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【英論抄読】口頭指示は運動恐怖を消滅させる?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

言語による指示は運動関連痛の恐怖を消滅させることができる

Maeda Y, Kan S, Fujino Y, Shibata M. Verbal Instruction Can Induce Extinction of Fear of Movement-Related Pain. J Pain. 2018 Sep;19(9):1063-1073.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ハイライト
・恐怖の条件付けと絶滅を調べるために、皮膚電気活動を利用した。
・痛みの恐怖に伴う運動は交感神経の活動を誘発し、恐怖心を抱かせる。
・言葉による指示は、動作に関連する痛みに対する条件付き恐怖を減衰させることができる。

[概要]
慢性筋骨格系疼痛の恐怖回避モデルは、疼痛の慢性化における疼痛関連恐怖の重要性を強調するものである。このモデルに基づき、いくつかの治療法が開発されているが、以下の問題は未解決である。第一に、痛みを条件とした動作が恐怖反応、特に交感神経の活性化を引き起こすかどうか、第二に、言語による指示が直接体験と同様に動作関連痛の条件付き恐怖を減弱させることができるかどうかである。これらの問題を検討するために、我々は健康なボランティアに自己受容条件付け(自己受容感覚と嫌悪事象の関係を学習する)と絶滅学習を誘導し、恐怖の心理生理学的および主観的指標を指示群と通常の絶滅群との間で比較検討した。無条件刺激として痛みを伴う熱刺激、条件刺激として手首の屈曲を対で提示し、条件刺激に対する恐怖反応(皮膚電位反応)を参加者全員が獲得した。その後、指示された絶滅群には、絶滅期開始時に痛みのある刺激が続く動作がなくなったことを伝えたところ、この群のみが恐怖の両指標で有意な減少を示した。この結果は、言語による指導が運動関連の痛みに対する条件付き恐怖を減弱させることを示し、運動と痛みの関係についての情報を提供することの臨床的重要性を支持するものである。

[展望]
この論文は、実験室において、口頭での指示が、主観的指標だけでなく、心理生理学的指標においても、動作に関連した痛みに対する条件付き恐怖を急速に減少させるという証拠を提示するものである。この結果は、慢性筋骨格系疼痛患者にとって、臨床場面で運動と痛みの関係を的確に理解することが重要であることを示している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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私たちが患者さんに発する「言葉」が、どれだけ重要な意味をもつかを改めて考えさせられた。
大切なのは(展望でも示されているように)、その重要さが主観的だけでなく客観的な指標においても示すことができた、ということだ。
では、どんな声掛けをしていけばよいか。現状では「分からない」が答えとなるだろう。何故なら、患者さんの性格によっても異なるし、姿勢や運動方向性によっても異なるからだ。今後は、そうしたことをカテゴリ化できるような研究の発展が望まれる。

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