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【詩】私はショベルカーだった

河川工事の工船のうえで
男たちが微睡んでいる

土埃のバンの運転席と助手席で
男たちが微睡んでいる


煙草やカフェ・オ・レなどを喫みながら
屈強で寡黙で虚な目をした男たちは
自分たちが何を作っているのか知らない



隣の河川敷では
老人たちがパターゴルフなどをしている

垣根に遮られた欄干の影にも
老人たちがパチリ音するドラム缶に手をかざす

こちら家を持たない老人も
今立つ土地の成り立ちを知りはしない



土手上を保母さんに連れられた子どもが数人

オレンジ色のショベルカーの如く鉄籠に
小さな両の手を乗せて
アスファルトの道路を眺めている

バケットハットからのぞかせる
楽しそうでも怖そうでもない虚な瞳は
鉄籠とアスファルトとの境界を眺めていた

保母さんも子どもたちも境界の意味を知りもしない


地球がごそりと動いた
時を刻む太陽が傾いて
ある一日の幸福な無知を見下ろしている


いや
太陽ですら
なあんにも知らないのかもしれない

春が訪れようとしている






【イラスト】 umiko様
‥‥ありがとうございます。

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