唾
こそそこと
かまどにたつ煙のように
誰かの悪口で賑わう街
人も家も学び舎も商いも
でもそれは
わたしをみての狼煙だろう
わたしを認めての印だろう
わたしの話を聞いての証だろう
でもそれは
昨日の風に吹かされて
今日の川に流されて
明日の空に吸い込まれて
そしてそれは
海で雲になり
わたしたちの住む街に
降る通り雨の一粒に
やがてそれは
微笑む赤子の頬を濡らし
歩き出す赤子に降りかかり
乳吸う柔い唇に含まれて
ついにそれは
巡り巡って
私たちのもとへと帰り来る
街に今日も誰かの唾が降る
イラスト jun 様
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