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精神障害に関する研究を始めました

障害者研究を独自に行なっています。特に、精神障害者の欲望をどのように形成していけばいいのか?、どのように私の気持ちや意見を理解してもらえるのか?について研究しています。

その背景と重要性、今後の展開を簡単に紹介したいと思います。

背景

シンプルに僕の身内が知的障害を持っていることがきっかけです。

彼とは簡単なコミュニケーションは取ることができますが、内容が複雑になると会話が成立しなくなったりします。また、中学校の内容くらいで勉強の内容は止まってしまっているので知識として通常の会話に必要なことが欠けていたりします。

日常生活で課題だと感じるのは「彼が何をしたいのか?」がわからない時です。

よく障害学では「見えやすい障害」と「見えにくい障害」として区別することがあります。前者は車椅子使用者とか視覚障害者などで、後者は知的障害者や精神障害者になります。

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前者の場合は、ぱっと見ればこの人が何に困りそうかがなんとなくわかるので支援しやすいらしいですが、後者の場合は何に困るのかが掴みづらいので適切な支援が何なのか?が会話しないとわかりません。が、前述の通りその会話も通じなかったりするので会話してみてもわからない時があります。

この「本人が何をしたいのかわからない」ということが僕自身の問題設定の根幹になっている部分です。

というのも、これまで哲学や現代思想の勉強を中心に行ってきたのですが、その中で僕が興味を持ったのが「人間の意志をどう考えるのか?」です。

若干荒っぽい説明になりますが、近代以降人間の行動の背景には意志の存在が前提として考えられてきました。代表例としては、本人の意志で行った行動は本人が責任を取るとか、自己責任論と呼ばれるやつです。

しかし、本人の意志なんてものは本当に存在するのか微妙なところです。

大学選びとか会社選びは自分の意志で選んだと思っているかもしれませんが、親、友達、金銭、知名度、世論、などなど自分の外側の要因に大きく影響されている時、それは本当に自分で考えた末の意志ではないと考えています。そもそも大学選びとか会社選びとか重要な決断を本当に自分だけで選択できる強い人間がどれだけいるのか微妙です。

つまり、意志があるとかないとかは事後的に責任を取らせるために使うロジックでしかなくて、個人の意志は他者や周りの環境に常に先立たれてしまう。意思とは他人や周りの環境と一緒になって作っていくものだと思うのです。

少し遠回りしましたが、本人の意志を周囲の環境や他者と一緒に作っていくのだとすれば、精神障害者本人の意志を形成しやすい周囲の環境やコミュニケーションをどのように作ればいいのか?という課題が浮上します。

この課題にコミットした方がいい理由を順を追って説明します。

(1)余暇形成支援の必要性

障害者福祉の観点から考えると、障害者への支援方法は大きく分けて次の4つに分けられます。

・就労支援

・自立支援

・コミュニケーション支援

・余暇形成支援

この中で取り上げたいのは最後の余暇形成支援です。これは読んで字の如く休日などに行う趣味や娯楽活動を支援するものです。

障害者になると小中学生の頃から特別支援学級というクラスに入り、そのまま特別支援学校→就労支援センター→障害者雇用のルートを辿ることになることがほとんどだと思います。

このことでただでさえコミュニケーションが苦手なのにもかかわらず、社会や非障害者との接点が薄れ、学校を卒業した後に定期的に会える友達がいなかったり、休日に何をやっていいのかもわからずテレビ漬けになります。

障害学では「脱医療化・脱施設化」ということが言われます。障害はもはや治すべきものでは無いので病院や施設に閉じこもってないで社会の中に飛び出して自由な活動を行うことを推奨する考え方ですが、特別支援学級→障害者雇用の流れで友達を作れていない状況では非現実的です。

余暇形成支援の欠如で、障害者の健康や家族の負担が問題になります。2016年に起きた相模原のやまゆり園事件を思い出すと植松容疑者は障害者の負担を一手に引き受ける母親の負担を軽くするためにも自分が障害者を殺害するのは正義だと考えていました。もちろん負担を軽くするために殺害するなど言語道断。許されるわけがないですが、母親や家族の負担を軽くしたいという気持ちだけは僕も共感できます。

また、障害者を身内に持つものとしてよく言われる障害者雇用などの就労支援は別にどうでもいいなと思ってしまいます。なぜなら福祉的就労にしろ、一般就労にしろ貰える額は少額で一人暮らしをするには微々たる額なので結局親と同棲になります。そうなると働くことは生活費を稼ぐ手段というよりかは将来の貯蓄に回したり、仕事で人とコミュニケーションしたり、職場への行き来の運動になる、、などお金以外の目的の方が重要になります。

