見出し画像

高野洸 "mile" 追加公演で見たもの

去る2024年1月8日、東京ドームシティホールにて「高野洸 5th Anniversary Live Tour "mile" 〜1st mile〜」追加公演を拝見してきた。

今回はその感想を記していきたい。



本公演ともちがう景色

追加公演も、基本的には本公演と同じセットリストだった。

1. zOne
2. ASAP
3 .tiny lady
4. In the shade
5. SECRET
6. Vibe like lover
7. Stay with me
8. モノクロページ
9. 渇いたkiss
 (カバー、原曲:Mr.Children)
10. You'll Be In My Heart
 (カバー、原曲:フィル・コリンズ)
11. ex-Doll
 (追加公演で初披露)
12. COLOR CLAPS
13. Life is once
14. Our Happiness
15. Memory of Sunset

- アンコール -
16. Can’t Keep it Cool
17. TOO GOOD
18. WARNING
19. New Direction
 (追加公演のみ)
20. Way-Oh!!

- ダブルアンコール -
21. ASAP

しかし、そこにわたしが見た景色は、先の仙台公演で見たものとはまた少しちがっていた。

仙台公演からの2ヶ月の間に、個人的にたくさんのことがあり、少しずつ自分自身も環境も、楽曲と紐づいた思い出や感情も変わったからだと思っている。

それが何ともいえず胸にくるものがあった。


アリーナ席から見るステージ

仙台公演では、2階席の最後方の座席だった。

人影がステージの半分に重なっていて、距離的にも角度的にも「見えないもの」が多かった。

だからこそ、視覚以上に努めて「見ようとしたもの」が多かったように思う。

仙台の感想の記事を読み返すと、空想傾向が強く、楽曲の景色やその主人公の「印象」の話がほとんどだったのはそのためだ。


だが今回の追加公演は、運よくアリーナ席で拝見することができた。

なんとまあ肉眼で見えるものの、多いこと、多いこと。

少し顔を上げれば、客席のペンライトやそれぞれの表情まで見える、二度おいしい席だった。

わたしはステージを見るのも好きだが、客席のしあわせそうな表情や空気も好きだ。


今回は放っておいても目で「見えるもの」が多い分、自分が努めて情報を拾いにいく必要もなく、いい意味で「無理に見ようとせずに」肩の力を抜いて音楽を浴びることができた。

でも不思議なもので、そうして何も身がまえずにいると、脳内に勝手に浮かんだり思い出されたりするものがグンと増えるのだ。

きっと余計な力が抜けて、余白ができるからだろう。


セットリストは本公演とほぼ同じとはいえ、この追加公演でわたしが出会ったのは、楽曲の主人公たちだけでなく、わたしの家族・友人・想い人・仲間たちだった。

約2時間の公演の間、たくさんの人の顔が浮かんで、彼女・彼らとのあくまで個人的な思い出たちが脳内をたゆたった。

それくらい、仙台公演当時にも増して、高野洸の音楽がわたしの日常の一部になっているということの表れだった。


そんなわけで、2回目だからなのか座席位置のためなのか、仙台公演と追加公演ではまったく景色がちがった。

そこに時間の経過と、自分の変化が感じられて、胸にグッとくるものがあった。

ほんの数ヶ月でも、着実に歩みを進めてこれたのだと実感できた。

目に見えるもの、
目には見えないもの、
見ようと努めて見えるもの、
何かを見ようとして見落とすもの、
勝手に脳内に見えてくるもの……。

きっとタイミングやコンディションで、受け取り方も見える景色も全くちがうだろう。

だから、仙台のときも今回も、その時その瞬間にしか見えないもの・感じ取れないものばかりを味わうことができた。

各公演で「見た」景色は、それぞれに唯一無二で、わたしだけの宝物だ。


配信でも味わえる贅沢

この公演、スカパー!でのライブ中継・見逃し配信があった。

見逃し配信でも、ひと通り同公演を見た。

細部が見えて、自分のペースで繰り返し味わえて、それにはそれの良さがある。

だが中継があるとしても、高野洸の楽曲のバンドによる生演奏を、この身をもってもう一度体感しておきたかったのも事実だ。

だから現地で、内蔵を揺らすような重低音、鼓膜をくすぐるようなギターやピアノの音色、骨の髄まで響くような音圧、そしてまっすぐに届いてくる歌声と、音を可視化してくれるような彼らのダンスを体感できたことを、うれしく思う。

あとから配信で見返してみると、現地で感じた感覚や浮かんだ景色や心模様をなんとなくは思い出せるのだが、やっぱりその瞬間に生まれては消えていったものを完全に再現はできない。

