紬糸

あふれ出す思いを言葉に乗せて

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マガジン

  • さがしもの

    さがしてます。きらきらひかるかけらたち。糸を紡ぐように。

  • ぼくの本棚

    心震わせられた一文から。読書の足跡。

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  • 【小説】魔女の告解室

    「なぜ私は魔女に生まれてしまったの?」 魔女と人が共に暮らす街。魔女は魔法を厳しく制限し、人に正体を隠して暮らしていた。 特別な力を持って生まれてしまった彼女たちの、葛藤しながら生きる姿を描く長編ファンタジー小説。

  • 【連載小説】中国・浙江省のおもいで

    中国浙江省、短期留学のおもいでを連載。雨が降り続け、霞がかかる幻想的な都市浙江省。日本にはない近未来的な空間とそこに暮らす人々を描いた連載小説。 現地でのおもいでを振り返り、物語に形づけました。

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羊のいる学校【ショートショート】

「のんびりとほがらかに」 正門にかかった横断幕は、そっくりそのまま、わたしの通う小学校を表している。 飼っている豚が、芝生の上でごろごろしているし、猫や犬がジャングルジムや、砂場で遊んでいる。 苔むして緑色になったプールには、今年の夏休みに男子が捕まえてきたスッポンが首を突き出して、のんびりと泳いでる。夏になったら、どうするんだろうとちょっと心配だ。 「ももちゃん。おはよ~」女の子なのに、黒いランドセルは、おにいちゃんのおさがりだという。いつもながら少しだけ羨ましい。

    • 【詩】罪の雨

      言わなくてもわかってくれる そうやって甘えたわたし 言わなきゃわからない そうやって甘えたあなた 言っても言わなくてもおなじ そうやって甘えたせかい 甘えたがりで迂闊で 高を括るわたしたちの頬を 今日も罪の雨が打つ

      • 【詩】春氷水

        手元の氷水、眼前の春 わたしの 体の内側から溶かし切ってしまおうと スニッカーズ、チュッパチャプスに似た 気だるい春 冬のきりりとした厳しさもない 夏のじくりとした厳しさもない あぁこの誤魔化しと虚栄の春 春が来るたびに 不機嫌で律儀な老人が腐すように わたしも詩を詠おう 澄んだ目で春を冷ややかに見つめよう 北極から零さずに持ってきた氷水 一滴で夢から醒める氷水を 春の海に垂らしてやろう イラスト 舞様 ‥‥ありがとうございます

        • 【詩】MAMABIKE

          不格好なMAMABIKE むかしおおきなかごと ベビーチェアを乗せた戦うBIKE いまバッドも大きな水筒も みんなそこに仲良く収まっている すこしむかしのぼくやいもうとみたいに 不格好なMAMABIKE 汗と泥のホイールに ぼくはむかしと変わらず守られて 輝く熱砂のグラウンドへ イラスト ソエジマケイタ様 ‥‥ありがとうございます

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        羊のいる学校【ショートショート】

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        • 【小説】魔女の告解室
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        • 【連載小説】中国・浙江省のおもいで
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        記事

          【詩】私はショベルカーだった

          河川工事の工船のうえで 男たちが微睡んでいる 土埃のバンの運転席と助手席で 男たちが微睡んでいる 煙草やカフェ・オ・レなどを喫みながら 屈強で寡黙で虚な目をした男たちは 自分たちが何を作っているのか知らない 隣の河川敷では 老人たちがパターゴルフなどをしている 垣根に遮られた欄干の影にも 老人たちがパチリ音するドラム缶に手をかざす こちら家を持たない老人も 今立つ土地の成り立ちを知りはしない 土手上を保母さんに連れられた子どもが数人 オレンジ色のショベルカーの如

          【詩】私はショベルカーだった

          【詩】空っぽの家

          庭もベランダもある大きな大きな家が ひっそりとたっています 突き出た窓は陽の光をたくさん集めて ラベンダー色のカーテンは重く身じろぎもしない 夜も夜ようやく灯った二部屋 家からしてみれば猫の額ほどの二部屋 朝になって スーツの男と制服の娘が出ていくと 家は再び静寂に包まれて 庭のオリーブを 時折忘れかけたように かさり 野良猫が揺らします 大きな大きな家に住みたいと 今までは思っていましたが 大きな大きな家は それはそれは綺麗に飾られた 空っぽのお墓のような家でした

