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「キリストと線虫Ⅰ」
黒実 音子


ダンス、ダンス、ダンスを踊れ・・
アファノマイセス・インヴァダンスを・・


私は常に考える。
自分が死ぬ時の音・・

自分の棺桶に土がかけられる音。
リズミカルな
心臓(カルディエ)という
打楽器が停止した後の、
シャベルと、墓地の土でできた
喪の太鼓(ダフ)で奏でられる
人生最後の脈拍の模倣(フーガ)。

ああ、
冷たい土がかけられ、
地上の光と別れを告げよう。

諸君!!
例え、死んでいようと!!
この肉体が
必ずそれを味わうのだ!!
棺に閉じ込められ、
土中に埋められる閉塞感を!!
ああ!!世界は
なんという滑稽な喜劇か!!

ダンス、ダンス、ダンス・・

埋められた棺桶の中には何がある?
沢山の線虫(プラティレンチュス)達の奏でる
聖譚曲(オラトリオ)を聴きながら、
我々は木箱の底からキリストのいる
幕屋へと辿り着く。

「主よ、
こんな所におられたのですね!!
あなたは大聖堂(カテドラーレ)の
金の祭壇ではなく、
世界が誰も顧みない
土に埋もれた四角い棺の
魔廊の中におられる。
全てを失う事で
ようやくあなたと
出会えるのですね!!」

ダンス、ダンス、ダンス・・

だが最早、言葉などそこにはない。
返答もない。
そこには何もいない。
死んで乾いた甲虫と、
神以外は・・

ただ土中の線虫(レシオン)達の
神を讃えるミサだけが響くのだ。

ダンス、ダンス、ダンス・・

ああ、
私は鯉(シプリーノ)の潰瘍に住む
病理の染物を身に纏い、
貝類漁師(マリスカドリス)達と漁をする。

迷える者よ。
世界の大海に向かい、祈るのではなく、
自室の排水溝に向かい、
己の内の楽園に祈るがいい。

歪な腫瘍をいくつも患った
ガリラヤの海の魚達が
泳ぐ音が聴こえないか?
それが世界の真実の音だ。

生きた者が語る栄光ではない、
死んだヤクザ者の死体が語る
カルデロンの詩。

鯰(クラリアス)の腐臭・・
鯰(クラリアス)の埋葬・・

ダンス、ダンス、ダンス・・
アファノマイセス・インヴァダンスを踊れよ・・


諸君、わかったかね?

流行性潰瘍症候群の痛み・・
その痛みを超越した先の信仰。
麻痺性の毒を持つ
牡蠣達の青い時祷書。
線虫(プラティレンチュス)達とキリスト・・・

期待してるんじゃないよ。
我々の理性が望む様な形では
何一つ救いは訪れない・・

自分の頭を銃で撃ち殺した悪党も、
臓物を切り裂かれた獣も、
愛すべき友も、
穴だらけの魚も・・
ただ、棺の中で
線虫(カエノラブディティス)達による
粗雑な処置を施され、
キリストと眠るのだ。
人生という木(パリジョ)に架けられた私達は。

キリストは言った。
「聞きなさい。
今、私達は楽園にいる」


不幸な骸達よ・・
疫病により、
水に浮かぶ沢山の魚の死骸の上で、
我々の理性が理解する事が出来ない
[救い]に乾杯しなさい。

人の形をしていた
かつての優しさに期待する心を
永遠に捨て去りなさい。







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