光速を超えるのではなく、エントロピーを減らす「TENET」

自身の乏しいSF知識によれば、時間旅行の仕組みはこうだった。
未来へ行く:放っておいても刻々と時は流れ自身が過ごした分確実に未来へ進むのだが、もっと早く未来へ行くならば、自身が高速で移動することで相対的に自身以外の運動系はゆっくりと時間が進むこととなり、短い時間で未来へ行くことができる。
過去へ行く:光速を超えるならば、その運動系から降り立った時に周りは過去にさかのぼっている。
実際には「光速度不変の原理」により不可能なのだが、これを視覚的にわかりやすく装置にしてみせたのがバック トゥ ザ フューチャーに出てくるタイムマシーン「デロリアン」だろう。

宇宙戦艦ヤマトなんかに出てくる「ワープ航法」だって広義のタイムマシーンで、本来なら例え光速で飛行しても何万年もかかる距離を数分で超えるのは、先に述べた未来へ行く話と同じだ。リアリズムを突き詰めると光速の99%を巡航速度とするヤマトにとっての一年は地球を含む外の系の22年以上になるからとてもじゃないが地球を防衛することはできない(はず)。

クリストファー・ノーランの最新作「TENET」の骨格をなす時間旅行の仕組みは、それではなくてエントロピーの増減をコントロールすることにある。香水瓶の蓋を開け放しておくと時間の経過とともに中身が蒸散して、瓶の中は空っぽになるが、いわばこれが「エントロピーが増加」すること。では蒸散してしまった香水瓶の中身がしばらくしたら元に戻って瓶の中に納まったらどうだろう?こんなことは起こりえないけれども人為的に「エントロピーを減少させる」ことに成功したらどうなる? これによって時間の流れは逆向きになって過去へ進むことができる!と言うものだ。この方式の面白いところは1時間前の状態にたどり着くまでにはきっちり1時間かかるし、例えば20年前に別れたあの人にもう一度会いたいなら20年またなきゃならない。

これを映画館で体験しない手はない、でしょう?


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