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Contents(上肢の筋)

理学・作業療法士や柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師を目指す学生さんを始めとして、医師・歯科医師を目指す学生さん、そしてすでに現場で働かれている医療従事者の方々にとって筋学は解剖学を学ぶ中でも重要な領域の1つだと考えます。それぞれの領域ごとに筋の起始・停止・作用・神経支配をまとめた表を追加しています。筋の表はただ単にまとめたものではなく、理学・作業療法師、看護師、柔道整復師、鍼灸師、はり師きゅう師、あん摩マッサージ師の過去全ての国試を分析しさらに解剖学の定期試験で問われやすいポイントを赤で表記しています。もはや全試験対応型の「虎の巻」です。まとめの表は知識の整理や試験直前の復習に、また、試験までもう時間がない!という学生さんの大きな味方になってくれるでしょう。
さらにオフラインでも学習できるようにダウンロード用PDFファイルも用意しました。PDFファイルは上肢の筋の説明スライド15枚(参考資料1枚追加)、上肢の筋に関する国家試験問題と解説(作業・理学療法士、看護師、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ師の過去問から合計100問)、上肢の筋に関する問題集と解説文、筋のまとめを搭載しています。上肢の筋をマスターしたいあなたへ圧倒的な構成内容でお届けします!


上肢帯の筋(三角筋、棘上筋、棘下筋、小円筋)

スライド1

上肢帯の骨は体幹の骨(脊柱)と自由上肢骨(上腕・前腕・手の骨)を繋げる役割を持ち、肩甲骨と鎖骨から構成されます。上肢帯の筋群は上肢帯から起始し、上腕骨に停止する6種類の筋を指します。上肢帯の筋は肩関節に対する作用が重要になるので、筋の走行と停止部をしっかりイメージ出来るようになりましょう。

[三角筋]上腕の屈曲、伸展、外転の主力筋で、肩甲棘や鎖骨から起始し、上腕骨外側面の三角筋粗面に停止します。起始部の違いによって前(鎖骨部)・中(肩峰部)・後部(肩甲棘部)に分類でき、前部は上腕の屈曲、内転、内旋作用を、中部は外転作用を、後部は伸展、内転、外旋作用を持ちます。神経は腋窩神経によって支配されます。腋窩神経は肩関節の脱臼によって障害を受けることがあり、腋窩神経が麻痺すると上腕の挙上がしにくい(あるいは出来ない)といった症状や、肩関節外側領域の皮膚感覚の麻痺が生じます(腋窩神経から枝分かれする上外側上腕皮神経が肩関節外側領域の皮膚感覚を支配しているためです)。
*上肢・上肢帯の筋群を支配する神経は全て腕神経叢(C5-C8、T1)に由来します。

[棘上筋]は肩甲骨棘上窩から起始し、上腕骨大結節の上部に停止する筋で上腕の外転作用(最初の15°程度まで)を持ちます。神経は棘下筋と同じ肩甲上神経によって支配されます。肩甲上神経麻痺はバレーボールやテニス、野球といった肩を回すスポーツで生じることがあり、肩を水平以上に上げられないといった症状が生じます(その際に痛みが少ないのが四十肩・五十肩と違う点です)。棘上筋は腱板(ローテーターカフ)を構成する4筋の中の1つです(後述)。

[棘下筋]は肩甲骨棘下窩から起始し、上腕骨大結節の中部に停止する筋で上腕の外旋作用を持ちます。棘下筋は腱板(ローテーターカフ)を構成する4筋の中の1つです(後述)。

[小円筋]は肩甲骨外側縁に起始し、上腕骨大結節の下部に停止する筋で上腕の外旋、内転作用を持ちます。支配神経は三角筋と同様で腋窩神経支配です。小円筋は腱板(ローテーターカフ)を構成する4筋の中の1つです(後述)。

上肢帯の筋(大円筋、肩甲下筋)

スライド2

[大円筋]は肩甲骨下角に起始し、上腕骨小結節稜に停止する筋で、上腕の内旋、内転、伸展作用を持ちます。神経支配は肩甲下神経支配です。停止部の小結節稜で思い出して欲しい筋が広背筋です。背部から上腕骨前面の小結節稜へ向かうという広背筋の走行パターンは大円筋と同様であることから、2筋の大きさや形は違いますが、広背筋は肩関節に対して大円筋と同様、内旋、内転、伸展作用を持ちます。大円筋と広背筋の作用はセットで一緒に覚えておきましょう。

[肩甲下筋]は肩甲骨肩甲下窩に起始し、上腕骨小結節に停止する筋で上腕の内旋作用を持ちます。神経支配は大円筋と同様の肩甲下神経によって支配を受けます。肩甲下筋は腱板(ローテーターカフ)を構成する4筋の中の1つです(後述)。
 
上肢帯の筋を6種類みてきましたが、この中で棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4筋の停止部は上腕骨を袖のように取り囲むことから、腱板(ローテーターカフ)と呼ばれます。腱板は上腕骨頭を肩関節の関節窩に押し付け肩関節を安定化させる重要な構造です。
肩関節の作用では特に内旋・外旋作用を持つ筋を混同しまいがちですが、簡単な法則がありますのでここで一度整理します。上記の6つの上肢帯の筋の中で、内旋作用を持つ筋は大円筋と肩甲下筋で、外旋作用を持つ筋は棘下筋と小円筋です。また、体幹の筋では大胸筋と広背筋が内旋作用を持ちます。これらの内旋と外旋に関わる筋の停止部に注目しましょう。大胸筋を除いて、上腕骨小結節(陵)に停止する筋は内旋作用を持ち、上腕骨大結節(陵)に停止する筋は外旋作用を持ちます。大胸筋は上腕骨前面を走行し上腕骨大結節稜に停止するため、内旋作用を持つので注意して覚えましょう。

