AIが台頭すればするほど、人間の「心」が重要になるという話
最近、驚くほど精度の高いAIツールが、立て続けに話題になりました。
クオリティの高い画像を生成できる「Midjourney」や、テキストを読み込んで精度の高い回答を生成する「ChatGPT」などです。
これらのツールを使うと、人間が数時間かけてつくったのと遜色ないレベルのアウトプットが、ほんの数秒で生み出せてしまいます。
あまりのクオリティの高さに、ちょっと怖くなった人も多いのではないでしょうか?
イラストレーターやデザイナー、ライターやコンサルタントのような仕事が、今後はAIに取って代わられるかもしれない。
もちろん、著作権や安全性など、クリアすべき問題はまだまだあるでしょう。ただ、大きな流れとしてのAIの進化は、もはや止められません。
スマホが普及したときと同じように、どんなに止めようとしても、10年後にはおそらく「AIなしでは成り立たない生活」になっている。
そんな世界を見据えたとき、いま僕らがやるべきことって、一体なんなのか?
どんなにAIが進化しても、僕ら人間にしかできないことは、果たしてあるのか?
これを機に、改めて考えてみました。「AIって流行ってるけど、実際よくわからん」という人や、将来のキャリアに不安を感じている人にとって、少しでもヒントになればうれしいです!
文の要約も、図解も、思考も、プログラミングもできるAI
ChatGPTで具体的になにができるかというと、こんな感じです。
・プログラムのバグを見つけてもらう
・英文を添削してもらう
・文章をわかりやすくしてもらう
・イベントの企画案を考えてもらう
・SEOツールとして使う
・記事構成を考えてもらう
・文章を図解してもらう
・謝罪のメール文章を考えてもらう
・人生相談する
etc…(下記noteで使用例をまとめてくださってたので、ぜひ。)
つまり、かなりなんでもできるわけです。
プログラミングやSEOなど、特定の分野について深く学習させることもできます。
こちらの記事では『ぼっち・ざ・ろっく』についての知識をAIに学習させていました。同じように、たとえばプログラミングの専門書を何冊か学習させれば、一瞬で「プログラミングに詳しい人の脳」が完成してしまうわけです。
実際に使ってみたほうが早いと思うので、ぜひ試してみてください。
上記リンク先からアカウント登録をすれば、無料ですぐに使えます。英語のほうが返答の精度は高いですが、日本語でも問題なく使えます。英語で使いたいときは「DeepL」という翻訳ツールがおすすめですよ。
AIの進化から目をそらしてはいけない
ChatGPTに使われているのは「GPT-3」というAI技術です。
数年前までは「GPT-2」といって、ひとつ古いバージョンでした。実はこのバージョンのときは、今とは比べ物にならないぐらい精度が低くて、全然使えなかったんです。
それがこの数年で「GPT-3」に進化して、かなりいろんなことに使えるようになりました。そして、今年か来年にはさらに進化したバージョン「GPT-4」がリリースされると言われています。
GPT-2からGPT-3へのアップデートの差分は、破壊的なものでした。それと同じか、それ以上の進化が、もうすぐ起きようとしているわけです。
そうなればいよいよ、AIが人類の脳を超える「シンギュラリティ」が起こるかもしれません。
これまでのAIブームのときも「人間の仕事がAIに奪われる」とは言われていました。その波が、近いうちに本格的にやってくると思います。
AIはどのように「考えて」いるのか?
最近のAIのなにがすごいかというと「考える」ことができている(ように見える)ことです。
これまで「考える」ことは、人間にしかできない分野のように思われてきました。しかし、最近はそれすらもAIができるようになりつつある。たとえばこんな感じです。
感想文や記事構成を、AIが「考えて」いるように見えます。このような回答は、いったいどういう仕組みで生成されているのでしょうか?
