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麻衣
2019年6月14日 05:21
あの人は、縁がない人。 そういうのって、わかる。直感で。そしてそれは大体当たってる。いつだってそうだった。 卒業式の日。わたしはあの人を見ていた。もう一生目にすることはないだろう、制服姿の細い背中を。 3年前、初めて入った高校の教室の机が高くて、足元をふわふわさせていた。 廊下側の一番後ろ席に座って教室を見回していたら、初めてあの人を見つけた。瞬間息が止まった。窓際の中間くらいに座
2019年5月13日 01:19
テルは斗真の嘘を見破る能力を持っていた。能力というよりは、斗真という人間のみに発揮される鋭い観察眼というべきかもしれない。例えば、常に乾いていて薄いのに人より赤い唇から吐き出される呼気からアルコールの香りが一切しないのに、声のトーンが普段よりほんのすこし明るく上ずっているように感じられる時。テル以外の、他の人から見ればなんの変わりもないように見える些細な変化だった。でも、テルにとって音は色彩