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日本にはない(?)パリの小学校のお仕事。

とあるツテで、4年前から私は主にヴァカンス中パリの小学校で仕事をしている。
肩書きは「gardien(ne)」だ。


早朝、開店直後のパン屋でチョコレートたっぷりのパンを買ってから出勤。


日本の小学校の入り口に常駐しているのはどんな人だろうか。
警備員?受付?
フランスのgardienをこれに当てはめようとすると難しい。
なぜならこの仕事は学校を文字通りgarder(保つ、監視する、世話をする)する仕事だからだ。
シンプルに言ってしまえば、校内の入り口付近に常駐して主に来校者の対応をする仕事なので、ここでどんな対応をしているのか紹介したい。


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「パリと東京で頑張る女たち」で検索してください。
note未公開のエピソードについても語っています。

アラサー女2人が語るパリと東京のアレやコレ。

私が働いている期間は主に学校のヴァカンス中なので大抵の場合子供が来ることはないが、この期間は工事が多い。
授業がある期間はできない校庭の全面リニューアルやインターネット回線の交換、その他細々とした修理をしに工事関係者が来る。
ほとんどの業者はきちんと仕事をしているのだが、中には仕事が粗い業者もいる。
そんな時に活躍するのがgardienだ。

「ドアの修理もう終わったんですか?どれどれ。ちょっと見にいきますね。
 あれーお兄さんドアノブ逆さまにつけちゃってません?開かないんですが。
 やり直してくださいねー。」

「工事が終わらなそうだから週末も来たい?できませんよ、私いないんで。
 明日朝早くきて終わらせなさいね。7時から開いてますから。」

「ちょ、ムッシュ!校庭は禁煙だってさっきも言ったでしょ!」

… 非常に口うるさく監視しているのである。




ヴァカンス以外の期間は仕事が格段に増える。
管理人室の電話はよく鳴るし、先生たちとのやりとりが多い。
日本人の子供がいるクラスの先生から相談を受けることもある。
保護者のクレームに毅然と立ち向かうことも大切だ。


振り返るとこの仕事を紹介されたとき、確かこう言われたような。
「ピンポーンってベルが鳴ったらドアの開閉ボタンを押して、後は入校者リストに名前書いてもらうだけ!カンタンカンタン。」

30年以上この仕事をしている彼女にとってはその程度のことなんだろうが、4年前、それまでフランス社会に馴染んでいなかった私が、勘違いした保護者が「うちの子、午後のおやつもらってないって言ってるんだけど!!!」と退勤5分前に乗り込んできた時は言葉に詰まった記憶がある。


ここまで読んでいるとかなり忙しい仕事のように感じるが、上に挙げたのはあくまでgardien力が発揮される例で、実際はお尻と椅子が一体化するほど座りっぱなしだし穏やかな日はタブレットを持ち込んで他の仕事もできちゃったりする。
それに、この仕事を始めてから格段に学校用語の語彙が増えた。
給食や遠足から保護者ミーティングの内容に至るまで、それまで興味を持ち得なかった情報を受け取るようになった。
工事関係者や清掃員の中には移民も多く、聞きなれないアクセントのフランス語を聞き取って意思疎通しなければいけない。
自分からあえて伸ばそうとしてこなかったジャンルの語彙力や会話力を伸ばしてくれるので、いい職場だなあと思っている。


 

ここでフランスならではのエピソードを一つはさんでおく。
初出勤の前日に常駐のgardienに簡単に校内を紹介してもらったときにこんなことを言われた。

「テロリストが来たらこのアラームを押して、役所の担当者に電話してね。電話番号ここに貼ってあるから。」

2015年11月13日にパリでテロが起こって以来、万が一に備えているんだろう。そもそもテロリストが入校して初めに会う人間が私なのに、悠長に電話してる余裕なんかあるのか…?と思った。

幸いにも今まで危険な目にあったことがないし、特に大きなトラブルに遭遇したこともない。
そして今後もそんなことが起こらないように入り口で適切な対応をするのがgardienなのだ。
この学校を「守護」していると言っても過言ではないだろう。なんだかガーディアンズ・オブ・ギャラクシーみたいでかっこいい。

どうも、パリの小学校の守護者です。


… いい日本語訳が見つかりますように。


仕事終わりにはワンコと散歩でリフレッシュ。コンコルド広場にて。



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