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石山くんへの手紙 【『むき出し』(兼近大樹 著)を読んで】

お笑いコンビEXIT兼近大樹さんの著書、『むき出し』を読んで、
この作品の主人公である”石山”くんに、たくさん話したいことが浮かんで毎日止まらなくなっている状態の私。
この場を借りて、手紙を書いてみたいと思う。

石山くんは、こんな人間の話なんか聞いて、どう思うだろうか。何か、気に障るようなことを言ってしまわないだろうか。親によく言われる、私の”上から目線”のクセが出てしまったら、どうしよう、、、、、、




、、、、、、と、いうことで、

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ここからは、ネタバレを確実にすると思われるため、
『むき出し』の内容を知りたくないという方は、
この先の記事を読まないでください。

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#ネタバレ注意



















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石山大樹さんへ



朝晩すっかり冷える時季になってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

石山さんの出身地である北海道より少し南、北東北のとある場所に住んでいる、あなたの人生を『むき出し』という小説で知った者です。

鮮やかな表紙にひかれて、ページをめくっていくと、そこに書かれているあなたの人生に心をすっかり掴まれて、立ち読みでは済まなくなってしまいました。


ただ、
私自身は今、あまり裕福ではないのです。たまたま母に連れ出され「好きな本があったら買ってあげる」と言われていた中だったので、奇跡的にこの本を今、家で何度も読めているのです。母には、感謝しないといけないですね。


今、私は心の治療をしていて、もうすぐ鬱病10年生になってしまいます。
自宅療養の中で、働きに出たことも数回ありますが、結局だめになってしまって長続きせず。今は就活すらできないメンタルです。当然、収入がないので、増えない貯金、減る一方の残高。未来は見えないし、いい歳して実家暮らしでいつまでも家族に迷惑をかけて。

そんな生活の現在進行形です。


石山さんの言うところの、”階層”の話をすると、

幼少期、学生時代、社会人と育ってきた中では、私は石山さんと同じ階層にはいませんでした。
必要なものに困ったことはなかったし、ピアノや水泳を習っていて。県外には出なかったけれど、短期大学に入れてもらって、卒業してそのまま保育の仕事をしました。
小さいころの夢からはいろいろ変わったけれど、高校のときにきっかけがあって、保育の仕事を目指すことに決めました。

それって、両親が不自由なく私を育ててくれたから叶った夢だったのかな。

やりたいことを、普通にやりたいと思える人生を送れることって、素敵なことだったのですね。


そのことに対する、感謝を、忘れていました。

というか、したことがなかったかもしれません。


私は、せっかく目指して就いた仕事で精いっぱいになって(人間関係、パワハラ的な)、それがきっかけである日、大きくダウンしてしまって、、、、、、人生が変わってしまいました。

保育のお仕事6年目、年度途中で、誰にも挨拶できないまま辞めざるを得なくなりました。心も体も大崩壊しました。

子どもは好きなままなのに、保育の現場を思い起こさせる場面を見たりすると具合が悪くなるので、前の仕事には戻れません。


これから、やりたいことを、ゼロから探さなくてはいけません。

何か資格を取るのもお金がかかるし、すぐ働くには判断力や社会性に欠ける状況。

石山さんが今、どこかにいるとしたら、きっと30歳くらい。私の年齢は、あなたの5つくらい上です。


私の周りの数少ない友人は、25歳前後にはもう結婚、子育て、、、家庭を持っている状況でした。早いですよね。
動けなくなった私が家から出られずに過ごし、”今日は窓を開けて外の空気を吸ったから合格”、なんて日々を送る中、会えなくなった知り合いはみんな人生を次のステージに進めている。みんな、県外へ出て行って、物理的にも離れていってしまいました。
もう、みんな、違う世界で生きていて、私だけ取り残されているような気持ちでいました。
誰も、私がいなくても別に困らないよな、と思い、死んでしまおうとしたこともあります。

今となってはもう、”何歳で何を始めても遅くない”、と言い聞かせていますが、あれからもう10年近く経つのに、ここにきて”やりたいのにできない”がどんどん増えていき、もう、おかしくなりそうです。

こんなに社会との断絶が長引くなんて、思ってもみなかったので。

孤独な自分に虚しさを感じたり、慣れすぎて忘れたり。そうしているうちに、もし今友人に会ったら、もし今急に就職が決まり職場に行ったら、と考えるだけでも不安な状態になってしまっています。人と、普通に話せるか、怖いです。家族と会話していても、かみ合わなかったりすると戸惑いが強かったり、何かを共有できる仲間がいなくて、寂しかったり。漠然と満たされない気持ちが毎日続く。

