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【英論抄読】少年野球選手の無症状の肘関節異常について

▼ 文献情報 と 抄録和訳

少年野球選手における無症状の肘関節内側超音波異常は、肘関節損傷の独立した危険因子である。プロスペクティブ・コホート研究

Shitara H, Tajika T, Kuboi T, Ichinose T, Sasaki T, Hamano N, Endo F, Kamiyama M, Miyamoto R, Kakase K, Yamamoto A, Kobayashi T, Takagishi K, Chikuda H. Asymptomatic Medial Elbow Ultrasound Abnormality in Youth Baseball Players Is an Independent Risk Factor for Elbow Injury: A Prospective Cohort Study. Orthop J Sports Med. 2021 Apr 14;9(4):2325967120986791.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景]
シーズン中に肘の痛みを経験する少年野球選手は、しばしば肘のレントゲン写真に異常が見られる。しかし、無症状の肘関節異常がシーズン中の肘関節損傷のリスクファクターとなるかどうかは不明である。

[目的]
少年野球選手において、シーズン前の無症状内側上顆末端炎がシーズン中の肘部損傷の危険因子であるか否かを明らかにすること。

[方法]
投球腕に痛みや受傷歴のない少年野球選手(N = 210;年齢範囲、7~12歳)を対象に、肩および肘の可動域測定、肩の筋力テスト、多周波13MHzリニアアレートランスデューサによる超音波肘部スキャンなどのプレシーズン評価を実施した。1年間にわたり、選手とその両親は毎日肘の痛みに関する日記をつけた。肘関節損傷は、肘関節内側の症状で8日以上ボールを投げることができない場合と定義した。

[結果]
プレシーズンの超音波診断で59名の選手に内側上顆末端炎が見つかった。その翌年には,プレシーズンに内側上顆末端炎を発症した17名(28.8%)と,発症していない18名(11.9%)に肘部損傷が発生した.肘関節損傷の独立した予測因子は,プレシーズンの内側上顆末端炎(オッズ比[OR],2.488;95%信頼区間[CI],1.152-5.376;P = 0.02)および利き手の肩の外転(ABD)・外旋の障害(OR,0.963;95% CI,0.936-0.992;P = .012)であった.

[結論]
無症状の内側上顆先端部炎と利き腕の肩のABDと外旋の欠損は、7歳から12歳の少年野球選手における肘関節損傷の危険因子であった。これらの知見は、この集団における肘関節損傷を予防するためのプログラム設計に役立つと思われる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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この論文の面白いところは、そのオッズ比にある。
つまり、

超音波検査で内側上顆末端炎の存在が確認された場合、翌シーズンの肘関節損傷のリスクは、超音波検査で損傷が確認されなかった場合の約2.5倍であった。

この情報は、結構重要であるだろう。

特に小中学生など若い選手にとっては、検査上の異常があったとしても現在痛くないのではあれば、その重大性を認識するのは難しいだろう。しかし、「他の人と比べて、2.5倍、痛くなるリスクがあるよ」、そう言われたらどうだろうか。少なくとも、何かしら注意しないとな、とは思うはずだ。
このように、実際に数字で示して障害リスクを伝えることは、療法士にとっても重要であるし、知っておくべき知識であるだろう。

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