それよりも家族が先立ってしまった時に一人でやっていけるだろうか?という心配しかありません。(最悪の場合)お金は生活保護なり、障害者年金なりでどうにでもなりますが、仲間はお金で買えません。

ですから、今のうちから仲間を作っていざとなった時の依存先をたくさん社会に増やしておくことが願いです

まとめると、余暇形成支援というのはあまり定着していませんが

・将来の依存先を増やす

・障害者家族の人権を尊重する

という目的を達成するために必要な支援なはずです。しかし、ハードルがあります。

(2)余暇形成支援の課題

余暇形成支援とは障害者を社会に開いていくことと同義です。

ただ、最初に述べたように知的障害や精神障害は「見えにくい障害」に分類されます。見えやすい障害に比べて、何を実現したいのか、どのようにサポートすればいいのかがわかりづらいです。

現状の法律では例えば障害者差別解消法で、障害者の社会的ハードルを取り除くための「合理的配慮」があります。事業者が社会的障壁を取り除く努力をしなくてはいけないという法律ですが、合理的配慮にアクセスするためには障害の当事者が他者に何をサポートして欲しいのかに関する「申し出」をする努力が必要とされています。裏返すと、障害者が何を実現したいかを申し出なければ他者もどのような配慮をすればいいかわからないので、適切な処置を行わなくてもいいということになってしまいます。

そもそも、見えにくい障害では自分でも何をしたいのかがわからないのにそれを申し出することができるでしょうか?また、申し出したことによって社会的なスティグマを貼られてしまうのが怖くて申し出することができないケースだって考えられます。

従って、この数十年間で障害者に対して特別な配慮をしなくてはいけないという常識が広がったのは間違いないですが、障害者が何を実現したいのか、障害者にどんな配慮をしていけばいいのか、について障害者に語ってもらうことや障害者と語る努力はまだ足りていないと感じます。

実践している例をあげると北海道浦河の「べてるの家」が考案した当事者研究という活動があります。こちらは大変参考になる試みなので、このような活動がさらに広がることで精神障害者や知的障害者がどのようなサポートを欲しているのかに関する「障害者の語り」を蓄積していくことが次の時代に残すべき仕事だと考えます

(3)個人の意志を形成する環境作りの重要性

最後に、障害者との対話によって一緒に意思を形成していくことはなにも障害者だけに必要な環境ではありません。

本音と建前という言葉がありますが今の世の中は建前で話す機会が多すぎると思っています。

それは大学選びにしろ、就活にしろ、転職にしろ「今すぐやりたいことを捻り出せ!」「今すぐAかBか決めろ!」というプレッシャーを受けて、本音では何もやりたいことは浮かんでいないけど建前として世間体の良い選択をすることが「要領よく生きること」として定義されている気がします。

僕自身がそうだったので自戒をこめて書きますが、建前で自分を飾りつけしながら生きることは確かに評価されるんですが、同時に自分自身がどんどん建前で上書きされるのでどこに行っても建前でしか話せなくなって苦しくなります。建前は他人のために発するものなのでどんどん他人のために生きている感覚になります。やはり本音を安全に語れる環境がないと自分がやりたいことがどんどんわからなくなっていくんです

周りの人と本音で安全に語れる空間や誰かに依存したいという本音を公開できる関係性は障害者だけでなく非障害者にも必要なんじゃないか、ということがここでの言いたいことです。

思えば新自由主義は強い個人を前提にしています。なんでも自分で片付けるし、他人に迷惑なんてかけないし、他人の人権だってきっちり尊重できる個人。しかし、そんな個人を目指すと疲れるだけということが身にしみてわかった数年間だったので、自分のことなんて自分で決められないし、誰かに頼らないと生きていけない弱い個人を前提にしながら、弱い個人がまとまって強い集団を作ることが今の興味です

今後の展開

すでに障害者研究はいろいろな視点で始めています。

障害者研究と言ってもいろいろな学問分野があるので一概にこれをやるとはまだ決めていない状態です、、、

例えば、障害学、障害者福祉、精神病理学、精神分析、臨床心理学、労働法、歴史学、政治学、ジャーナリズム、生物学などなど。

とりあえず最近読んでよかった本をいくつかピックアップします。

かなり総花的に書いてしまったのでわかりづらかったと思います。

今後は一分野に絞って発見したことをわかりやすく書いていきます。

何か一緒に勉強したいという人がいましたらコメントなりで教えてください。よろしくお願い致します。


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