木村

好き:泉鏡花、お化け、ホラー映画、南の島、料理   嫌い:パクチー、生魚

木村

好き:泉鏡花、お化け、ホラー映画、南の島、料理   嫌い:パクチー、生魚

最近の記事

分からない「曲名」

てれれってれれ~♪という印象的なシンセのリードで始まる70年代後半のディスコティックがあって、頭の中で再生できるけれども曲名が分からない。 ある日、週に1,2回お昼を食べに行くお店で流れているではないか。  丁度お店に入った時に「ヴーレ・ヴー」が流れていて、その次もABBAの曲だったので恐らくABBAの楽曲で間違いなかろうと、社に戻ってから検索したら「ギミー!ギミー!ギミー!」だった。 そんな感じで「分からない曲名」がいくつかある、というのはみなさんにもおありでしょう。 ■

    • 米を食う日本人、「眉隠しの霊」から

      泉鏡花の作品「眉かくしの霊」は、鏡花の友人が奈良井宿のとある旅籠で怪異に出会う話。登場する鶫鍋の描写に食欲をそそられるが、鏡花はお化けや人情だけでなく、食べ物のことも上手に書く作家だと思う。その冒頭に引用された「木曽街道膝栗毛」には、日暮れて奈良井で投宿する弥次郎兵衛と喜多八が晩飯に出てきたそばを食べて「なに、もうねえのか、たった二ぜんずつ食ったものを、つまらねえ、これじゃあ食いたりねえ。」 「はたごが安いも凄まじい。二はいばかり食っていられるものか。」「馬鹿なつらな、銭は出

      • 泉鏡花作品を読んでみましょう

        鏡花読者を増やしたい、増やして話をしたい。「やぁ人参と干瓢ばかりだ!」なんて言ってみたい。 そんなわけで、ちょっとそこのあなた、泉鏡花読んでみなさいよ。でもいきなり「婦系図」や「日本橋」だと挫折するに決まっているから、「高野聖」か「眉隠しの霊」の2篇が良いと思いますよ。お化けが好きならなおさらですがね。 「高野聖」は語り手が真冬の列車で出会う高僧から、若き日の盛夏に飛騨越えをする話を聴くという体裁。後半、その話の中に登場する親爺が昔語りをするという3重の入れ子構造が災いして、

        • キッチュな観光映画「007は二度死ぬ(You Only Live Twice)」

          「007は二度死ぬ(You Only Live Twice)」(ルイス・ギルバート監督 1967)今観ると相当に女性蔑視である。が、今回はそこに言及しない。好きな謎ポイントをいくつか・・・。1.ボンドは冒頭に偽装ではあるが死ぬ。だけれどもそれだけなのになぜこのタイトルなのでしょう、誰か教えて。 2.ボンドが銀座の路地を抜けるたびに、着物姿の女性エージェントがクラッチバッグに仕込んだ通信機で「彼が通りました、今通りました」みたいな報告をする。 3.アキ(若林英子)はわざと逃げる

        分からない「曲名」

          光速を超えるのではなく、エントロピーを減らす「TENET」

          自身の乏しいSF知識によれば、時間旅行の仕組みはこうだった。 未来へ行く:放っておいても刻々と時は流れ自身が過ごした分確実に未来へ進むのだが、もっと早く未来へ行くならば、自身が高速で移動することで相対的に自身以外の運動系はゆっくりと時間が進むこととなり、短い時間で未来へ行くことができる。 過去へ行く:光速を超えるならば、その運動系から降り立った時に周りは過去にさかのぼっている。 実際には「光速度不変の原理」により不可能なのだが、これを視覚的にわかりやすく装置にしてみせたのがバ

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          これぞカタルシス!見事なミステリー「ロストボディ」

          最後まで犯人が分からない、そして最後の数分ですべての謎が氷解すると言うのが見事なミステリーであろう。謎解きが複雑すぎると観ている者は鼻白むわけで、謎すなわち動機と過程はシンプルなほど良い。これは良い手品ほど種や仕掛けが拍子抜けするほど簡単なことに似ている、と筆者は思う。優れたミステリーにネタばらしすることほど無粋な行為は無いのであらすじを書いたりはしないが、この駄文をたまさか読んで、よし観てみようと興味喚起されるならば本望なので、ちょっとだけ。ホセ・コロナド演ずる主人公がいか

