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ぺの
2024年4月27日 22:30
もうすぐかえります。春に還ります。春はすべてが孵ります。懐かしい声がしますね。誰の声でしょう。あなたの声でもありますね。もうすぐかえります。春が孵ります。すべてが還るときです。聞こえるでしょうか。あれが芽吹く音ですか。これがつぼみの開く音でしょう。もうすぐかえります。春の還りです。すべてが変わる春です。優しい音がしますね。水の音です。火の燃える音かもしれません。もうすぐかえ
2024年4月27日 22:24
二人の男が話している。「今年もこれで終わりか」「まだ夏だろ。もう年明け気分なの?」「違うよ、花火。もうすぐ終わっちまうなと思って」「いいじゃん、フィナーレ。豪華で」「終わりが華々しくてもな。後が虚しいだろ」 ロングのビール缶を足元に置く。 二人の男が話している。「お前最近、ちょっと世の中嫌いだよな」「なんだそれ」「厭世的っていうのかな。虚無主義的な」「
2024年4月27日 22:21
ずいぶんと冷静に発狂するようになった、と思う。以前は怒るにも、悲しむにも、思い出し笑いすら、脊髄反射だった。理屈も自意識も差し挟む余地なく、感情は己のうちから湧いて出るものだったはずだ。近頃ではそうした理屈抜きの感情を、ほとんど感じなくなってしまった。いや、感じてはいるのかもしれない、とわたしは鶏の骨を舐めながら考える。ふと我に返ったようにしか、認識できないのだ。たとえば、今、わたしはうんざりし
2024年4月27日 22:19
夕方だった。日はいつの間に暮れたのか、それともまだ山あいのどこかにいるのか、その姿は見えない。夜明け前にも似た薄藍の空に、かすかな朱の溶けた雲が残っている。それすらも徐々に生気を失い、今はまるで老衰を待つ猫のような色だけが満ちていた。光も影も存在をひそめた時間に、かれはただ座っている。風が吹き込んでくるのに合わせて、くすんだレースカーテンが開け放った窓に流れる。時おり体を撫でていく感触は、かれの
2024年4月27日 22:16
扇風機が回ったぬるい風が回ってここは南国の陽気昼下がりの窓とカーテン越しの光まだ少し眠いまどろむ前に少し息をする息を吐く脳裏に青空が浮かぶじんわりと眼球が痛む涙は出ないおやすみもなく境もなく真空に吸われるように温度のない夢へ滲む汗に鼓動が上がる背中が温かい湿った部屋着に扇風機の風が当たる濡れた肌をこする涼しくはないここは南国の
2024年4月27日 22:15
ノスタルジーを誘う看板ネオンの切れた出入口あせた光が射す朝の繁華街乾いた砂が風に巻き上げられて渋柿をかじった口の中みたいな痺れる瞼に安い色が躍る駄菓子の味を覚えていますか色違いのガム香りばかり違って実は全部同じ味いま食べたってコーラの味がするのに空の色を覚えていますか集めたカードやゲーム楽しいことがいっぱいで見上げる余裕もなかったいまは空