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入社面接における《いかがわしさ》の意味 (試験の時間)

学生時代、ある企業の見学兼面接に出かけた時の話です。
夏休みに2週間の《遅いハネムーン》に出かけ(↓)、戻ってきたらほとんどの同級生が既に内定をもらっており、少しあせっていました。

国立研究所の事前面接に出かけ、《天の声》を聴いて断念した話は既に書きました。

そこで、進路を技術系企業へと変え、3か所に見学に出かけました。
そのうち1社でのエピソードです。

社内見学を終えた後、役員面接(それほど大きな会社ではなかった)に臨みました。
人事担当者に案内された会議室に、技術担当役員と総務部長がやってきました。
進行役らしい総務部長が、履歴書と教授(下記↓エッセイに登場する先生)の推薦書を見ながら尋ねた中に、次のような質問がありました。
「研究室の先生の所見に、『文章を書くのが得意』とありますが、これはどういう意味ですか?」

「えーと、たぶん、私が趣味で小説を書いていて、自費出版をしたことがあるので、そのことだと思います」
小説を書くのは、ギターを弾く、たこ焼きをつくる、逆立ちをする、へそで茶を沸かす、などと同じ程度の余興だと思っていた私がそう答えると、総務部長の顔が突如、強張りました。
「小説を書くってキミ、それは、── いかがわしい内容なんじゃないだろうね?
この意外な反応に驚きながらも、私は答えました。
「あ、いえ、かなり、── いかがわしいです」
「なにい?」
50代後半と思しき総務部長は立ち上がり、隣の役員を気にしつつも、声を荒げました。
「それはキミ、どういう意味だ? 左がかった小説なのか?」
驚いたのはこっちである。もう1980年代に入り、いわゆる学生運動は下火になっていました。
「いえ、そういうことではなく、そのう ──《性的な描写がかなり入っている小説》── という意味ですが……」
これもまずいかな、と思いながら正直に言うと、総務部長サンは、
「なんだ、そんなことなら問題ない」
と腰をおろした。心の底から安堵した様子でした。

その後、研究の話などはほとんど質問されることなく、私が《既婚者》となったいきさつ、つまり妻とどのようにして知り合い、どのようにして結婚に至ったかを細部に渡り尋ねられました。

《いかがわしい》
── どうやら使う人聞く人によって、かなり意味が異なるらしい ── その面接でひとつ、学びました。


➀ 自費出版本の ➁ いかがわしさ に関連する記事は:

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