短編小説🍑桃太郎[第2話]
[i]
すくすくと育った桃太郎は、武道家になっていた。ある日、桃太郎は母親に言った。
「俺はもっと強くなりたい。この村を出て、もっと強い奴がいる国へ行きたい」
桃太郎の母親は喜んだ。
「お前も立派に育ちました。寂しいけど、行っておいで」
そこへ、物陰からふたりの会話を聞いていた父親が現れて言った。
「よく言ったな。桃太郎。どうせなら、鬼ヶ島を目指せ!あそこには強者がうじゃうじゃいるという噂だから」
父親はそう言うと、桃太郎に、完成したばかりの「フリーズドライ吉備団子」を三個手渡した。
「どうしても食べるものに困ったらこれを食ってくれ!」
[ii]
愛犬のポチといっしょに、桃太郎は家を出た。両親との別れは、つらいものであった。涙がでてきた。涙を見せたくなかった桃太郎は、二人と目を合わせることなく、歩き出した。
家から百歩進んだところで、我が家を振り返った。両親がまだ手を振っていた。桃太郎は笑顔でつぶやいた。
「俺は強くなるまで、この家には戻らない。絶対に強くなって帰ってくる」
桃太郎は決意を新たにした。
[iii]
ポチといっしょに家を出てから数ヶ月後、下野国の日光にやって来た。伝説によると、日光はかつて、猿🐒の大群に二度襲来されたことがあるという。
2度の荒れ果てる経験から「二荒」(ふたあら)という地名が使われていたが、生々しい過去のイメージを払拭するために、「二荒」を音読みして「にこう」(日光)と呼ばれるようになったという。
桃太郎は、必ずしも伝説を信じたわけではなかった。しかし、これが大きな油断だったと気が付いたのは、翌日のことだった。
つづく🍑(かもしれない)
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