上腕の屈筋(上腕二頭筋、烏口腕筋、上腕筋)

スライド3

続いて上腕の筋をみていきます。まずは上腕や前腕の屈曲作用を持つ上腕の屈筋群です。
上腕屈筋群は上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋の3種類存在し、全て腕神経叢の筋皮神経による支配を受けます。*上腕筋の神経支配に注意点あり
[上腕二頭筋]は名前の通り長頭と短頭の2つの頭を持つ筋で、長頭は肩甲骨の関節上結節から、短頭烏口突起から起始し、橈骨粗面に停止します。長頭の腱は結節間溝という大結節と小結節の間の溝を走行し肩関節の関節包内に入る点も押さえておきましょう。上腕二頭筋は上腕の屈曲作用の他に前腕の回外作用も持ちます。上腕二頭筋は前腕回外位での肘関節屈曲の主動筋となります。肘を曲げた状態で回外させると、肘では上腕二頭筋の停止腱が硬く緊張します。また上腕の筋腹(力こぶができるところ)を触ると、回外時に収縮(上昇)するので、回外作用を自ら確認することができます。体表から触れることができる筋群に関しては、実際に触って作用を確認しながら勉強していきましょう。また長頭は上腕の外転作用、短頭は上腕の内転作用を持っており、長頭と短頭が共に作用すると上腕は屈曲します。

[烏口腕筋]は肩甲骨の烏口突起に起始し、上腕骨の内側に停止します。烏口腕筋の作用は上腕の屈曲、内転作用を持ちます。上腕屈筋を支配する筋皮神経は、腕神経叢から分かれた後、烏口腕筋を貫くという走行上の特徴を持ちますのでそれも覚えておきましょう。

[上腕筋]は上腕骨下部の前面に起始し、尺骨の尺骨粗面に停止します。上腕二頭筋の腱は肘を曲げた状態で回外させると鋭い腱が確認できますが、前腕を回内させて肘を屈曲させた際に上腕二頭筋の腱の奥で緊張する筋が上腕筋です。上腕筋は回内位での肘関節屈曲の主動筋です。上腕筋の神経支配で1つ注意点があります。他の上腕屈筋群と同様に筋皮神経による支配を受けますが、上腕筋の外側領域は橈骨神経の支配を受けるので二重の神経支配を受ける筋となります。

上腕の伸筋(上腕三頭筋、肘筋)

スライド4

次は上腕の後面にある伸筋をみていきます。上腕の伸筋は上腕三頭筋と肘筋の2種類で橈骨神経により支配を受けますが、今後みていく前腕の伸筋も全て橈骨神経支配ですので、上腕と前腕の伸筋は全て橈骨神経支配とまとめて覚えましょう。

[上腕三頭筋]は名前の通り3つの頭を持つ筋で、長頭は関節下結節、外側頭は橈骨神経溝の上と外側上腕筋間中隔、内側頭は橈骨神経溝の下と内側上腕筋間中隔から起始し、尺骨の肘頭に停止します。橈骨神経溝のおおよその位置を黒の点線で示しています。長頭の起始は上腕二頭筋の長頭の起始である関節上結節と混同しやすいので注意しましょう。上腕三頭筋は肩関節と肘関節を間に含むので(二関節筋といいます)、上腕と前腕に対する作用を持ちます。前腕に対しては伸展作用上腕に対しては伸展作用の他に内転作用を持ちます。ここで内側・外側腋窩隙という空間についてふれておきます。上腕三頭筋長頭を小円筋と大円筋が挟んでいますが、上腕骨・長頭・小円筋・大円筋で囲まれる四角の空間(青の点線)を外側腋窩隙、長頭・小円筋・大円筋で囲まれる三角の空間(緑の点線)を内側腋窩隙といいます。これらの空間を何が走行するのか?というのが重要になります。四角の外側腋窩隙を腋窩神経と後上腕回旋動脈が走行し、三角の内側腋窩隙を肩甲回旋動脈が走行します。

[肘筋]は外側上顆から起始し尺骨後面に停止する筋で前腕の伸展補助として作用する筋です。肘筋は名前と作用を知っていれば十分でしょう。

-腋窩の構成について-
わきの下の空間を腋窩といいますが、腋窩を構成する壁についてまとめていきます。腋窩は、前壁、後壁、内側壁、外側壁によって囲まれ筋と骨によって構成されます。
 前壁:大胸筋、小胸筋
 後壁:肩甲下筋、大円筋、広背筋
 内側壁:前鋸筋
 外側壁:烏口腕筋、上腕二頭筋短頭、上腕骨
以上が腋窩の壁を作ります。試験によく出てくる内容なのでしっかり覚えましょう。上腕の最後に肩関節運動と関連する筋群についてまとめます。整理して覚えていきましょう。
屈曲:三角筋の前部、大胸筋、上腕二頭筋長頭+短頭、烏口腕筋
伸展:三角筋の後部、広背筋、大円筋、上腕三頭筋
外転:棘上筋、三角筋の中部、上腕二頭筋長頭
内転:大胸筋、広背筋、三角筋の前・後部、小円筋、大円筋、上腕二頭筋短頭、烏口腕筋、上腕三頭筋
外旋:三角筋の後部、棘下筋、小円筋
内旋:大胸筋、広背筋、三角筋の前部、大円筋、肩甲下筋
水平屈曲(水平内転):大胸筋、三角筋の前部、肩甲下筋、烏口腕筋
水平伸展(水平外転):三角筋の中部・後部、棘下筋、小円筋
*スライドの作用に載せていませんが、肩関節を90°外転した状態で腕を内側に移動させる運動を水平屈曲(水平内転)、逆に腕を外側に移動させる運動を水平伸展(水平外転)といいます。

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