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【小説】魔女の告解室

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「なぜ私は魔女に生まれてしまったの?」 魔女と人が共に暮らす街。魔女は魔法を厳しく制限し、人に正体を隠して暮らしていた。 特別な力を持って生まれてしまった彼女たちの、葛藤しながら… もっと読む
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記事一覧

【小説】魔女の告解室vol.14

前回までのあらすじ 魔女と人が共に暮らす町。 人を排除し魔女たちの社会を確立させようとする指南役、人と共生しようとする長老の二つの勢力の間で、リコリスは戦っていた。しかし、指南役の筆頭であるガザニアに、長老一派だと疑いを掛けられ、復讐の機会を失おうとしていた。彼女は長老に復讐を託し、身を投げた。 第八章 月下美人⑤ 「美しい月を見た。月は誰も殺しはしない。私と同じ夜を行く者でも大きな違いだ。命を摘み取るだけの毎日が、私の生涯で、私のすべて。どこにも逃げ場などない。それなの

【小説】魔女の告解室vol,13

前回までのあらすじ 魔女と人が共に暮らす町。 魔女を導き、守る指南役としてリコリスは、法を犯す魔女を裁いていた。 しかし、罪なき子どもや、弱き魔女を虐げる仕事に彼女は耐え切れずにいた。 ある夜、指示された仕事は、人間の男の子の殺害だった。 殺害の瞬間、リコリスの前に、指南役とは独立した指導者、長老が現れ、彼女は仕事から離脱させられる。 第七章 月下美人④ 「この件についてはわしが預かることにする。なお、対象となった少年と魔女エレナから、昨夜にまつわる一連の記憶は消去した。

【小説】魔女の告解室vol,12

前回までのあらすじ 魔女と人が共に暮らす町。 魔女の母親と人間の父親を持つリコリスは幸せに暮らしていた。 母は魔女を導き守る「指南役」の任に着いていたが、 人間を殺し、魔女の立場を確立しようとする他の指南役に疎まれ、両親もろとも殺害された。 犯人の指南役「ガザニア」のもとで育てられる。成人したリコリスは、長老のもとで、自分の両親を殺害した犯人を知る。 母親の指南役の立場を引継ぎ、復讐を胸に誓うのであった。 第六章 月下美人③ 「ママー。リコ姉ちゃん来てくれたよー!」 …

【小説】魔女の告解室vol.11

前回までのあらすじ 魔女と人が共に暮らす町。 人と魔女の共生に尽力してきた長老が死に。後継者に最年少の魔女エレナが選ばれた。 しかし、喪服の魔女「リコリス」を筆頭に、反人間の魔女たちの全容が、少しずつ、明るみに出て行く。 第五章 月下美人② ある魔女を殺すこと。それがリコリスの生涯のおける唯一の目的だった。 「リコリス、人と魔女は幸せに暮らしていけるわ。私とお父様がそうだったのだもの。そのためには、自分自身が強くならなきゃだめよ?他の魔女を圧倒するくらい、強くならなくて

【小説】魔女の告解室vol.9

前回までのあらすじ 魔女と人が共に暮らす町。最年少の魔女エレナは、魔女を束ねる、長老に就任するため、魔女集会に臨んだ。しかし、魔女の中には人間を憎み、滅ぼそうとする連中がいた。それらの存在がはっきりとしないまま、魔女を束ねる五人の指南役とエレナは出会い、長老としての日々が始まった。 第三章 魔女の仕事  窓から差し込む光でエレナを目を覚ました。庭に生えた立派な菩提樹から、小鳥の声がシャワーのように浴びせかけられている。 雨季を超え、登ったばかりの太陽が、じめっとした大地

【小説】魔女の告解室vol.8

前回のあらすじ  魔女と人間が共に暮らす街。長老が死に、後継者として、命を受けた、最年少の魔女エレナは、魔女集会に臨んでいた。魔女には人間と共生してこうとする者と、人間を滅ぼそうとする者がいるらしい。  エレナの長老就任に騒然とする教会で、喪服の魔女リコリスとエレナは静かに視線を合わせていた。 第二章 リコリス 「皆さまお静かに、長老より承った言葉を代読させていただきます」    壇上の際で話す世話人のスピラの声に、教会内は再び静まり返る。静まりはしたが、壇上の中央に立

