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一語の宇宙 | 再帰代名詞 | themself / themselves



英語をはじめとするヨーロッパ系の言語を学ぶとき、初期の段階で丸暗記しなくてはならないことがある。

「人称代名詞」は繰り返し出てくるので、きちんと覚えておかないと、学習が遅々として進まなくなる。

英語を学びはじめたとき、誰でも
「アイ・マイ・ミー」と暗記したはずだ。

「主格、所有格、目的格、所有代名詞、再帰代名詞」の順番に並べて復習してみよう。


人称変化

[一人称単数]
I - my - me - mine - myself 
[一人称複数]
we - our - us - ours - ourselves 
[二人称単数]
you - your - you - yours - yourself 
[二人称複数]
you - your - you - yours - yourselves 
[三人称単数]
he - his - him - his - himself 
she - her - her - hers - herself
it - its - it - (its) - itself 
[三人称複数]
they - their - them - themselves 



所有格と再帰代名詞


一応全部並べてみたが、
注目してほしいのは、
二番目(所有格)五番目(再帰代名詞)

一人称と二人称の場合再帰代名詞は「所有格  +  self(selves)」という形をとるのに、
三人称の場合、再帰代名詞
目的格  +  self (selves)」という形をとる。


なぜ、三人称の再帰代名詞だけ
「目的格 + self (selves)」になるのか?

ちょっと気になって調べてみたが、
よくわからない。
いちおうそれらしい説明の記事はあるのだが、確定的なことはわからない。
まあ、そういうものとして覚えていればいいんだけど😄。



themselfという形もある


 いっぱん的に、「they」は複数形だから、その再帰代名詞は「themselves」というように「selves」(selfの複数形)となる。

 しかし、「themself」という形もある。
 この形はとくに近年になって(「ジェンダー」意識の高まりとともに)見られるようになった。

 例えば「everyone」(みんな)という単語。
 「everyone」は「人を表す単数形(単数扱い)」の言葉だが、代名詞で受けるとき、男性扱いにすればいいのか、女性扱いにすればいいのか、苦慮するものだ。

Everyone has (       ) own way. 
(誰にでも自分自身のやり方がある)
 

カッコ(      )には、なにを入れたらよいだろうか?

むかしの教科書だと「his」、
ちょっと前の教科書だと「his or her」、
最近のメディアやSNSでは「their」。

 文法的にスッキリするのは「his」と「his or her」。
 しかし、「his」だと「女性は含まれないのか!」と文句が出そうだし、「his or her」だと「まどろっこしい」。
 だから「中性」的な「their」が使われることが多くなったのだが、「everyone」という単数扱いの単語を、「their」で受けるのは、なんか気持ち悪い。

 かといって、「its」を使うと、人ではなく「モノ・動物」みたいに響いてしまう。

 どれにしても一長一短がある。
「themself」という言い方も、このような流れの中で使われるようになった。ジェンダーの問題は回避できるが、文法は犠牲にされる。


蛇足的なこと


英語では、他のヨーロッパ系の言語では珍しく、基本的に「男性名詞」「女性名詞」「中性名詞」という「性」という文法カテゴリーはない。

英語に近い関係にあるドイツ語には、すべての名詞に「性の区別」がある。
だからドイツ語の単語を覚えるときには、男性名詞なら定冠詞「der」、女性名詞なら「die」、中性名詞なら「das」を付けてひとつひとつ覚える(自然的な性や、綴りから推測できるものもあるけれど)。

しかし、外来語であったり、新語だったりすると、「性」が定まっていない場合もある。そのようなときは、「複数形」にして「die」を付けて「ちょろまかす😄」ことができる。複数形にしてしまえば、すべて「die」になるからね。

ドイツ語には、文法カテゴリーとして「性」がある。
「themself / themselves」的な問題は聞いた記憶がない。どんな名詞でも(多少揺れる期間はあるが)、いずれかの「性」に定まっていく。

英語では「chairman」が「chairperson」になったり、「spokesman」が「spokesperson」になったり、新たな語が作られていく。

日本語でも、「スチュワーデス」が「フライト・アテンダント」、「看護」が「看護」、「保母」が「保育士」になったり。

もともと文法カテゴリーとして、「性」を持つドイツ語などのような言語より、英語や日本語のように「文法的な性がない」言語のほうが、ジェンダー的にやっかいな言語問題を抱えることが多いような気がしている。どうなんだろう?


(参考)
☆themselfという形☆
(ジェンダー的な問題の回避)


「一語の宇宙」では、ひとつの記事でひとつの英単語を扱い、エッセイを書きます。こちらのマガジンに収録していきます。


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