ずっと、このままではいられない。
でも、がんばったらといって進める状況でもない。
がんばったり無理したりすると、余計に治らない病気。

でも、生きていかないといけない。
この先の、30代半ばからの人生を。



、、、、、、そんなときに、あなたの人生に出会いました。


こんなこと言ったら石山さんはどう思うか、わからないけれど、、、、、、


だいぶ温室で育ったはずの私が、
おそらくこの本を読んでいなかったら知らなかった世界を経験したあなたと、強く共感する部分が多くあったのです。

今、私が、がんばってもコントロールすることができない状況で苦しんでいることが、その共感につながっているところもあると思います。



”普通の世界”で育った私に、こんなことを言われるのは、いい気分ではないですか?
違う階層の人間に、共感されることは、嬉しいですか?それとも、、、、、、

そして、今、おそらくどこかに存在している石山さんが、いまだにその階層の違いを感じることはありますか?
覚悟して上京してから、そして、過去のことを文春さんに明かしてからもなお、昔の、うまく言いたいことが言えず暴力的な行動をしてしまった自分、されてきた自分、たいせつなひとを救えなくて悔しんだ自分を思い出し、苦しさに襲われて過ごす夜はありますか?


、、、、、、こんなこと、聞いてしまってはいけないかもしれません。

ただ、私は、自分の心身が崩壊してしまったあの頃の現場、その頃していた仕事のこと、”子どもたちを守れなかった”という思いなど、いろいろな思いや状況が急に頭の中に出てきて、フラッシュバックのように具合が悪くなることが、何年も続きました。今は、トラウマはそこまでひどくなくなりましたが、今もときどき、保育をしている夢を見て落ち込みます。


そういうことが、石山さんにもあったら、現在もつらいだろうなと思って。

、、、、、、こういう、中途半端な共感、本当に迷惑ですよね。



また、過去の職業柄、私は、”もし自分のクラスに石山くんがいたら?”ということを、考えました。

石山くんのいいところを見つけたり、”もっと見てほしい”という思いにこたえてあげたかったな、でも、実際私にできただろうか、もし他の保育士が違うことを言っても逆らってまで寄り添うことができただろうか、、、など、いろいろなことを、上から目線で申し訳ないのだけれど考えました。
幼いころの石山くんは、”言うことを聞かないと殴るぞ”という部分はあったけれど、”こうやって言葉で伝えたら伝わるんだよ”、と根気強く話せば、きっとわかる子です。そして、家族がだいすきで、たいせつなひとを守ることのできる子だし、ひとを楽しませたい、喜ばせたいという、サービス精神の旺盛な子だったんだと思います。そういうところを、もし伸ばしてあげられていたら、変わっていたのかな?
ゆくゆく、あなたがたくさんのひとを傷つけることになる前に、守ることができたのかな?

、、、、、、そういうことを、考えました。

昔、私の担当クラスの3歳の男の子が、私の言動が気に入らなくて怒っていたときのことです。
詳しい状況は忘れましたが、その子の行動を注意しないといけない状況で、どうして私が今それを伝えているのかを伝えたけれど、その子のイライラがおさまらなかったようでした。1対1で向き合っていたのですが、しばらく言葉のラリーがあった後で、その子は怒りながらも私の反応を試すように、腕を叩いてきたり、押してきたりしました。私はあえて、何をされても動じずにいました。すると、エスカレートした彼は、私の顔を思い切りひっかいてきました。動じずにいた私ですが、だんだん顔がひりひりとしてきて、気づいたら血がにじんでいました。
すると、急に顔色を変えた彼が、
「、、、、、、ごめんなさあああああい!!!!!!」
と、泣きながら謝ってくれたのです。
私の血を見て、”大変なことをしてしまった”、ということに、気づいてくれたようでした。
思い切り、彼を抱きしめたことを、覚えています。

ひとの痛みのわかる子に、その子は今、育ってくれたかな?
今、どんな世界を生きているのかな、、、、、、


そんなことも思いました。

振り返ることを避けていました。これまで。


人を羨むな。今を恨むな。自分にあるモノを数えろ。
過去なくして今の俺にはなり得なかったと、自分を受け入れろ。

『むき出し』より

この言葉は、今までの自分だったら
「いや、わかってるよ、頭では。実際はなかなかね」
と、思うような言葉でした。
鬱病の間、ずっと、ずっと、そうやって思ってきました。