【小説】魔女の告解室vol,7

前回までのあらすじ 魔女と人が共に暮らす街。「人に魔法を使ってはならない」という規則を守り魔女は正体を隠していた。  愛するの男の妻を処刑に追い込んだ、最年少の魔女エレナは、長老に呼び出される。  エレナの犯した罪はそのままに長老は彼女に後継者となるよう言残しこの世を去ってしまう。 ** 第二部 後継者** 第一章 喪服の魔女 町の善良な人が寝息をたてるころ、教会は女達で埋め尽くされていた。 10個ほどの長椅子に座り切れず、周りを囲む者たちは肩が触れ合うほどであった。

【小説】魔女の告解室vol,6

前回までのあらすじ 魔女が魔法を隠しながら人と暮らす町。愛する男の妻を殺してしまった最年少の魔女エレナ。いまや魔女を仕切る長老のもとで、罪の告白がなされた。しかし、エレナの犯した罪はそのままに、長老は謎に包まれた魔女の1000年の物語を彼女に打ち明けていた。 第六章 千年の孤独③ 「娘、彼女に自分の周りで起きた不思議なことが、魔法なのだと教えるにはさほど苦労はしなかったわ。子どもたちから受けたいじめや、大人たちに利用されてきたその力を彼女が憎んでいると私は思っていた」

【小説】魔女の告解室vol5

前回までのあらすじ  愛する男の妻を罠にはめて処刑させた最年少の魔女エレナ。  魔女たちの掟である「人間への魔法行使の禁止」に触れないように、エレナはこの計画を成功させる。  だが、幼い頃よりエレナの面倒を見てきた長老はこの事件を見抜いており、エレナを館へ呼び出す。  以外にもエレナの殺人については触れずに、絵本の物語の続きを聞かせる長老だった。  しかし、長老の口からでたのは、魔女の衝撃的な歴史の物語であった。 第五章 千年の孤独② 「今日あなたをここへ呼んだのも、私の

【小説】魔女の告解室vol.4

前回までのあらすじ  愛する男の妻を罠にはめて処刑させた最年少の魔女エレナ。魔法を行使することなく実行した完全犯罪だったが、最年長の魔女である長老はエレナを自分の館に呼び出す。  自分の行動に何の落ち目も感じないエレナは呼び掛けに応じて長老を訪ねる。  扉を開くと、目の前には見たこともない程美しい貴婦人が座っていた。 第四章 千年の孤独 ① 「あらあら、そんなに目を丸くしてどうしたのエレナ。まずは座りなさいな」 緩やかにウェーブを描く金色の髪は、後ろの窓から漏れる陽を浴

【小説】魔女の告解室vol,3

前回までのあらすじ  魔女と人が共に暮らす街。魔法の存在を隠すため、魔女達はいくつもの戒律を作り人と共存していた。 最年少の魔女エレナは、愛する男フーケの妻が、夫を愛していないことを知り、罠にはめて殺してしまう。  妻を無くしたフーケは悲しみに暮れていた。そんな彼を助けるために、エレナは魔法を駆使して彼を励まそうといている。それを覗く魔女がいた。 第三章  紙と噓 「長老様。こうも遅くまで魔法を使われていてはお体にさわります。どうかお休みになってください」 町にある唯一

【小説】魔女の告解室vol.2

前回のあらすじ  魔女と人が共に暮らす街。魔法の存在を隠すため、魔女達はいくつもの戒律を作り人と共存していた。  ある日街の女が不貞を犯し、死刑となる。魔女たちは、とうてい不貞など働きそうにない女と不自然な状況に、魔女の仕業を疑い召集をかけた。しかし、証拠がなく犯人を突き止めることが出来なかった。  その後、街で一番若い魔女エレナが、自分が魔法を使うことなく女を罠に嵌めたことを神に告解したのだった。 第二章  水晶とフクロウ 「魔女は魔法を人に対して行使してはいけない。そ

【小説】魔女の告解室vol.1

第一部 エレナ  第一章 教会の集い 「もう何度もいってあることだけど、人を不幸に貶めたり、あまつさえ殺すために魔法を使ってはいけなかったはずだ」    人気がなくなった夜の教会に集った魔女連中は一斉にひそひそと話を始めた。教会の裏に続く墓地には今日の日付が刻まれた墓碑があり、魔女たちはその墓の主について話をしていたのだった。    黒いホロに身を包んだ老獪な魔女も入れば、村娘の黄ばんだドレスを着た若い魔女もいる。貴族の娘のような出で立ちの者も入れば、修道女に身を扮した