超ざっくりまとめるとこんな感じです。
つまりAIが考えてくれる答えは「ネット上の膨大なデータのなかで、ヒトにとって最も正解である確率が高いもの」というわけです。
そのためいまのChatGPTの性能だと、ネット上に正しい情報が少ないニッチな分野などについては、正確な回答が返ってこないことがあります。
逆に、どれだけ複雑でも、確率統計の処理で答えを出せるものであれば、かなり正確に回答できる。
いまの技術ではまだ不完全ですが、GPT-4が出てくれば「情報やデータを分析して最適解を導きだす」ことに関しては、人間よりむしろAIのほうが精度が高くなっていくでしょう。
具体的にいうと、このAIの進化によって代替されうる仕事としては、次のようなものが考えられます。
・ネットや本に載っている情報をまとめただけの資料づくり
・それっぽいデザインやイラスト、ウェブサイトなどの作成
逆に、次のような仕事は、当面のあいだAIには代替されないでしょう。
・革新的なビジネススキームの提案や、その実行のための交渉
・人の感情に強く訴えたり、たくさんの人に支持される文章
・クライアントの思想や個性を落とし込んだデザイン
・オリジナルの世界観やストーリーのある、作品やイラスト
ChatGPTの裏側を解説した記事もあったので、興味のある方は読んでみるといいかもです。
AIによって、これまでの仕事の価値が大きく揺らぐかもしれない。
じゃあ、これからのビジネスパーソンは、どの方向にスキルを伸ばしていけばいいのか? 今のうちにじっくり考えておくことが、とても重要ですよね。
そこでここからは、AI時代の「必須スキル」になりそうな3つの能力について解説していきます。
①AIツールを使って、仕事の質を上げるスキル
まず、短期的にはもちろん「各種AIツールを使いこなすスキル」を上げていくことが大切です。
たとえば、ウェブ編集者がChatGPTを使うとしたら、まずはAIに「イケてる記事」を大量に学習させるといいでしょう。反響の大きい記事やクオリティの高い記事を選んで読み込ませ、いいタイトルや見出し、構成などの情報を覚えてもらう。
そうすると「編集やライティングのセンスがある脳」ができあがります。
その状態にすれば、AIをまるで「編集アシスタント」のように活用できるようになります。
「この記事、どんな構成にするといいと思う?」など、ちょっと雑な問いでも答えてくれます。「タイトル案を10個出して」「この文章に小見出しをつけて」といった使い方もできる。もちろん、文字起こしや要約などもやってくれます。
このようにAIを使いこなせる人は、仕事の品質とスピードが鬼のように向上していくでしょう。
その結果として、AIが使えない人や、コモディティなスキルしかない人には、仕事がまわってこなくなる。
そういう時代がくることは、容易に想像できますよね。
AIが使えることは、WordやExcelを使えることと同じレベルで、社会人にとっての必須スキルになっていきそうです。
しかし、①は割と早い段階でコモディティ化していく
ただし、AIのスキルさえ身につけていれば安心……というわけではありません。
AIを使うスキルすらも、あっという間にコモディティ化していく可能性が高いからです。
30年前と今を比べると「コンピュータを使える人の数」って爆発的に増えましたよね。それに近いことが、AIでも起こるでしょう。
AIを使うテクニック的スキルがあれば、短期的に有利にはなります。でも、長期的な優位性にはならないのです。
では、他にどんなスキルを身につければいいのか?
