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ぼくの本棚

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心震わせられた一文から。読書の足跡。
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#純文学

【読書】砂の女 安部公房

【読書】砂の女 安部公房

同じことの繰り返し……いつも、別なことを夢みながら。身を投げ入れる相も変わらぬ反復……食うこと、歩くこと、寝ること、しゃっくりすること、わめくこと、交わること……

 時間。これほど身近で掴みどころのない存在はないと思う。なにも、地球と他の惑星とで流れている時間は違うなどの大きな話ではなくて。もっともっと身近な話。子どもの時は1年がとっても長かったのに、次第に1年は短く短くなっていく。まるで、別の

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【読書】 高瀬舟 森鷗外 ~罪の所在~

【読書】 高瀬舟 森鷗外 ~罪の所在~

それは罪と呼べますか? 法律では間違いなく罪なのに、それは本当に罪と呼べるのだろうか?という事件が度々起きている。

 少し前の話になる。

 夫から日常的にDVを受けていた一人の女性がいた。警察に相談すると、この場合は家庭内の問題として取り合ってもらえない。相談する機関、知人の誰もがことごとく、さしたる問題として認めなかった。女性の服で隠された場所には、無数の生傷が絶えなかったのにも関わらず。

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