子どもはなぜ思いのほか頑固なのか
1971年、スポ根アニメの金字塔「巨人の星」の星飛雄馬
からバトンを引き継いだのは同じく日本を代表するギャグ
マンガ「天才バカボン」のパパだった。
そのギャグアニメのオープニングソングは
西から昇った おひさまが 東へ沈む 「あっ・たいへん!」
これでいいのだ これでいいのだ
ボンボン バカボン バカボンボン
天才一家だ バカボンボン
(歌詞:東京ムービー企画)
という、これまた日本全国の善良な小学生を混乱の渦に陥
れるものだった。当社の調べによると、土曜日夜にこの
歌詞を聞いてしまったがため、翌週月曜日の理科の点数
は記録的に悪かったそうだ。
という前置きはさておき、実は子供たちはバカボンの歌を
聴かなくても(全国の保護者の方、ご安心ください!)
太陽が東へ沈む(かも)という考えをもつことがあるの
です。
大人(知っている人)の視点からは一見変に思えるような
理論を子供はかたくなに持っていたりしませんか?
そうなんです、実は、子どもたちは普段から身の回りを観
察し、自分なりの考えを作り上げていることが分かってい
ます。これを認知科学の世界では「素朴理論」(naive
beliefs)と呼んでいます。
月の形はなぜかわるのか?
質問: 月の形が毎日変わるのはどうしてですか?
(1)いろいろな形の月があるから
(2)月が地球のかげに入るから
(3)地球から見て、太陽と月の位置関係が変わるから
(4)わからない
このような一連の天文に関するアンケートが今から20年
ほど前に全国の小学生4-6年生を対象に実施されました。
この結果を当時の天文学会で発表され、「理科教育崩壊」
というこれまたPVをガツンと稼げそうなタイトルで話題
を呼びました。事実、この学会の後に文科省まで声明を出
すほど話題となったのです・・・覚えていますか?
詳しいデータは省きますが、例えば上の「月の満ち欠け」
について学校で習っていない小学生4年生の成績は特に悪
かったそうです。
蛇足ですが、
天動説復活(か)?<東スポ風>
の結果もあります。
実は子どもだけでは・・
実は、小さい子どもだけに限ったことではないのです。
例えば、今となっては古典となってしまいましたが、今か
ら40年ほど前にこの素朴理論について実験をしたマック
クロスキー教授(まっ黒くろすけではなく)の実験をご紹
介します。
いろいろな実験をしているのですが、特に物理の教科書な
どで活用されるのがこちら。ボールがころころと動き、崖
から落ちるときどのような軌道をたどるのかというもので
す。
大学生を対象にした実験だったのですが、なんと高校で物
理を履修した大学生でさえ間違った力学の理解をしていたよ
うです。答えは左です。私は結構怪しかったですが、正解
しました(汗)。
人は誰でも知らないことが多くあります。
そして実験でも明らかなように、誰でも
<自分なりの理論> すなわち <思い込み>
を持っているのです。
間違った知識は恥ずかしいことではない
子どもや大学生を対象にした素朴理論の実験は数多く行わ
れ、今となっては
素朴理論を上手く活用した探究
が効果的な教え方であるという報告もなされています。
間違った考えを持つのは恥ずかしいことではありません。
むしろ、学びのチャンスなのです。
教える人は、やさしく間違いを指摘してあげてください。
その「指摘」が後の学びの土台となるのです。
子どもだけでなく、私たち大人も小さな科学者なのです。
—学びヒント
☆たくさん失敗しよう
☆「なぜ」と質問しよう
—参考
McCloskey, M. (1983). Naive theories of motion.
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