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見慣れた広告やロゴから知る 「課題解決」の手法とは? / 佐藤可士和展 (国立新美術館)

ユニクロのロゴ、楽天のロゴ&お買い物パンダ、それからセブンイレブンのプライベートブランドのパッケージ… そんな毎日のように目にするデザインを手がける佐藤可士和氏の活動を振り返る展覧会「佐藤可士和展」が国立新美術館でスタートしました。

佐藤可士和展

どこを見ても写真を撮りたくなってしまうほどのエンターテイメント性を楽しみつつも、そこから見えてくる彼の「課題解決」の手法とは? この記事では、書籍「世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略(佐藤 可士和  著)」を初めとした彼の書籍の記述と合わせながら展覧会をご紹介します。

1) 広告からトータルディレクションへ:これまでの活動が一望できる展覧会。

会場でまず目を引くのは、誰もがきっと目にしたことのあるような広告やパッケージデザイン。「ADVERTISING AND BEYOND」のセクションでは、おそらく誰もが一度は目にしたことのある広告たちが並びます。

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「広告」といっても、ユニクロのロゴからUT、ショッピングバッグまで。それから、SMAPのアルバムのパッケージデザインからコンサートグッズ、ポスター、そして街そのものをジャックするような広告戦略と、1つの商品(ブランド)から広がる展開に驚かされます。

その仕事は一般的にイメージする「デザイン」という枠組みに収まらず「統括的なブランディング」と佐藤氏は著書の中で述べていますが、これらの展示を見ると、その「ブランディング」という考え方が腑に落ちます。

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携帯電話やインターネットといったメディアが変化しコミュニケーションが変化する中で、デザインの現場は時代の変化に敏感に反応しておらず、パッケージデザインはパッケージデザイナー、プロダクトデザインはプロダクトデザイナーと職域が細分化されていたといいます。

”その課題に気付いた僕は、自分の仕事に統括的なデザインの視点を確信犯的に持ち込むようにしました。”
(「世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略」より)

その統括的な解決方法の事例を、知らず知らずのうちに自分たちも広告や商品を通じていくつも体感してきたことに気づかされます。

2) 会場自体が巨大な広告? :思わずシェアしたくなるユニークな展示方法。

続く展示室「THE LOGO」には、佐藤氏の手がけたロゴが並びます。こちらもまた、ユニクロ今治タオル、今回の会場の国立新美術館まで、こちらも、知らず知らずのうちに慣れ親しんだロゴが並びます。

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それらのロゴを巨大化させ、壁と床面にオブジェ作品のように配置。今治タオルのロゴはタオルに印刷されていたりと、そのイメージに合った質感や配置のされ方もなされていて、”企業のロゴ”にもかかわらず、思わず写真に収めたくなってしまいます。

今治タオル

タオル地にプリントされた今治タオルロゴ。右は拡大したもの。

セブンイレブンのプライベートブランドのパッケージが壁一面に並ぶ展示室も。こちらも見慣れた商品なのに、展示方法ひとつで思わず写真に撮ってシェアしたくなってしまいます。

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見慣れた多数のセブンイレブンの商品。すべて実物大です!

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学生時代はアートの活動も行いギャラリーでの展覧会なども行っていた佐藤氏。しかしながら、その際に「アートと世の中の人々との接点の少なさも、その時実感しました。」と、伝わらないことや作品自体が物理的に劣化してしまうことに疑問を感じ始めたと言います。

それが、「広告というメディアであれば人の脳にイメージというアート作品が残せる!」と気付き、広告の道を目指すことになったといいます。それが巡り巡って巨大な美術館で個展、というのも面白いですが、展覧会自体が美術館というメディアを使った巨大な広告にも見えてきます。

3)「クリエイティブディレクター」は「コミュニケーションドクター」?:デザインによる課題解決の手法を見る。

「統括的なデザインの視点」は、「ICONIC BRANDING PROJECTS」のコーナーで特に色濃く感じることができます。

例えば、実際に使うことでその良さを理解できる「今治タオル」のクオリティの高さを「規格」をつくることによって可視化していくブランディング。また、それまで「デザイン」という視点があまり持ち込まれてこなかった「教育」の分野にデザイン思考を持ち込んだ「ふじようちえん」。

「ふじようちえん」の例では、円形状のユニークな園舎は決して奇をてらったものではなく、徹底的にクライアントとの対話を行うなかで「園舎そのものが巨大な遊具」というコンセプトにたどり着いたといいます。

”「クリエイティブディレクター」は「コミュニケーションドクター」”

という持論をかねてより有していたという佐藤氏。対処療法的な処置をするのではなく、有能な医師のように 症状に対して前提から疑い、対話を重ね、「多様な視点が持てているか?」と問いつつ手を動かしながらの検証作業を重ね、トライ&エラーを繰り返す中で、独創的なソリューションにたどり着いているそうです。

・職域に縛られず 大きな視点で解決方法をさがすこと
・同じモノ(アイディア)も見せ方で面白さが変わること
・前提を疑い、実物を見て・話して・自分の手を動かすこと
「クリエイティブ」な職務でなくとも、こういった「視点」は仕事の中に取り入れていけそうですね。

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なお、展覧会の会場では、スマホから佐藤可士和氏ご本人による音声ガイドを聞くこともできます。こちらでは、各プロジェクトの思考の過程や裏話も。是非、イヤホンを持ってお出かけください。

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【展覧会情報】 佐藤可士和展

佐藤可士和展

会期:2021年2月3日(水) - 5月10日(月)
※ 事前予約制(日時指定券)、当日券有
休館日:毎週火曜日
※ ただし、2月23日(火・祝)、5月4日(火・祝)は開館、2月24日(水)は休館
開館時間:10:00 - 18:00
※ 入場は閉館の30分前まで
※ 開館時間は変更になる場合がございます
観覧料(税込):一 般 1,700円、大学生 1,200円、高校生 800円

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