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泉鏡花作品を読んでみましょう

鏡花読者を増やしたい、増やして話をしたい。「やぁ人参と干瓢ばかりだ!」なんて言ってみたい。
そんなわけで、ちょっとそこのあなた、泉鏡花読んでみなさいよ。でもいきなり「婦系図」や「日本橋」だと挫折するに決まっているから、「高野聖」か「眉隠しの霊」の2篇が良いと思いますよ。お化けが好きならなおさらですがね。
「高野聖」は語り手が真冬の列車で出会う高僧から、若き日の盛夏に飛騨越えをする話を聴くという体裁。後半、その話の中に登場する親爺が昔語りをするという3重の入れ子構造が災いして、一体どこを読んでいるのかあやしくなってくるのだが、これが独特の美文調とともに一種幻惑するような魅力を発揮する。そして何と言っても「高野聖」と云えば、魅力的な(肉感的な)年増の妖怪である。本当のところ妖怪なのか人なのかわからないのだが、妙な神通力を有した美女が若き日の高僧を癒しもてなす。彼はこの直前に聴くもおぞましい目に遭っており、その惨憺たる体験があるがゆえにこの癒しのシーンが効果をもたらす。

「眉隠しの霊」は初冬に奈良井宿を訪れた主人公が投宿先の料理人から話を聴くという入れ子構造
奈良井宿に行く前に知己である画家に馴染みの宿があってそこに良い娘がいるからと言われ出掛けたがひどい目に遭う、その後この宿に投宿して癒しを受ける。やはりひどい目にあった後の癒しである。
魅力的な(ちょっと怖い)女の幽霊や、何度も出てくる鶫(つぐみ)料理の数々が美味そう。女の幽霊と書いたが、桔梗が池の奥様、と呼ばれる神さまだか妖怪だかが居て、読んでいるとどっちなのか分からなくなってくる。

どうです?ちょっとは興味が湧いたでしょう?「高野聖」の美女は伊藤歩、「眉隠しの霊」の幽霊は北川景子で誰か映画化しないかなぁ。

あらすじを書いてしまえば大したことは無いのだが、舞台装置が素晴らしいし、そしてその装置とは(やや)読み辛い鏡花の文体にほかならない。

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