で29.5Lだが、迅速、かつうまかったので、チップを5 TL加えて払う(この時のレートで合計700円)。

ここいらで、
「エーゲ海で泳ぐ」
という重要なミッションを達成した方が良さそうだ、と水着に着替えて海辺に出かける。

海岸には車で何組かの家族が泳ぎに来ていた

10分ほど歩いて丘を下り、浅瀬で30分ほど泳いだ。
特に海水浴場と言うわけではなく、ガラス瓶やPETボトルが転がっている。マッスル貝の殻もたくさんあって足の裏を切る危険もあり、ビーチシューズをはいたまま泳がなきゃならない。
うーむ。「エーゲ海」の言葉が持つきらびやかなイメージとはだいぶ違うね。

海水を舐めてみると、ほんの少し塩辛い程度の水である。これがボスポラス海峡まで行くと、ほとんど淡水だそうだ。

うーん。
この村にひとり住んで、書きモノしながらたまに泳いだりしているだけじゃ、退屈しそうだ。
人生にはやはり、いくらかの刺激が必要なのかもしれない。


次回は、街に魚料理を食べに行きます。

寓話も書いています。よろしければ……

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