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一語の宇宙 | doubt (疑う)

doubt [ダウト]。「疑う」という意味。
この単語については、私がnoteをはじめてすぐの頃にも書いたことがある。



ドイツ語を学習しているときに、
zwei [ツヴァイ](「2」という意味)と
zweifeln [ツヴァイフェルン](「疑う」)というつづりが似ているな、と思った。

その時に英語の
double[ダブル]と
doubt[ダウト]が関係あることに気がついた。調べたら、この2つの単語は語源が同じだった。
「doubt」というのは、「二者の間で迷う」というのが元々の意味なのだろう。


綴りと発音


 ドイツ語、フランス語やロシア語の入門書を見ると、たいてい「文字と発音」(綴りと発音)に関する説明が最初のほうのページに書いてある。
 もちろん例外はあるけれども、どの言語も基本的には「文字通り」「ルール通り」に読めば良いので、知らない単語であったとしても発音はできる。

 それに比べて英語は、綴りだけでは読み方が分かりにくいものが多い。
たとえば、
 「women」(womanの複数形)の「o」は「イ」と発音する([ウィメン])。
 「bury」(~を埋める)の「u」は、「エ」と発音する([ベリー])。
 「allow」(~を許す)の「ow」は、「アウ」と発音する([アラウ])。
 「walk」は「ウォーク」で、「work」は「ワーク」。

 英語の場合、中学生からずっと馴染みがあるから、綴りと発音との不一致にも慣れているが、もし最初に学んだ言語がフランス語やドイツ語だったとしたら、英語のスペリングや発音には辟易してしまうことだろう。

 英語に発音とスペリングの不一致が多いのは、さまざまな言語の単語を呑み込んできた結果である。だから、綴りが複雑になっている。しかし、その代わりに他のヨーロッパ系との言語に比べて、「格変化」( I - my - me のようなもの)は少ないし、「人称による動詞の変化」(「3単現のS」以外は変化なし、過去形に至っては全部同じ)は少ない。
 


表音文字と表意文字


 英語のアルファベット(ラテン文字)やロシア語のキリル文字は、基本的に「発音」を表すものであり、文字自体には意味がない。このような文字を表音文字という。日本語の「ひらがな」や「カタカナ」も表音文字だ。

 それに対して「漢字」には、文字自体が意味を表すから表意文字という。「絵文字」も表意文字の一種かもしれない。


 英語は「表音文字」なのだから、綴りと発音が一致していればいいのに、と思う人も多いと思う。
 「ダウト」と発音するのだから、たとえば「daut」という綴りのほうが分かりやすいのではないかと。

 しかし、「ダウト」が「doubt」と綴られることで「double」や「dubious」という単語と関連のある言葉だということが分かりやすかったりする。

 英単語は「表音文字」で綴られているけれども、学習しているうちに、あたかも「表意文字」であるかのように思えてくる。単語をパッと見た瞬間に、まるで「漢字」を見るかのように単語の意味が了解できるようになることもある。


漢字を学ぶメリット


 日本語も国際化に合わせて、漢字を廃止して「ひらがな」だけにしたほうが良いという主張をたまに見かける。

 アルファベットならば、大文字・小文字を合わせても50程度だから、一週間かそこらで覚えられるだろう。それに対して漢字は、義務教育が終わってからも学び続けなくてはならないし、一生かかってもすべての漢字を覚えて使いこなせるようにはならないだろう。

 しかし、長い年月をかけて文字を学ぶことには大きなメリットがある。
 日本語の文章を読むとき、何が書かれているのかは、漢字だけ拾っていけばだいたい全体の内容が把握できる。これは英語の文章を読む時には難しい。

 日本語と英語を同じくらい習熟している人が仮にいたとすれば、圧倒的に日本語で書かれた文章のほうが内容を把握する時間は少なくて済むことだろう。というのは、基本的に英語の場合は、文字を「音」に変換しない限り意味が把握できないのに対して、漢字の場合は文字を見ただけで「映像化」されるからである。


「一語の宇宙」では、1記事で1つの英単語を取り上げてエッセイを書きます。
記事はすべてこちらのマガジン(↓)に収録していきます。


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