見出し画像

短編小説 | あなたと同じ人

 同じ高校だった親友の優子に男ができたらしい。

「優子の彼ってどんな人なの?」

「う~ん、どっちかというと無口な人ね。でもいつも私がしてほしいなって思うことを先回りしてやってくれる。今は絶滅危惧種になった不言実行型の人かな。智美は今、彼氏いるの?」

「ずっと好きな人はいたんだけどね。告白する前にフラれちゃったみたい」

「智美はおとなしいからね。もうちょっと積極的に話しかけていたら、彼は振り向いてくれたかもしれないのにね」

 優子は私とは正反対の性格だった。自分のほしいものは、いつも積極的に手に入れてきた。たとえそれが人のものであったとしても。

「明日、私、彼と海に出かける約束してるの。智美は高校の頃から私をいつも援護してくれたよね。今回の彼と私が末長くうまくいくことを祈ってくれるかな?」

「うん。だって優子の彼氏でしょ?好きになったのは私のほうがずっと先だけど、私は告白できなかったし。私はいつも勇気ある優子の味方よ」

「そう。どうもありがとう。もしかしたら、智美に恨まれるんじゃないかって心配していたの。私たち、これからも親友だよね?」

「親友か。そうだね。親友だね。アキラさんっていい人だね」

「それは間違いないわね。だって智美が好きになった人だから、間違いない」

「優子、がんばってね!応援してる。優子とアキラがうまく付き合っていけることを… …」

 そう笑顔で優子に話しかけたとき、一筋の涙が、自然に頬を伝わってきた。

 私ってダメな女ね。自分の最も欲しかった人をみすみす奪われても、「絶対ほしい!アイツをとらないで!」って言えないのだから。

おしまい

⚠️このお話は、森高千里さんの「気分爽快」をモチーフにして書きました。
こういうとき、女の友情って成立するのでしょうか?



#あなたと同じ人 #森高千里
#短編小説 #恋愛 #友情
#コミュニケーション #哲学
#物語 #歌詞 #気分爽快
#恋愛小説が好き
#掌小説 #私は私のここがすき


記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします