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新型コロナで ”キャッシュ” が無くなった飲食店が作る野菜の ”キッシュ” の話

自己紹介

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※2021年1月9日追記
緊急事態宣言の再発令を受けて医療支援プロジェクトを再開致します。
どうかお力添えの程よろしくお願い致します。

PJページ
https://bistroplein.official.ec/items/38329281

株式会社PLEIN代表の中尾と申します。
1992年1月30日生 28歳です。
※写真右 左は弊社料理長金子シェフ(料理人一筋20年 料理人チームのリーダーとして愛情込めて美味しいキッシュを作ってくれています。)

食の仕事を生業としておりまして、
東京の表参道と麻布十番でレストランBistro plein 、代々木上原で michiruの経営などをしております。

株式会社PLEIN WEB

過去のnote 【25歳で貯金500万使って借金して表参道にレストランを作った話

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麻布 テーブル

plein 内観


新型コロナウイルスの禍中で生まれた幸せのキッシュの話

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このnoteでは新型コロナウイルスの禍中で生まれた幸せのキッシュの話を書かせて頂きます。

結論から申し上げると、
農家さんから届く野菜をたっぷり使ったキッシュを
緊急事態宣言の渦中の1ヶ月半の間で約2000台皆さまにお求め頂きました。

ピースではなく、ホールなので中小企業の我々にとっては結構な量です。

レストランを完全休業中の間に、
有機野菜の量だけでも約2t(2000㎏)廃棄の危機に
あった野菜を使わせて頂きました。

※追記 2020年10月時点で
累計販売台数 6000台を越えました。本当にありがとうございます。


取引業者様や、収束に向けて最前線で働く医療の皆さまにささやかな幸せをお届けする事も出来ました。

皆様へのご報告・感謝の気持ちを込めてキッシュのお話を以下の3つの順番でできればと思います。


誰かの何かになれば嬉しいです^^

1. 意思決定  ~新型コロナウイルスを誰と乗り切るか~

2. 農家さんと共に乗り越えるために 
~野菜の廃棄をしない~

3.医療現場の方々へ ~幸せの恩返し~



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1.意思決定 ~新型コロナウイルスを誰と乗り切るか~

世の中全体で甚大な被害を受けている新型コロナウイルス。
飲食店を運営している弊社も甚大な被害を受けました。


新型コロナウイルスの弊社の影響を時系列で表すと、

2月に麻布十番に結構な投資をして新店を開業しました。
始めは順調で、既存店共に連日満席を頂いておりました。
3月に入ってから新型コロナの影響で予約がどんどんキャンセルになり、
4月には予約時点で9割の売上減が予測される事態になりました。



正直、最初は目の前が真っ暗になりました。

新店開業の大きな投資の後にコロナショック。
多くは書きませんが心身共にかなり堪えました。

ただ有事の時こそ真価が問われると自身を奮い立たせ、
中小企業として限られた経営資源をどう使うかを決め、
選択と集中した事に最善を尽くす事に決めました。

覚悟を決めました。
そして

①お客様②従業員③取引業者のために出来る事をやる。

それ以外の事は一切やらない、と決めました

売上を最優先にせず、シンプルに上記の3者が幸せになる施策を考える事にしました


オンラインショップ

①お客様に対して

まず平時と変わらず、お客様の安全が何より第一と考え、緊急事態宣言前の4月9日から完全休業を決めました。(緊急事態宣言延長などの結果6月3日まで完全休業)

その間僕らの料理をご自宅で安心・安全に楽しんで頂ける様、
冷凍技術に長けた精肉工場様と業務提携を行い、

レストランの味を再現したオンラインショップを開設しました。
「簡単調理」「冷凍商品」「個包装」にこだわり、
好きな時に好きなタイミングでお召し上がり頂ける様にご用意しました。
結果こちらもたくさんの方にお求め頂き、とても助けられました。

Bistro plein ONLINESHOP

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②従業員に対して


平時から「外食産業を憧れる仕事にする。」をVisionに、3K産業と揶揄される飲食業界においては珍しい週休2日制・ディナー営業のみの営業体制を起業した時から行っています。