          【詩】空っぽの家

          【詩】牛乳と食パン

          わたしたちには朝がよく似合う 私たちに送り出せない朝はない 陽気さも落ち着きも華やぎも 思うままにのせ連れて行く ささやかな異国の香り 真白な侵略者

          【詩】牛乳と食パン

          【詩】茶碗としゃもじ

          すくい すくわれる すくいつづけ すくわれつづけ 他には何も考えられくなって 夫婦の出来上がり 窮屈な茶碗と 退屈なしゃもじの 仲睦まじき しあわせ

          【詩】茶碗としゃもじ

          【詩】詩

          一心不乱に 塗りたくってやった 私は余白だった

          【詩】詩

          【詩】ある日のふたり

          無縁です スマホがないと会えないくらい わたしたち ありふれた コーヒー豆や砂糖くらい どこにでもいるふたりです なんにでも カワイイといふ 惰性さと 罪のない グルメ漫画のような 恋ばかり そのへんで 摘んできました たんぽぽが とてもよく 似合うくらいの 無縁です

          【詩】ある日のふたり

          【詩】赤と白

          白塗りに 仄かに差す赤み 削りたての鉛筆みたいに 消え入りそうな鋭角 兎の眼 化粧する人間は 男女平等を叫ぶな 多様性を謳う人間は すっぴんで街を歩け 黒いスイミー 着飾るな なんの概念も装うな 奇声をあげて 裸で歩け 幸福な王子 みんな違ってみんないいなんて みんなと平気で言葉にするなんて あなたはきっと 神様なのでしょうね 人間の傲慢さ

          【詩】赤と白

          【詩】笑うな 

          わたしが笑うのをあなたが見たら ぞくぞくすると思うよきっと 遠慮も忖度も思いやりもない 独善的で救いようのない わたしのためだけの笑顔 いいえあなたはきっと驚く 鋭利な八重歯 無慈悲な奥歯 灼熱の赤い舌 品のないわたしの玄関 誰にでも笑顔を見せる人なんて CMのタレントぐらい わたしの人生には関係ない ねえ彼女たちはあなたに 少しも笑いかけてなんかいないでしょう 気安く笑うな 気安く笑わされるな わたしが笑うのはそういうこと わたしの笑いはわたしだけのもの わたしは一人

          【詩】笑うな 

          『濹東綺譚』永井荷風を読んで

          “溝の蚊の唸る声は今日に在っても隅田川を東に渡って行けば、どうやら三十年前のむかしと変わりなく、場末の町のわびしさを歌っているのに、東京の言葉はこの十年の間に変われば実に変わったのである。” 誰しもが、「物語を生きている」と、そう思う。 「煙草屋までの旅」という言葉があって、気に入ってる。 意味は、歩く人が歩けば、例え近所の煙草屋までの歩みだったとしても、異国に旅するほどの情味を感じることができる。と解釈。 同じ道を歩いても、同じ場所で過ごしていても、人によっては、林

          『濹東綺譚』永井荷風を読んで

          【読書】きげんのいいリス トーン・テレヘン 訳 長山さき

          ここに書かれているのは きっと、大人になればなるほど忘れていく原色の自分について だれも答えてはくれないし、だれも答えなど知りもしない 自分だけの〈願い〉と〈疑問〉が隠されたどうぶつたちの物語 ◆あらすじ  〈叶った夢・叶わない夢・叶っている夢〉  一度でいいから、ひっくりかえる。そんなサギの〈願い〉は、  原題『ほんとんどみんなひっくり返れたーBijna iedereen kon omvallen』のタイトルを象徴する一話。  冒頭に持ってこられたのに納得で

          【読書】きげんのいいリス トーン・テレヘン 訳 長山さき

          こそそこと かまどにたつ煙のように 誰かの悪口で賑わう街 人も家も学び舎も商いも でもそれは わたしをみての狼煙だろう わたしを認めての印だろう わたしの話を聞いての証だろう でもそれは 昨日の風に吹かされて 今日の川に流されて 明日の空に吸い込まれて そしてそれは 海で雲になり わたしたちの住む街に 降る通り雨の一粒に やがてそれは 微笑む赤子の頬を濡らし 歩き出す赤子に降りかかり 乳吸う柔い唇に含まれて ついにそれは 巡り巡って

          【詩】化粧

          思いつく限りの嘘で武装する 華やぎ、煌めき、透きとおり 明るかったり暗かったり 親しみやすそうに 舐められないように 誰もそこまで見てくれない それでもわたしはわたしを見ている わたしだけがわたしを見続けていく だから今日も手は抜かない わたしへの宣戦布告 過去でも、未来でもない 今日を生きるわたしのために

          【詩】化粧