見出し画像

走る。

日々はゆっくりと流れていて、
あぁ、早く春が来ないかなぁとか、
早く夏が過ぎないかなぁとか、
色々思うわけですが、
実は僕たちが思うよりうんと早く、
季節は走っている。
と、そういうわけなんです。

すでにもう、
米を収穫してしまった農家さんは
たくさんいるし、

そしてその畔には、
秋草のノビルがたくさん花を咲かせている。

同じように、ついこの間花を咲かせていた
栗の木も、ひっそりとイガグリを
落としている。

流行の最先端という言葉がある。
毎年思うのは、季節の最先端を行くのは、
いつだって草木や虫たち。

いつも自分が、前の季節の気分のまま
だったということに気づかされる。

毎日、いろんなことに気づかされるのが、
生きてることなのかもしれない。



知り合いの74才の男性が入院した。
SNSを操り、このご時世でも元気に
役者活動していた彼。

その彼に高熱がでて入院した。
検査では陰性と出たものの、
大事をとってしばらく入院するそうだ。

固形物が食べづらいので、
牛乳と、味噌汁と、お茶が出されたらしく、
ベットの上でおなかたぷたぷ、とこぼしていた。

春の啓蟄には、虫が這い出して来ることは
とっくの昔から決まっているし、
米が実ったら収穫することも、
僕たちのご先祖が何万回と繰り返してきた。
ノビルが咲いたのは、栗が実るのは、
いったい何度繰り返してきたんだろう。
何万回じゃ済まないかもしれない。

季節が走ることも、
病にかかることも、
年をとることも、
太古の昔から決まっていて、
その決まっていることを、
僕たちはなぞっている。

ちゃくちゃくと、
ちゃんと、太古の昔から決まった通りに、
花を咲かせ実らせ、
土から這い出してくる自然は、
とても慎ましい。

最初から決まっていた、
病にかかることや、
老いること、
死ぬこと。
その流れは、とても自然なこと。
逆に言えば、僕らが病に臥せることは、
当たり前なのかもしれない。

季節は走って、
僕らは死ぬ。
だから今日も、風がきれい。

もしサポートして頂けた暁には、 幸せな酒を買ってあなたの幸せを願って幸せに酒を飲みます。