弊社は社員数10名の小さな会社ではありますが、
全員が元同僚や、その紹介のリファラル採用で入社してくれており、
若輩者の自分が日本有数の飲食店激戦区の表参道や、麻布十番、代々木上原で運営を出来ているのは間違いなく従業員一人一人の人魅力のお陰です。

なので3月の時点で全社員の平時の100%の給与を3ヶ月分保証しました。

現在も皆さまの支援と、従業員の頑張りので変わらず払う事が出来ています。
多くの事は出来ませんが、ただでさえ先行き不安な毎日で、せめて従業員が金銭的な不安がなく働ける環境を担保出来れば嬉しいと思っています。

小さい会社だからこそ出来る事だと思いますし、このあたりは会社状況に応じて色々な判断があると思うので周囲は関係無いと思っていて、
僕は僕の精一杯をやります。

公言すれば後々払えなくなった時も「やっぱ返して!」と弱い自分が言わない様に自戒も込めて話す様にしています(笑)


③取引業者様に対して


生産者様はじめ、取引業者様と僕達は一心同体だと考えています。

緊急事態宣言中も営業時間を限定して営業する事は出来る中で、
我々が独自の判断で完全休業を決断しました。

普段から我々のために最高の野菜を作って下さっている農家さんはじめ、
我々の休業で食材が廃棄してしまう事は絶対に避けたい。
という思いで、

休業判断と同時に取引業者様の平時で使用予定であった野菜などは全て買い取らせて頂きました。

勿論有事の事態なので農家さんも気を遣わなくて良いと仰せでしたが、
作り手として素晴らしい素材がただただ無駄になる事は避けたいという思いで買い取らせて頂きました。


2. 農家さんと共に乗り越えるために ~野菜を棄てない~

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Bistro plein のお野菜は、弊社料理長が10年以上親交のある神奈川県秦野町の農家さん小泉農園様を中心に、全国の農家さまから野菜を頂いています。
肉も魚も含めて「美味しい根拠がある素材」をテーマに生産者様の顔が見える素材を使う事を平時から心がけています。


上述しましたが、大切な農家さんの野菜を、
結果緊急事態宣言中も2t(約2000kg)の量の野菜を棄てずにキッシュとして召し上がって頂き、目標通りレストランが休業中でも廃棄せず、平時と同じ取引量を使わせて頂く事が出来ました。

なぜキッシュを作る事にしたのかのお話をします。

コロナ禍で気づけたキッシュの凄さ

新型コロナウイルスの脅威に対して、
1.お客様 2.従業員 3.生産者様
の幸せを考えた時に、
「3方良し」になるのがキッシュを作り、販売する事でした。

平時からキッシュはお客様にご提供していましたが、
コロナのお陰でその魅力に再度気が付く事が出来ました。

キッシュは朝食にも昼食にも夕食の前菜にもおやつにもなるという汎用性を持ち合わせており、老若男女問わずお召し上がり頂ける料理です。

また生地を作る、玉ねぎを飴色に炒める、野菜を茹でる、均一に焼き上げるなどシンプルですが手間がかかり様々な技術を必要とする奥深い料理なので、弊社のフレンチビストロとしての強みを活かせます。

野菜もたっぷり使える事は勿論、
他の取引業者様から仕入れる肉や、乳製品など他の廃棄の危機にある材料も大量に使うことができますし、
衛生面を考慮して冷凍状態で販売しても品質が落ちにくいなど数多くのメリットがあります。

お客様も喜び、従業員の強みを活かせ、生産者様の素材も大量に使えるキッシュをたくさん作る事は、3方良しに最適な料理でした。

SNSを通じて緊急事態宣言中に約2000個のキッシュを販売出来、

ご自宅でささやかな食の幸せをお客様にお届けできた事。
農家様、取引業者様の素材を大量に使えた事。
レストラン休業中の僕達の有難い売上になり、
それが従業員に給料として頑張りの対価を支払えたこと。

