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感情のエッセイ

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2019年2月の記事一覧

憧れに照らされて

憧れに照らされて

息苦しいのが苦手だ。実際の空気と関係なく、そう感じてしまうとじわじわ窒息していくような心地になる。窓のない部屋、人混み、暑く蒸した空気。どれもが僕を消耗させる。

だから、興味はあってもライブというものに行ったことがなかった。それこそ、本当に息ができなくなる気がして。
初めてライブに行ったのは地元のカフェバーでやる小さなもので、嫁さんに連れられていかれたものだった。それは人混みとは言ってもこじんま

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手を繋ぐ記憶と

手を繋ぐ記憶と

9年前。職場で自分の無能さを痛感する日々がひと月を迎えた頃に、彼女は新入社員として入ってきた。

はじめの印象は「暗い」「カバみたいな顔」「仕事できなさそう」と、およそ好印象とはかけ離れていた。1か月も叩きのめされているのに、すぐ人を見下す僕である。

しかし、彼女はすぐに仕事を覚えた。施設の利用者との関わり方も自然で、細かい気配りができていた。一方で相変わらず僕は怒られ続けており、その差は歴然

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小さな傷

小さな傷

暗い過去が欲しい。
人の傷をどこか羨ましく思ってしまう自分がいる。

その傷っていうのは浅いものじゃいけない。人生が抉れたような、深いものじゃないといけない。なんでかって、そうじゃないと特別じゃないからだ。

志望校に落ちたとか、好きな子にふられたとか、ちん毛が膝のしたまであるとか、そういうのじゃだめだ。ひとつを除いて普通すぎるから。

「みんなと一緒じゃイヤ」

そんな感覚。例えば、好きなアーテ

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