それは「構想力」と「マネジメント力」だと思います。
「そもそも、AIでなにをしたいのか?」「どんな未来を実現したいのか?」を思い描く、構想力。そして、その構想を実行するため、オンラインとリアルを横断しながらいろんなステークホルダーをつないでいく、マネジメント力。
この2つは、どんなにAIが進化しても、社会が変わっても、ずっと必要とされ続けるスキルだと思います。
②様々なスキルを統合する、マネジメント力
まずは「マネジメント力」についてです。
AIツール「A」と、AIツール「B」、あとは人間の「C」さんのスキルを借りて、ひとつの大きな成果を出す。そうやって、バラバラのスキルを統合する力。AI時代には、これがますます重要になります。
たとえば、僕の会社では「スタートアップファクトリー」といって、新規事業の立ち上げに特化した事業をやっています。
事業立ち上げで考えると「この事業を実現するには、どんな壁があるか?」「その壁を突破するには、なにが必要か?」といったことは、AIが教えてくれるわけです。
試しに、最近リサーチ中の「再生医療ビジネス」の立ち上げについて、ChatGPTに質問してみたら、こんな回答が返ってきました。
さらに、課題1の解決策について聞いてみると、こんな回答が。
このように「正しい」回答は、AIがほんの数秒で考えてくれます。
でも、課題や解決策がわかったからといって、すぐに事業ができるわけではないですよね。「じゃあ、実際、どうやってそれを実行するねん」という話になるわけです。
協力してくれそうな人にアポをとったり、投資家や関係各所と交渉したりして、いろんなスキルやパワーを集結させていく。
その調整力や統合力がないと、AIによる正しい答えも「机上の空論」で終わってしまいます。
それに、AIが分析できるのは今のところ「ネット上にあるデータ」だけです。
「あの人には、こういう言い方のほうが伝わるだろうな」とか「あの人は確か朝型だから、メールを送るタイミングは今じゃないな」といったリアルな情報は、人間しかわからない。
これって、営業や交渉をするうえではかなり重要ですよね。
そういった「オフラインのデータ」の価値も、今後はより高くなっていくと思います。
③実現可能な未来図を描く、構想力
もうひとつ大切なのが「構想力」です。
たとえば「抜け道」的な答えを探すことは、AI頼みではなかなかできないでしょう。さきほど「再生医療ビジネスの課題は?」という質問に、AIはいくつか回答を挙げていました。
でも実際に事業をやるときは、それらの課題を真正面からクリアしようとはしません。なるべく課題が課題じゃなくなるようなニッチな市場を探すことが大事です。
それに、AIの出す答えは「与えられたデータの範囲内で、最も正しい確率が高いもの」です。でも、実際は「60%の確率で正しいもの」ではなく「10%の確率で正しいもの」を選ぶのが、一番いいこともあります。
さきほど「課題の解決策」もAIに考えてもらいました。
しかし、僕らが実際につくった再生医療ビジネスの事業構想では、別の解決策を想定しています。なるべく自己資金だけで、きちんと利益を出しながら、研究を加速できるような構想を設計しました。
もちろんまだテストマーケの段階なので、ここからどんどん変わっていく予定です。ただ、このような構想をゼロから描くことは、AIには難しいと思います。
AIは質問さえすれば正しい答えを教えてくれますが、そもそも「最初の問いの設定」は、人間がやらないといけません。
単純なアウトプットなら、AIがやってくれる。それらをいかに集めて、価値ある構想をつくり出すのか。これを突き詰めていくと、けっきょく「生き方」の問題になってくるんです。
自分はどういうことがしたいのか。
どういうことに興味を持って、なぜこの仕事をしているのか。
それがないと、そもそも「最初の問い」を設定できない。AIがあっても、おそらく使いこなせません。やりたいことの軸がないまま”正しい情報”だけが増えていけば、もう何がなんだかわからなくなってしまうでしょう。
「心」だけは、コンピューターにも作れない
ここまで「スキル」の話をしてきましたが、スキルを身につけることが「目的」になってはいけません。スキルなんて、必要に迫られたら勝手に身につくもの。
「こんなことがしたい!」という感情をもてるかどうかが、いちばん大切です。
AIが進歩すればするほど、最終的に人間に残るのは「心」だけになります。
たとえ医療の技術が発展して、人間の体をゼロから生み出せるようになったとしても、「心」だけは再現できない。それぐらい、人間に通っている「心」の仕組みは、まだ全然解明されていないんです。
だからやっぱり最後に残るのは「心」だけになっていくのだと思います。
意思をもって「最初の問い」を投げかけること。
AIがあげてきた案を「心」で判断すること。
やると決めたら、プロセスを楽しみながら実行すること。
これらが、AI時代における人間の役割になるでしょう。「こっちのほうが面白そう」「こっちのほうがグッとくる」という、真善美的なものがますます大切になっていくと思います。
自分のなかの「子ども心」がワクワクするものは?