様々な幸せにつながった事は大きな喜びでした。

3.医療現場の方々へ ~幸せの恩返し~


料理人

きっかけは一本の電話

レストランの休業も1ヶ月経った頃
キッシュの販売や、オンラインショップの販売などの売上のお陰で何とか従業員に給与を保証しながらも、倒産せずに乗り切れそうな兆しが出てきました。
予測を越える反響がとても有難かったです。

そんな中、
聖マリアンナ医科大学病院の名医であり、Bistro plein をご愛顧頂いている田嶋さんから1本のお電話がありました。

「新型コロナウイルス収束に向けて最前線で働く医療の現場の仲間に何か出来ないか。」

その田嶋さんのお電話で、ニュース・報道よりも過酷な状態で新型コロナウイルスの収束に向けて最前線で働く医療の現場の皆さまの現状を聞きました。

連日の報道で医療現場の皆さまが大変な状況で働いているのは知っていましたが、
大変そう...と思いながらも正直当事者意識は乏しく、お電話のお陰で何か役に立ちたいと自分事で考えるきっかけになりました。

田嶋さんのお電話の後、
ひっそりとキッシュを20ホール程送りました。

最初は差し入れの様な形で少しでも足しになれば...くらいの想いで送ったのですが、医療の現場の皆さまの反応は予想と大きく異なりました。

なんと僕達のキッシュを食べた医療現場の皆さまが涙を流して喜んでくれたというのです。

衝撃的な出来事でした。

お忙しい中、田嶋さんが丁寧にお電話、SNSで皆様が喜んでいる姿を教えて下さいました。院長様からもお手紙を頂きました。

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聖マリアンナ様  田嶋様 Facebook投稿



僕達が作った食べ物を食べて泣いて喜んでくれている人がいる嬉しさの反面、
泣くほど緊迫した状態で収束に向け尽力して下さる皆様にもっと何かしたい。と強く思いました。


やるべき事は食を通じて幸せを創る事


もっと何かしたい。と思った反面、
僕達も経済的に厳しい状態に置かれている事は事実でした。

2ヵ月に渡りレストランを休業を決断し。
その間も全従業員の100%の給与を支払う事が最優先事項でしたので、
支援をするからという理由で僕達が経済的に困窮する選択は出来ません。
関わる全ての人が食を通じて幸せになる本質的な活動をしたいと考えました。


美味しいをシェアする。医療現場の方とキッシュを分け合うプロジェクト

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美味しい!をシェアする形で
一人のお客様に特別価格【1700円】の有機野菜のキッシュを2個お求め頂き
1個は収束に向け最前線で働く医療現場の皆様へ
1個は支援頂いた皆様へお届け
する企画をやらせて頂きました。

結果として同じものをお客様に2個お求め頂くという不躾なお願いにも関わらず、

実施1日で244個のキッシュを支援頂きました。

ご自宅用は不要で、
寄付のみ希望の方もいらっしゃり

146個のホールキッシュ
を医療の最前線で働く皆様へ贈らせて頂く事が出来、

医療機関の皆様がすぐに食べられる様8カットにして贈りするので、

キッシュ 80ピース ずつ
毎週1回 80名の方の束の間の休息のため、
5月から約3ヶ月半の間贈り続ける事の出来る支援を頂き、
現在も毎週贈り続けています。

ご支援頂いた方々本当にありがとうございます。

【2個お求め頂いた事で皆が救われました】

1個ずつ医療現場の方々と皆様で美味しいをシェアして頂く形。
不躾なお願いながら、2個お求め頂く事で皆がハッピーになれました。

まずシェアする事で「美味しさ」が深くなるんじゃないかと。
誰かと分け合って食べるご飯は幸せです。

全部医療の現場へ全て支援する形も、
シェアする形も両方素敵だと思うので、幸せの形を選べる事も大事だと思いました。

そして2個以上お求め頂けた事で贈る僕たちも気持ち的にも、
金銭的にも幸せになりました。

これが特別価格で値段を下げ、医療現場の方の分だけ一個支援して頂いて、送料を弊社が負担する形だと我々がマイナスになってしまうのです。

理由としては、
普段よりもお求めやすい値段でキッシュを作り、忙しい医療の皆さまがすぐ召し上がって頂くためにカットにして、崩れやすくなったキッシュが壊れない様梱包など支援には普段レストランとしてお届けするのとは違うコストがかかります。
逆に上記を怠ってしまうと医療の現場の皆さまに手間をとらせてしまい、ありがた迷惑になります。

