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「キリストと線虫Ⅱ」
黒実 音子


ああ、土壌中に眠る・・・
土壌中に眠る
かつての受肉の後胤よ・・
悲しい世俗に
磔刑にされた者の欠片が、
あるいは輪郭が・・
ここで静かに瞑想している。

分節の無い回虫達の
拒絶のミサ・フィトクィミコによって
静かに沈着し、項垂れる。

ああ、貴方こそが
王国の主人。
アスカロシドの玉座の王。

線虫達を制御している糖脂質が、
様々な過去を音を
この納骨堂に響かせる。

おお、
石打を受け入れた聖ステファノは、
この音を聴いたのか?
イナゴの笑いではなく、
澄んだ固い石の響きですらなく・・

気高さの前では
悲痛な嗚咽すら降伏し、
神の摂理に頭を垂れる。

あるいは線虫を食べる
真菌オリゴスポラの酵素の音・・

様々な構造のアスカロシドによる
音の無い対話が、
天使達の討論なのだ。

線虫達や、霊達は言う。
我こそは、深山の朝霧の中、
上半身だけになった甲虫の末裔・・
糖を失った死骸(アグリコン)達の肉片。
かつて聖なるパンだったものの飛沫。
他者の肉を拒絶する肉。


その境界線を
ミサ・フィトクィミコは
抑揚無い聖歌で讃えるが、
感情の無い防御は、
些細なずれにより、
脆く崩壊する。

寄生と病理。
腐敗と托魂。

最早、キリストは、
我々の知る人の形ではあり得ない。
ダウナーの様に渇き、
元来の原初の霊として
あらゆる時間に存在し、
あらゆる声を聴いている。

骨の対位法。

百貨店をかけていく少年から、
森で死んだ子供の腐肉まで・・
キリストは話しかける。
[全ては神の愛に
抱かれた事なのだよ・・]

と。

「最早、地上に栄光は無い」
という者もいる。
キリストは去ってしまったから・・

十字架による喪失は
不可逆的であり、
悲惨な血は止まる事はないから・・

ああ、それでも私は
悲鳴をあげはしない。
悲鳴をあげ、誇りを裏切り、
悪意を喜ばせる事はしない。

低きしたたかな者達よ。
その魂に相応しく、
震え、畏れおののくがいい。

ああ、それでも私は
勝ってみせよう。
かつてギリシャ語を話すユダヤ人達が
そうした様に・・
血の名誉(オノーレ)に賭けて。

ゴキブリの死骸と、
土の汚れに・・







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