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Book(Movie) Review-8:寝ても覚めても

【日常という破壊】

愛に逆らえない

ブック(Movie)レビュー 8th
「寝ても覚めても」
原作:著/柴崎友香
映画:監督/濱口竜介

映画について書く。
映画が原作を超えた稀有な瞬間

時々...
エンディングのピアノが駆け抜ける。

 大阪に住む大学生の朝子は、麦と出会って激しい恋に落ちるが、しばらくして麦は忽然と姿を消してしまう。その後、朝子は上京してカフェで働いていて、そこで麦と同じ顔をした亮平と出会う。同じ顔に冷静さを失うも、震災をきっかけに亮平との同棲が始まる。
 大阪に戻って結婚生活が始まる直前、麦が朝子の前に現れる。朝子と亮平の結婚を祝う友人主催の夕食会で、朝子は麦の手を取って走り出し、亮平の制止を無視して夜の高速を麦の車で駆け抜ける。その途中、朝子は携帯を車から投げ捨て、麦に全てを委ねていく。
 朝になって目が覚めると、亮平との思い出の場所に辿り着いていた。その場所で冷静になった朝子は、もう一度大きな決断を下す。一方で、朝子に裏切られて抜け殻になっていた亮平は、突然帰ってきた朝子の前で怒りをぶつけ、猫を捨てたと嘘をつく。猫を探す朝子に"帰れ!"っと叫ぶ亮平に向かって朝子は走り出し、亮平は逃げるように河川敷を駆け上がる。
 強い想いはあるけど素直になれない、嫉妬と怒りと不安を抱え、お互いが憔悴して向き合えない中で、雨の河川敷を2人は自宅に向かって駆け抜けていく。ヘトヘトになりながら辿り着いた自宅のドアを挟んで朝子は亮平に想いを叫び、追い詰められた亮平は足元にいる猫を見つめながら、最後の大きな決断を下す。

 新宿で1回、福井で2回観た。
 2本だけカンヌで出品された日本映画で、もう1つは"万引き家族"だった。途中で結末が推測できてもスリリングで、でも繊細な描写から何かが擦り減っていくのが分かった。2人の幸せの直前に、同じ顔の男が同じ銀幕に現れた時、合成と知っていても鳥肌が立った。仏紙から"繊細でスリリング"と絶賛されたのはお世辞ではない。

 憔悴ほどの激しい愛か、平凡で安定的な愛か、どちらも人は日常を破壊して無責任になれる時がある。

 この後、週刊誌で2人の関係が報じられた時、あまり驚きはなかった。監督の演出手法である"濱口メソッド"の神通力のよって、もしくはこの映画で気づいたのだと思う。

愛に逆らえない



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そして、今年は濱口イヤー!



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