でも、ここまでの石山さんの人生を見てきて、この言葉が出たときに、
改めて、今までの自分のこと、とくに蓋をしてきた”保育をしていた頃の自分”も、きっと私を作っているんだと、少し考えを変えられるような気がしてきました。
だから、今、自分がもし石山くんの担任だったら?ということを、考えることができるようになっているのだと思います。
本当に、今まで、考えようとするとそれだけで体に不調が出てきていました。こうやって記事を書きながら今、自分の変化を感じている最中です。



あなたは、どの階層にいるときも、ひとに頼られる、信頼される、純粋なやさしさを持っていたのですね。心のよりどころのない”裏の世界”の階層のひとからも、上京して必死にコミュニケーションを学んで出会ったたくさんの芸人さんたちからも、求められている、、、、、、
そして、そのやさしいあなたが両方の階層を経験しているから、きっとどんなひとの心にも寄り添える人間になって、その階層の壁の架け橋となるためのアクションをたくさんしながら、お仕事をしていると思います。

コンビを組むときに中島さんに

「俺はお前の過去も背負うよ」

『むき出し』より

と言われて、信頼することができたあなた。


俺は死にたくないわけではないけど、生きることから逃げられないんだ。

『むき出し』より

と思っていたあなたが、

でも俺は、まだ生きていたいと思っている。

『むき出し』より

という気持ちに変わったあなた。

上京して、自分の夢のために努力することができたこと、そして、それが叶ったからなのだな、と。

夢を叶えたい、と思える状況に身を置けるのかどうかで、”生きたい”と心から思えるかが決まる、と言っても過言ではないですね。


今、私は、夢ややりたいことが叶う確信が、徐々に持てなくなっている状況で。
でも、そんなときにわかったことがあります。

私は、親に「感謝が足りない」と言われてもパニックになったり、心のどこかで反抗していたりするだけでした。
でも、この本と出会い、石山さんが徐々に、自分のしてきたことの反省点や、人に対する感謝を学んでいく過程を追っていったら、
やっぱり、
「私にも感謝が足りなかった」
ということに気づけました。


音楽や本など、出会うモノって、”呼ばれる”って言います。

何の気なしに、偶然手に取ったモノって、実は今の自分にそれが必要だからだっていうこと、よくあるんです。

石山さんが、又吉さんの本と出会い、人生を変える決断ができたように。


今の私が、この本、あなたの人生と出会ったのも、そういうことを考えるきっかけが必要だったからなのかなと思います。

本当に、出会えてよかった!


上京してからの世界のことは、本の中では過去の話よりは色濃く書かれていない感じを受けますが、本当に、本当に、前のめりに努力して世界を理解しようとしていましたね。苦労されたと思います。
でも、夢や目標、やりたいことが見つかるということは、ひとにそれだけのエネルギーを与えるのかもしれません。


あなたは、ここまで本当によく、生きてきました。
石山さんが生まれてくれて、自分と向き合ってくれて、そして素晴らしき世界の入り口となってくれて、本当にありがとうございます。

私も、きっと、明日も生きてゆきます。

死にたい死にたいと、心の中では言いながら。

だって、やりたいこと、たくさんあるんだもん。


私は、結婚して子どもが生みたいです。
その年齢じゃ、この病気の回復スピードじゃ、と自分でも諦めそうになるけれど、子どもがだいすきなまま、子どもと無縁になった人生は、送りたくない。

後ろ向きになりそうなとき、芸人さんが笑わせてくれるんです。
無条件に。
ひとを喜ばせる、たのしませるお仕事って、本当に素敵だなと思うし、”笑い”はときに薬よりも有効性があると思っています。
芸人さんたちのことを、心からリスペクトし、感謝しています。


この先何があっても、石山さんのそのお人柄なら、心配いらないと思います。
今、悲しいときは、ちゃんと泣けていますか?
私は、病気になってから、ぎゃーぎゃー泣けるようになりました。
涙も出なくなったら、終わりです。
誰かと一緒の時間も、ひとりの時間も、大事にしてください。



もう、12月に入ります。
東京も寒くなるでしょう。
どうか、年末の多忙な時期になりますが心と体のメンテナンスは十分に、、、、、、

長文の、つたない文章を読んでいただき、ありがとうございました。
あなたの人生に、出会えてよかったです。
たくさんのことに気づかせていただきました。

今の状況に感謝すること。そして過去の自分の経験に蓋をせず、その出会いをなかったことにせず、自分を誇れるようになれたら、きっと、病気もよくなっていく気がします。



では、いつか、どこかで。


あなたのこの先の人生が、どうかしあわせでありますように。



            pizza


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未熟ですががんばっております。治療費にあてさせていただきたいです。よろしくお願いします。