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          期せずして「コンチキ号」と化したヨットで漂う4人のむくつけき男たち。

          ノルウェーの人類学者ハイエルダールが1947年4月にバルサで組んだいかだでペルーを出発した。いかだと言っても全長14m全幅5.5mの堂々とした大きさだし、小屋や帆を備えた立派なものだ。これでもって人類がどうやって太平洋の島々に展開していったのかを実証したかったのだ。現在ではポリネシア人はアジアのあたりから航海してきたと言う説が主流のようだが、「コンチキ号漂流記」は楽しい冒険譚でしかも実際にあったノンフィクションとして小学生の私を夢中せしめた。 昨日観た「アバンダンド 太平洋デ

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          ビデオゲーム的構造の快作「ハッピー・デス・デイ」は素敵な青春ホラー

          本作「ハッピー・デス・デイ(原題同じ)」(クリストファー・B・ランドン監督、2017年)で最も素晴らしいところは、スクールカーストのトップ、アメリカ映画でもその構造がよく取り上げられるジョックスに属する女の子を主人公に据えたことだ。ジョックスと言えば間抜けな目にあったり、酷い目に合うのであって、ここは虐げられる側のナードが特殊能力を手にしたりして活躍するのが常套なのだけど、まぁ本作で男の子が活躍はするけれどもあくまでもその働きはアシスタントとしてだ。しかしながらジョックスたる

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          「グラン・トリノ」に狼男のエキスを注入してみたら・・・名作誕生

          老いたベトナム帰還兵のイメージと言えば偏屈で人嫌い、信念をもって行動し脅しには屈しない。これはクリント・イーストウッドのグラン・トリノによるところが大きいのだけれど、80年代の帰還兵ならばスタローン「ランボー」だろう。ベトナム戦争にアメリカが本格的に介入したいわゆる北爆が1965年で、アメリカの全面撤退が1973年だからランボーが仮にこの最後の年にベトナムにいたということにすると、映画の舞台1982年はおおよそ10年後と考えて辻褄も合うものの、この時スタローン36歳であるから

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          B級感ふんぷんの邦題に騙されることなかれ。「ブラックフット 羆地獄」は傑作なり。

          吉村昭の名著「羆嵐」をご存知だろうか。大正時代に三毛別で実際に起きた羆害を元にした小説だ。氏の真骨頂である、緻密な取材に基づいた抑えた筆致の、それ故に背筋の凍るような話なのだ。世に羆ジャンルと言う物はさほど存在しないだろうが、今作「ブラックフット 熊地獄」は羆嵐の向こうを張る傑作だと僕は思う。邦題のB級感に騙されてはいけない(原題はBACK COUNTRY)、羆モノとして名高いグリズリーなんて卵ボーロ並みに甘ちゃんだ。余り書くとネタバレになってしまうので控えるが、尺の2/3は

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          そして誰もいなくなった、映画「ロッジ」の出だしは良し。

          1872年にアゾレス諸島沖を漂流しているところを発見された帆船は、乗り込んでみたら全くの無人で、船室の中は争った形跡も無いどころか、テーブルの上にはまだ温かな料理とお茶が載っていたとか。これが世に言うマリー・セレスト号事件で、私が小松左京の名作短編「霧が晴れたら」内での引用で知ったのは中学生のころだった。このロッジ(トラビス・オーツ監督2014年)はマリー・セレスト号事件をモチーフにしていると思しき序段は素晴らしいのだが、後半はどうだろう?唯心論を浅く取り入れた様な展開は大い

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          ラヴクラフト好きなら観るべし。「アルカディア」は「ミスト」を超えたか?

          ラヴクラフトのクトゥルフ神話を引用した作品は数あれど、構造や設定をしっかりと組み込んだ映画となれば西の横綱「ミスト」(フランク・ダラボン2007年)東の横綱「崖の上のポニョ」(宮崎駿2008年)をおいてほかになかろう。「なかろう」と言ったのは単に私がクトゥルフ神話に明るくないからだ。何かしらの理由で垣根が壊れて異界のなにかが現世にあふれ出てくるというのが基本で、前者は軍が行った異界を覗く窓実験が暴走した結果百鬼夜行が現出、後者の場合は異界=海としており、きっかけはポニョの脱走

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