さらに僕達が医療現場の方のクール便の送料を負担して送ると経済的にマイナスです。
小さな会社で出来るリソースは限られてますし、送れば送る程、僕達は苦しくなります。
きっと医療の現場の方々もそれは望んでいません。

2個のキッシュをお買上げ頂けたお陰で、粗利額が倍になり、お代から原材料、人件費、包材、税金、サイト手数料その他諸々を引いた額を医療現場の方へ送料に充てる事ができます。

医療の方々へ皆様からキッシュを一個を支援。
我々からはキッシュの値段を割引し、贈る作業と送料を支援。分担して支援出来る形になり、我々も儲けはなくても、損はしません。

関わる人が金銭的な得はしなくても、損はしない事。
ここが支援では大事だと思っています。


もしかしたら一個の支援を募る方が支援ハードルは下がるので数自体はもっとたくさん送れたかもしれません。

ただ新型コロナウイルスとの闘いはまだまだ続きます。
なので支援活動も色々な形で継続的に続けていかなくてはいけないと思っており、金銭的なマイナスが生じるものは僕たちには続けられません。


犠牲の上に成り立つ支援は出来ない。

けど行動もしたい。大切なのは行動する事。

だからちょっとだけ+αの出来る事を背伸びして頑張ってみる。
くらいが良いという考えで動きました。
今回大きな事は出来ていませんが、皆様のお力を借りて目標達成出来た事が本当に嬉しいです。

普段やらない事をちょっと背伸びして動けました。

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大切な事は続けていく事


緊急事態宣言が終わっても、
医療の現場の皆さまの収束に向けての戦いはまだまだ続きます。
僕達の新型コロナウイルスとの闘いもまだまだ続きます。
まだまだ外で平時の様にお食事を楽しめるには時間がかかりそうです。

一つ一つ手作りで作っているため、
品質担保のため一度販売を止めさせて頂いておりましたが、再度支援を募らせて頂きます。

→2020年7月1日追記 (9月まで支援出来る量をお預かりしたのでまた一度締め切らせて頂きます。)



最後に

plein ロゴ

緊急事態宣言が明けても、正直平時の売上には程遠い現状があります。

ただ2ヵ月間休業していたので、営業出来る事がただただ嬉しいです。
来て頂けるお客様に感謝し、今出来る事を精一杯やっていきたいと思います。

社名と店名のplein (プラン)はフランス語の”形容詞”で

”~が溢れる”  ”~が満たされる” ” ~がいっぱい”

という意味があります。
名詞ではなく、形容詞なので plein (プラン)という言葉だけでは意味が成立しません。

お客様、従業員、生産者様、
様々な”主語”と交わりながら続いていく場所でありたいと考えています。

食を通じて幸せを創る。
シンプルに一歩一歩やっていきます。 

”キャッシュ”がない飲食店の”キッシュ”の話にお付き合い頂きましてありがとうございます。

アフターコロナのお話は大変有難い事にYahoo!ニュース様などでも取材頂いておりますのでよろしければご覧くださいませ。

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Yahoo!ニュース


たくさんの皆さまに助けて頂き毎日を過ごす事が出来ています。
本当にありがとうございます。
Bistro plein のご予約も心待ちにしております。

Bistro plein 

読んで頂きありがとうございます。
感想・シェアなど励みになります。

まだまだ先行き不安な毎日が続きますが、皆様くれぐれもご自愛下さいませ。

株式会社PLEINのWEB

Bistro plein 
店主
中尾 太一




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