でも「ワクワクすることが大事だ」「楽しめ」なんて、急に言われても困ってしまう人も多いのではないでしょうか。
ワクワクを感じるセンサーは、大人になるにつれて多くの人が失ってしまっているものです。子どものころはみんな備わっているのに、どんどん錆びてしまってる。
これからの数年は、その錆びを回復する期間にするといいと思います。
大人のセンサーが錆びてしまうのは「どうせ自分にはできない」とか「仕事につながらない」「お金にならないから無理だ」みたいな「無意識のブレーキ」をかけているからです。
それを取り払ったとき、自分が本当にワクワクするものはなにか?
子どもの頃に好きだったものを振り返ったり、昔からずっと続けられていることはないか考えてみると、ヒントが見つかるかもしれません。
ちなみにですが、僕は「世界の真理」みたいなものを感じると、すごくワクワクします。最近よかったのはこの本です。
宇宙とカタツムリの形が同じだったり、密着した泡の形とハチの巣の形が同じだったり……そういう、自然にできる「パターン」の写真がいろいろ載っていて。
遺伝子的にはまったく異なるものに、不思議な共通点がある。それを知ると「この世界には、まだ科学で解明されていない、大きな真理があるのかも!」と感じて、めちゃくちゃワクワクするんですよね。
あとは、作戦を考えるのも好きです。学生のときは、勉強は嫌いだったのに「勉強法」だけはやたら調べて、それで満足してるタイプでした。笑
新しい技術について知るのも好きです。大学生のときに第一次AIブームがきて「こんなすごいものがあるのか!」と感動して、独学で勉強しました。
世の中をいい方向に動かせて、大きな構想を描けて、新しい技術にも触れられる。そういうものを探した結果「ディープテック」という分野にたどり着いて、いま事業開発をやっています。
最初から「ビジネスにつなげよう」と思っていたわけではありません。でも結果的に、こういう自分の特性を生かした仕事ができている。おかげで、いまはけっこう楽しく働けています。
AIの奴隷になるか、人間らしく生きるか
AIはこれから、ますます進化していくでしょう。最近「AIがAIと会話する動画」も話題になりました。
こんなふうに、人がAIを使うだけでなく、AIどうしがお互いの情報を交換しあって、知能を高め合っていく。ものすごいスピードと質で、ロジカルな意見や正しい知識が生み出されていくことになります。
そうなったらやっぱり、自分にしかないオリジナルな視点をもつことや、ロジックを超えた「心」による意思決定をすることが、ますます重要になっていくはずです。
同時に、だんだん「この仕事は、人がやらなくても大丈夫だね」ということも増えてくるでしょう。AIがいろんな仕事を代替してくれて、最終的には人間が動かなくても、社会がちゃんと回るようになる。
「働かなくていいなんて、最高じゃん!」と思うかもしれません。
でも、よく考えたら「なにもしなくていいし、特にやりたいこともない」って、しんどいと思いませんか?
YouTubeとNetflixをなんとなく流して、UberEatsで頼んだごはんを食べるだけ、みたいな感じ。数日なら楽しいですが、半年もそれが続いたら、生きる意味がわからなくなって、つらくなってくる人も多いと思います。
仕事をしていれば、毎日少なからず誰かに喜んでもらったり、役に立ったりすることができます。でも、今後はそれが、どんどんなくなっていくかもしれない。
それは「生きる意味」を、自分で考え出さないといけなくなるということです。
AIが人間にとって「仕事を奪う脅威」になるのか、それとも、未来をもっとおもしろくしてくれる「便利なツール」になるのか。
それは、僕らの「心」次第です。
個人的にはこのAIブームをポジティブに捉えて、ワクワクを原動力にして人間らしく生きる人が、もっともっと増えていけばいいなと思っています!
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