だからこそ、もう取り戻せないいつかの刹那に永遠を感じるし、その残り香がやたらといとおしく感じるのだった。

それを感じさせる配信は配信で、その「遠さ」がもたらす一抹の寂しさがアクセントとなるような、なかなかに味わい深いものがあった。


追加公演だけの披露曲

ここでは、追加公演のみで披露された2曲を振り返っていきたい。

"ex-Doll" の片鱗

追加公演では、発売前の新曲 "ex-Doll" が初披露された。

まだ音源で聴いていないし、バンドアレンジで聴ける機会はまたと無いかもしれないのでこれが全てではないのは前提とした上で、少しだけ感想を記しておきたい。

わたしはこういう曲調が大好きだ。

生音が似合うミディアムなテンポで艶っぽく、どこか意思の強さをはらんでいる一方で、そのメロディーはどことなく切ない。

わたしはあれから、あの何とも言えない切なさが胸に残っている。

音源がリリースされたら、ゆっくり答え合わせをしてみよう。

というのも、多くを語らない高野洸の雰囲気を見るに、まだほんの一部しか目撃できていないと、そう感じたのだ。

だからリリース日の1/30まで、もう少し待ってみよう。

音源でじっくり聴くのがさらに楽しみだ。


"New Direction" に流れた涙

現地にうかがえた仙台公演も、追加公演も、わたしは終始とにかく楽しかった。

ステージを眺める時、何なら感動して天を仰ぐ時でさえ、ほぼ笑顔だったように思う。

しかし追加公演のアンコールで追加された "New Direction" だけはちがった。

どうしようもなく涙が止まらなかったのである。

その理由が、まだ自分でもよく分かっていない。


先日の、2nd Live Tour "AT CITY" の感想にこう書いた。

そもそもだが、1曲目の "New Direction" の冒頭でこう歌われている。
「俯いたまま どうするんだい?
 自問自答Closing my eyes
 情報過多 飲まれた連中は
 明日を憂いてばかり
 僕らこのままでいいのかい?
 そんな事ないだろう」
この問い・悩み・迷いを、公演全体で払拭していくような、「未来の方へ 踏み出すんだ」と背中を押してくれるような、そんな公演だったように思う。

昨年末にDVDで見た "AT CITY" の映像を思い出して感動したのかもしれない。

DVDを見ながら、
「この曲、生で聴きたいな」
と何度思ったことか。

でもそれは、公演がすでに終わっている今となっては叶うわけもなく、心のどこかに寂しさが、つまり「飢え」があったのかもしれない。

だから、この "New Direction" を生で聞けたのがこの上なくうれしかったのだと思う。

どこまでも「過去」だった曲が、今まさに、今聴いてほしい曲として、目の前で披露されている。
その感動たるや。

渇きをうるおしたくて過去のアーカイブばかりを眺めていたわたしの視線を、やっと今に戻すことができた、そんな瞬間だった。


それから、"New Direction" を聴いて、わたしの2023年の終わりを実感したのも涙の理由のひとつだ。

未来の方へ 踏み出すんだ
思いのまま進め
The new direction

高野洸 - New Direction

別れと出会いとで激動の2023年。

その終盤を高野洸の音楽とともに過ごしたわけだが、"New Direction" を聴いてその激動がやっと「終わった」とふと実感できたのだった。

なぜか曲中、昨年のあれこれが走馬灯のように脳内を駆けめぐり、あの頃の奮闘していたわたしがだんだんと前を向き始めるような感覚があった。

なんとなく終わり、なんとなく始まる間もなく世の中の錯綜する情報にばかり気を取られていたが、これでやっと、激動の2023年が終わったのだと、もう安心して前に進んでいいのだと、そう思えた。

その安堵感とも達成感とも名残惜しさとも何とも言い表せられない気持ちが、涙となってあふれた、そんな感じであった。


さいごに

「前を向く」ための時間

追加公演は、高野洸がくり返し口にした「前を向く」という言葉が印象に残っている。

先の "mile" 仙台公演、そしてこの追加公演、いずれも結果的にわたしにとって「前を向く」ための大事な時間となった。

わたし個人としては、「チャレンジと調整」の年になりそうな今年。

手放したくないものを離さないでいるためにも、そしてたゆまず挑戦しつづけるためにも、きっとどこかで今抱えている何かを手放すことになるだろう。

だからこそ、わたしに必要な合言葉もまた、「前を向く」なのかもしれない。

高野洸の目に何が映っているのかは分からないし、戦うフィールドも何もかも交わることはないけれど、でもやっぱり同じ時代・同じ時間を生きている同じ人間という点で、こういうふとした言葉にものすごく元気をもらうのだった。

「前を向きつづける」

その言葉を胸に、わたしもまた自分の日々を頑張ろうと思えた公演だった。


"go the extra mile"

高野洸のライブツアー "mile" を追いかけるに当たって、いろんなところで "mile" を使った表現が目に入るようになった。

たとえば、
"8 Mile"
"One more mile"
"55 million miles away"
などだ。

その中のひとつに、個人的にこの追加公演にぴったりな表現に出会ったので、書き記しておきたい。

"go the extra mile" だ。

これは英語のイディオムで、
「全力を尽くす」
「一層の努力をする」
「もうひと頑張りする」
という意味だ。

mileツアーの "追加" 公演にあたって、"extra" という単語のあるこの表現がなんとなくずっと頭にあった。

そこに「前を向く」という言葉を受け取って、わたしとしては今まさに、
「もうひと頑張りするぞ」
という活力が湧いている。

これはただの蛇足だけれど。


ひとつの区切り

新年早々に晴れやかなツアー最終日を見届けた今、わたしの毎日にひとつの栞がはさまれた、やっと大晦日にして元旦を迎えた、ひとつの季節が終わりまた新しい季節を迎えた、そんな感触がある。

何かが終わるということは、
何かが始まるということだ。

さあさあ、
また新しい日々を、頑張ってみようではないか。

この数ヶ月の間に高野洸の音楽と見た景色たちを胸に、前を向いて歩みつづけていこう。


というわけで、
たくさんの感動と思い出を、
ありがとう、高野洸ーッ!
これからも応援してるぞー!!
(東京方面に一礼)


"mile" 追加公演SNSまとめ


高野洸さんの記事はこちらにまとめてあります。


この記事が参加している募集

最近の学び

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?