成瀬は天下を取りにいく
『成瀬は天下を取りにいく』
私にしては珍しく(漫画ではなく)小説の話です。
最近は大阪スタジオが出来たこともあって新幹線移動が増えました。
福岡から東京に移動するときは飛行機ですが、福岡から大阪、大阪から東京に移動する場合は新幹線移動になります。
新幹線って飛行機と比べてもスマホが繋がっているので自由に仕事もできて便利なんですよね。(今更ですが)
で、合間に漫画を読んでいることが多い私ですが、実は本も読んだりするんですよ。
もちろん世の中で話題になっているものや売れているものが中心ですが。
で、表題となっている『成瀬』ですが、本屋大賞を受賞されているだけではなくて様々な賞を取っていてなんと14冠なんですね。(詳しくは公式サイトを参照ください)
ここまで世の中の人に評価されて応援されている本であれば、さすがに読んでおかないといけないな、と思って速攻でkindleで購入して一気に読んだのでした。
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これまでに感じたことが無い不思議な面白さ
正直、最初は戸惑いましたよ。
「あれ、なんだこれ、ずっとこんな感じ?どういうしかけ?いや、しかけとか無くてずっとこんな感じが続くの?これが売れてるの?ちょっと不思議で芯の強い主人公にみんなが翻弄される感じ?いやそうでもないな、なんだろうこれ、初めて食べる味って感じ?何も起きない『涼宮ハルヒ』ってこと?いや、それともちょっと違うな、んー?わからん、わからねば!」
まさにこんな感覚で読み始めました。
しかし、気が付いたらページをめくる(電子ですが)手が止まらない。
一気に読んでしまいました。
率直に面白かったです!
こりゃ売れるわけだ、って素直に思いました。
上にも書きましたが、実に絶妙な魅力を内在させてますね、この作品は。
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ストレスフリーの現代の名著
最初はみんなが少し変だと思っている成瀬あかりという主人公の魅力に夢中になっていく、という作風だと思っていたのですが、やはりそれとも違う。
また、周りにいる登場人物も成瀬も島崎もみんないいやつなんです。
この作品を読んで一番の衝撃は「悪い奴が出てこない」ってこと。
もちろん少年漫画では無いので「敵」のようなものは最初から設定すらされていないのですが。
登場人物の中に「嫌だなー、こいつ」って感じるキャラクターすらひとりもいないんです。
みんないい人。
いや、正確に言うと「ただのいい人ってわけでもなくて、当の主人公の成瀬ですら全然『涼宮ハルヒ』でもなくて、悲しければ涙も流すし間違ったことをすれば反省して謝罪もするし、ひとつひとつを積み重ねて少しずつ成長していくし、やってきたことが間違ってることだってあるし、なんかもう全然人間臭いって感じ」なんですよ。
そして、それは全ての登場人物に共通して言えることなんです。
言ってみると、まるでストレスが無い、やさしい世界、居心地が良くてずっと読んでいられる、といった感じでしょうか。
本当に不思議なほど心地よく本を読むことが出来ました。
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地球を救うヒーローじゃなくても
地元の西武百貨店が潰れて無くなる最後の1か月の過ごし方や、急に「M-1グランプリに出る」とか言い出して漫才やったり、東大を受験するとか言ったり、実際に赤門に行ってオープンキャンパスに参加したり、とにかく成瀬がやることは思い付きのように見えて、結局いろんな人に影響を与えていたりと気が付いたらやっぱり成瀬から目が離せなくて夢中になってしまいます。
少年漫画のように地球を救ったりはしないんだけど、この物語の中にいる成瀬は紛れもないヒーローなんですよ。
うーん、こんな書き方があったとは。本当に勉強になりました。
あと特筆すべき点として挙げておきたいのは、とにかく文章が小説として読みやすいということ。
それに加えて誰も傷つけないやさしい世界であるという点が、居心地の良さを醸し出しているんじゃあないかと思いました。
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で?
さて、ここからは「で?お前はどーなんだ?」って話をしようかと思います。
当然ながら「勉強になりました」だけでは終われない。
「で?どーする?」これが大事。
だから言葉にしておきます。
『信じた道をいく』
『成瀬』のシリーズ第二巻のタイトルは『成瀬は信じた道をいく』となっていますが、奇しくもそれが答えのようにも感じています。(追記あり)
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