米を食う日本人、「眉隠しの霊」から
泉鏡花の作品「眉かくしの霊」は、鏡花の友人が奈良井宿のとある旅籠で怪異に出会う話。登場する鶫鍋の描写に食欲をそそられるが、鏡花はお化けや人情だけでなく、食べ物のことも上手に書く作家だと思う。その冒頭に引用された「木曽街道膝栗毛」には、日暮れて奈良井で投宿する弥次郎兵衛と喜多八が晩飯に出てきたそばを食べて「なに、もうねえのか、たった二ぜんずつ食ったものを、つまらねえ、これじゃあ食いたりねえ。」 「はたごが安いも凄まじい。二はいばかり食っていられるものか。」「馬鹿なつらな、銭は出