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MELODY&NUTS #4 FAKE FUR

取引の時間は0時
バーを出た俺とナッツは裏通りにある
ゲイバーHERO'Sの二階にある
金貸し屋に向かった

二つ通りを進み交差点を曲がった瞬間
派手なコートを着た女とぶつかった
甘い香水の香りがひどく
くしゃみが出そうになったが
急いでいて申し訳ないと一言伝えて
その場を立ち去った

裏通りに入りHERO'Sの外階段を上がった
表札も何もなく錆び付いた
冷たくて重い鉄のドアを開けると
廊下に等間隔で3枚のカーテンがある

カーテンを抜けると
パチンコ屋の換金所さながらのカウンターがあり
覗き窓がスッと開いた

『おやっナッツとメロじゃないか
 ウチに何のようだい?
 金なら貸さないよ』
開口一番嫌みったらしく突き放してきたのが
ゼニゲ婆こと中国人二世のリー
先代から続く貸金稼業で財を得た
この街の裏資金を一手に引き受ける顔役だ

『すぐに返すから100万円キャッシュで
 用意してくれないか?』
ナッツが切り込んだ
『おたくのボスに借りればいいじゃないか?
 ウチは高いよ やめときな』
『ボスには借りられないんだ
 リーなんとかしてくれ』
『何でボスには借りられないんだい?
 ますます怪しいね』

俺とナッツにはボスにHIGHを仕入れた際の
借金がまだあった
それをリーに正直に話したところで
貸してくれそうもない状況なのはわかっている
だが当てはここしかない
困った状況だ

『メロあんた臭いね
 女の臭いがするよ
 どうせ何も考えもしないで
 女に貢いだんだろ?』

さっきの女だ!
ぶつかった拍子に香水の臭いが付いたのか

『ただじゃあ貸さないよ
 条件がある
 10日間できっちり
 150万円返せるかい?
 もし返せない時は
 返せるまで
 タダで取り立ての仕事を手伝ってもらうよ』

心理戦でゼニゲ婆には勝てない
勘違いをしているが好都合
俺とナッツは言った

『リー稼がせてやるよ』

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